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ハートランドの遙かなる日々

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長編のヨーロッパ歴史小説です。そしてまた、これは夢の深淵への旅でもあります。 中欧にスイスという国がまだ生まれる以前、そして建国の時を迎えるその胎動の時代、神聖ローマ帝国に新しく… もっと読む
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2019年12月の記事一覧

ハートランドの遙かなる日々 第30章    ただいまウーリ

 国境の牛小屋はまだ健在だったが、見ないうちにすっかり荒れたようだ。木の葉で葺いた屋根は風で枝が引っ繰り返っている上、地面はぬかるんで泥に浸かったようになって、小屋も少し傾いている。 「ボロボロみたい……」  アフラがそう言うと、アルノルトが泥の中を小屋の中まで歩いて行った。 「泥が溜まって小屋の中もドロドロだ。水捌けが悪いんだ」  マリウスも小屋を一周駆け回って言った。 「ホントにドロドロー。やっぱり屋根はダメダメだね。穴だらけだ。でもぼくらがやったんだった!」 「僕もだ。