溶ける

あぁ こうやって人は人に
呑み込まれていくのだろう
(ため息)
否 それは“人”ではない
電車に雪崩れ込むとき脳味噌に満ちるのは
いつもそんな感覚で
それは限りなく近くに 死を感じる時で
何故か無性に 言葉を綴りたくなる時でもある
人混みに紛れ込み個を失うなどという
生温いものではなく 個が消え去るのだ
アイデンティティの忘却 人が物体と化す
人が 所狭しと貼り付けられた広告看板に
人が 電車のホームドアに
人が 喫茶店の椅子に
人が 自動販売機に
アイデンティティの忘却 人が物体と化す
「気付いたか!」
暗闇の先で誰かが叫ぶ しかし
矢継ぎ早に発される言葉も
遠くてよく聞こえない
胎内にいるようだ
なんと心地よい場所なのだ
物体になることの心地よさ
何一つ考えない 何一つ悩まない
このまま このまま

希望だ!人々に必要なものは希望だ!
それは本物の 真の希望である
情熱や 押し付けがましい励まし
などではなく 湧き出す希望である
勘違いするな 足りないのは情熱ではない
足りないのは懐古ではない
足りないのは無鉄砲な情熱ではない
湧き出す希望なのだ

嗚呼 溶ける!

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