キングシュルツ医師はかっこいい


好きなアーティスト、監督を言っていいライン

好きなアーティストや監督について考えるとき、大体どれくらい作品を見た上で好きといっていいのかどうかのラインが分からない。もちろんそんなこと気にせず好きな作品が一つでもあったら好きという人も多いと思うが、自分はその人の全体像を汲んであげる必要があるのかなと思ってしまう。
最近キリンジをよく聴いているが、「非ゼロ和ゲーム」「時間がない」がないしか知らないので、好きとまでは言えない。今年、「フェイブルマンズ」「シンドラーのリスト」を続けて観てスピルバーグの凄さを感じたが、39作品全てを追える気がしない。
好きなアーティストを聞かれたらビートルズと答えると思う。今はあまり聴いていないけど中学生の時ほとんどの時間で流しており、「ラバーソウル」以降のアルバムなら1秒以内にイントロクイズできる自信がある。(好きってこういうことなのか?)
好きな映画監督はもっと難しい。そもそも作品数の五割以上を鑑賞したことのある監督がそもそも少ない。だから自分はタランティーノと答えるだろう。タランティーノだったら現時点で9作しか作っていないし、「キルビル2」以外見ている。その上でお気に入りの作品が何本ある。
ついこの前立川でそのお気に入りの一つの「ジャンゴ」のリバイバル上映を観に行ったのでその感想を書いていきたい。前書きながっ

ジャンゴと僕

ジャンゴは今まで映画館で観たことはなく、家で2〜3回観たことがある。ただこれは全体を通しての話で、エンディングの流れだけなら50回以上繰り返し観ている。豪邸がダイナマイトで大爆発するシーンはいつみてもアガるからウイスキー抜きコークハイと一緒に何度もみた。エンディングテーマ「TRINITY:TITOLI」が本当に好きで自分がもし芸人になっていたらこれを出囃子にしていたと思う。(何度かスベって恥ずかしくなって変えるところまで想像つく。)
そんな映画を立川シネマシティで観に行ったがやっぱり最高だった。
今回見て特に思ったのが、キングシュルツ医師がカッコいいってとこだ。

クリストフヴァルツのすごさ

キングシュルツ医師とはクリストフヴァルツが演じる賞金ハンターだ。
クリストフヴァルツはタランティーノ映画でヒットしたバケモノ俳優で、「イングロリアスバスターズ」「ジャンゴ」に続けて出演し、どちらでもアカデミー助演男優賞を獲るという偉業を成し遂げている。「イングロリアスバスターズ」では、ナチス軍のめっちゃ雄弁で狡猾なランダ大佐を演じている。このランダ大佐もなかなかすごくて、自分の中ではこのキャラがいなければ映画の面白さの9割が損なってしまうと思う。元々自分はこのランダ大佐が好きだったが、今回の映画鑑賞でシュルツ医師のかっこよさに改めて気付かされた。

キングシュルツ医師のかっこよさ

ライムスター宇多丸さんの解説を借りると、カウボーイの世界は「法と契約」によって成り立っているらしい。そしてその中で1番にそれを遵守しているのがシュルツ医師なのだ。シュルツ医師は賞金首を殺した後、自分達の行いがいかに正当な行為であるかを手配書ともに説明し、自衛を行う。また、ジャンゴが賞金首を撃つ際、近くで子供がいるのを見て躊躇した時、手配書からその賞金首がいかに凶悪を説明し殺させた。
シュルツ医師は、法や契約だけを守っているのではなく、その背景にある人権の自由さや責任について理解している。この映画は、シュルツ医師が賞金首の所在を探るために黒人奴隷のジャンゴを解放させる所から始まる。しかも、ただ解放するのではなく、自由にさせたならその責任が生じると考え、シュルツ医師には一切の利がないジャンゴの妻救出作戦を決行する。ここまででも十分にかっこよいのだがここからもカッコよいのだ。

契約によって成立している奴隷制度

ジャンゴの妻がいるとされる大農園に行き農場長をうまく騙して救出しようとするのだが、ここでジャンゴとシュルツ医師は奴隷制度による最悪な行為を目の当たりにする。具体的なことはここでは省くが、シュルツ医師が1番許せなかったのは、残虐非道な行いの数々が奴隷制度の契約によって行われることだったと想像する。彼は今まで悪人を連邦の発行した手配書で裁くことができたが、ここではまったく力が及ばない。シュルツ医師は奴隷制度とその制度で得している南部白人に対してずっと憤慨していた。その結果、上手く行くはずだった救出作戦はシュルツ医師自身の手でぶち壊してしまう。(ごめんなさい。あらすじ書くの下手で詳しいことまで書く余裕がない。観てない人は一旦ここで読むのやめて、映画を観てほしい。今、どのサブスクでもやってないけど。)シュルツ医師は、今まで合理的な人物として描かれているが、このシーンで映画内で1番合理的でないことをしてしまう。それが本当に奴隷制度が許せなかったことが伝わってかっこいいんだ。

映画の1キャラでこんなに書くとは

「ジャンゴ」の1キャラの感想を書くだけで2時間かかった。でも、自分の好きを整理することができてスッキリした。「ジャンゴ」を観た後、一週間位この映画の良さを考えてしまっていた。本当に面白い作品は後に引く感覚が気持ちいい。高校の時にやったメタルギアソリッド1も終わった後、しばらくスネークやサイボーグ忍者に思いを馳せていた。
まだ自分自身の経歴を書く自信はないので、自分の周りにあるものを整理していきたい。

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