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対馬のクエ、 不思議やね

 対馬のクエをこの2年半扱ってきて、不思議に思うこと

 疑問に思うことは自分で色々調べてみるけど、クエに関する研究は初期生活史をテーマにしたものが多く(種苗生産のためやね)、成魚の生態に関するものはほとんど無いな。
 いまだに使ってます、Google Scholar笑。漁師のお供、Google Scholar。
 ※Google Scholar: 論文検索に特化したGoogleの検索エンジン

 実は張り切って英語で論文検索しなくても、長崎県水産試験場の報告が一番良い情報を提供してくれる説、ことクエに関しては。

 具体的な疑問点は以下二点。

 ①産卵期とされている4-7月(長崎県での調査)※1 においても抱卵個体(卵持ち)が居ない(見たことがない)
 ②20kgオーバーの大きな個体にもオスが居ない(見たことがない)
先日仕入れた魚突き漁獲の24.6kgもメスで、卵巣は退縮状態。

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↑20.09.11 凄腕魚突き漁師漁獲 24.6kgのクエの卵巣

 対馬近海では20kgくらいのサイズは普通で、もっとデカくならんとオスにはなれんよ、ってことか? そしてオスは他の場所に年中居て、浅場にやって来んとか?
 ※クエはメス→オスへの性転換をする(クエに限らずハタ科の魚はほとんどそう)。成長すると50cm、2.5kg、5歳くらいのサイズでまずメスとして成熟し※2、さらに大きく成長したものがオスへと性を変える。全ての個体がオスになるワケではなく、周りの個体より大きく、強い個体のみがオスとなる。

 またクエは瀬着きで移動性に乏しい魚と思われがちやけど、実際にはかなりの距離を移動するそう※3なので、産卵場はどこか違う海域(深場)で、産卵を終えた個体が夏頃に対馬近海の浅場にやってくるのかも知れない。魚突き漁獲に関しては大型個体の漁獲が6-9月頃に集中しているように思う。

 オレが浅場のクエしか扱ったことがないから、答えが見えないのでしょーか?
 魚突き漁獲のクエは水深20m程度まで、延縄漁獲でも50mまで、一本釣りだと80mまで(これまで10kgを超えるようなデカいのは獲れていない)。限られた海域の、それも限定的な浅いポイントでの漁がほとんどなので、分からないことだらけやー。

 まぁ研究者ではないので、それを解決して(しようと)どうこうというつもりはないけど笑、気になるのは確か。
 漁師は一番海と魚に近いところに居るワケなので、不思議に思うことは色々あるんですよ。
 やから漁師は楽しいのかもね。


-References-
※1 漁連だより(長崎県漁業協同組合連合会)2017.08
クエの資源動向と管理方策の検討について
https://www.pref.nagasaki.jp/shared/uploads/2018/11/1542689321.pdf

※2 漁連だより(長崎県漁業協同組合連合会)2007.11 No.151
クエ(地方名アラ)の年齢と成長について
https://www.pref.nagasaki.jp/shared/uploads/2018/11/1543300331.pdf

※3 水産開発(社団法人長崎県漁港漁場協会) 2018.09 No.130
クエ資源増殖に関する研究について
(参考として欄外に再捕記録の記述あり)
https://www.pref.nagasaki.jp/shared/uploads/2019/04/1555553597.pdf


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