保育園落ちた
どんよりとした曇り空。けれども気温は心地よく、何も考えず、ぼーっとしていることが正解のように思える。そんなある日の公園。
「あら、かわいいね。おいくつ?」
「3歳に、なります。」
人生の大先輩が新米の母親と、その隣の人生の新米に声をかけている。どこか懐かしい光景。
「そう。3歳。一番かわいいころね。お母さんも一番苦しくなるときかもしれない。」
「そうですね。」
「私も3人育てたけれど、母にはずいぶんと助けてもらったわ。子育てだけじゃなくて、愚痴なんかも聞いてもらったりね。一人では絶対ダメだったと思う。無理は、しちゃダメよ。」
「はい。」
「今は公共の施設なんかも整ってるみたいだけど、それもあんまりうまくいってないってテレビで言ってたし。」
「ええ。保育園も落ちてしまって。」
「そうそう。政治家の人もそんな話してたわ。」
「あれ、私なんです。」
「え?」
「保育園のこと、愚痴ったの私なんです。」
「あらま。そうだったの。あなた、ずいぶん偉い人に愚痴を聞いてもらえるのね。」
参考文献
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