苦は幸を彩る

母は夜中にベランダで
月に向かって
いいや さては宇宙に向かって
笑顔で話し掛けるのだ

「苦しみよ来い。苦しみよ もっと来い
もっと   もっと もっと来い。
死を感じさせておくれ
生きることに向き合わせておくれ。

苦しみよ来い。もっと もっと もっと来い。
死を感じさせておくれ
生きることに本気にならせておくれ。」

月明かりに青白く照らされた
母の横顔は如何とも例えがたく
それは それは
惚れぼれするほど 美しかった

私はあの日見た
夢とも現実とも知れない
場面を探し求めている
死に照らされ青白く化粧をした
魅惑的な彼女の眼の中に
明日と生命の希望の
太陽が昇りしあの場面を
私は

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?