親がいるということ、親であるということ

小学校の作文発表。

一人ひとり順番に立ち上がり、原稿用紙を小さな両手で高らかと掲げながら読み上げる。

テーマは自分の両親について。


「作文、『ぼくの親』。ぼくが一番最初にお世話になる親はペロです。」

「ペロ?」

「ペロは犬です。僕が起きるのを毎朝手伝ってくれます。」

「ふふふ。なるほど、ペロが朝起こしにきてくれるのね。」

「おかげで起きてすぐ、顔を洗う習慣も身につきました。」

「顔を舐めて起こすのね。ベトベトになるのかな。」

「朝ごはんの親は大隣さんです。」

「…誰?」

「大隣さんは僕の家のお隣に住むご夫婦です。ぼくから見るとお爺さん、お婆さんくらいです。一緒にご飯を食べてくれます。」

「そう。ご近所さんと仲がいいのは素晴らしいわね。」

「毎日和食です。たまにはトーストが食べたい時もありますが、人の善意を無下にしてはいけないと思い、いつも喜んで納豆と焼き魚を口にしています。」

「…大人ね。」

「ぼくが学校へ行く時間に大隣さんたちも一緒に帰ります。ペロも帰っていきます。」

「ペロは、どこの子なのかな?」

「学校へ行くまでの間は、道端さんがぼくの親です。」

「…誰なのかな?」

「道端さんには家がありません。考えていることが周りにいる他の人達とは違うので、とても勉強になります。」

「あんまり知らない人に着いていくのはよしましょう。」

「知らない人に着いていくのは良くないと思っていたのですが、」

「そうね。」

「道端さんは着いてくるだけなので、すぐに仲良くなりました。」

「…気をつけましょう。」

「学校での親は友達と先生です。」

「ちょっと待って。先生はあなたの本当の親御さんのお話が聞きたいな。」

「え、全部ほんとうの話ですけど。」

「いや、嘘をついてるっていうんじゃないの。そうじゃなくて、あなたにとってたった一人の親御さん達のことを話してほしいなって。」

「先生は、たった一人の人に育てられたんですか?」


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