良くない理由
「寄付ってのは、言葉が良くないね。」
「どういうこと?」
「いやね。変に寄付金なんか送ったりするとさ、偽善だなんだと囃し立てられるじゃないの。」
「ああ、そうだね。」
「それがさ、〈寄付〉って言葉のイメージなんじゃないかと思うんだよね。」
「なるほど。じゃあどんな言葉がいいのさ?」
「そうだなあ。例えば〈納付〉なんてのは?」
「納付て、そりゃあ税金みたいに言うねえ。あんまイメージ良くないよ。」
「イメージは良くなくていいのさ。変に善い行いです、ってイメージがついてるより全然いい。お前はどう思う?」
「〈寄贈〉とかは?」
「ダメダメ。おれが思うにだな、〈寄〉って字に、こういうことをしてあげるよってイメ-ジが付いてる気がするんだよ。」
「ああ。寄せてあげて、的な?」
「いや、違うな。」
「ああ、違うか。でも〈納付〉はよくねえな。」
「まあそうだな。例えば〈流付〉とかさ。」
「流付?」
「高いところから低いところに流れる、みたいに自然な感じ。どう?」
「〈流〉も島流しみたいで良くねえな。罰みたいだ。それより俺は〈付〉の方が気になるけどなあ。」
話に水差す一人の女。
「いいから、さっさとお勘定。」
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?