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共同体感覚

祭りの季節です。
祭りには不思議な力があります。
一つはリズム。
「わっしょい、わっしょい」もあれば「せや、せや」もある。
地域によって声かけが違うのですが、共通しているのがリズムです。
速さでいえば、1秒間に2回のリズムでしょうか。

このリズムには、不思議な力が秘められているのをご存知でしょうか?
人間のからだに1秒間に2回の速さのリズムを刻むと、安心感をもたらすセロトニンが放出するというのです。

このことを発表されたのは「セロトニン研究」の第一人者である東邦大学の有田秀穂先生。有田先生は、セロトニン欠乏状態が脳の中で起こると、不安やうつを引き起こしますが、セロトニンを上手に引き出す方法はないか研究を進める中で、1秒間に2回のリズムを踏むと、セロトニン放出が促されることを発見したのです。

私たちはストレスがかかると、無意識に安心を引き出そうといろんな行動をとりますが「1秒間に2回のリズム」と考えると、貧乏ゆすりなどが思い浮かびますよね。会議の場面などで、感情が沸き起こる時に無意識に足を揺らす人がいますが、これは無意識に高まる感情を鎮めようとしている、一種の自己治療なのかもしれません。

大リーグの中継を見ていると、強打者を前に、ピッチャーがしきりにチューインガムを噛んでいるのを見かけます。これも同様に、高まる緊張を鎮め、冷静さを取り戻そうとしているのかもしれません。

祭りの話に戻しますと、日本人に深く親しまれている大切な文化である祭りもまた、生きるために生み出されたもの。仲間と気持ちを一つにして「共同体」としての感覚を強めていきます。同じリズムを踏みながら、大きな神輿を担ぐ姿を間近で見ると、通りすがりの私も一つのリズムの中に引き寄せられていくのを感じます。

「共同体感覚」といえば、三大心理学者の一人であるアドラー。
アドラーは第二次世界大戦中、軍医として戦地に赴き、傷ついた兵士の治療にあたります。貧困と精神疾患で苦しむ人が溢れる中で、共同感覚という思想にたどり着くのです。

人は、大事な仲間を傷つけたくないと思っている。それなのに兵士たちはそうせざるをえない状況におかれたことで深く傷つき、打ちのめされていると気づいたのです。正当な闘う意味が見出せなければ、相手に向けた刃は自分に跳ね返ってくるというわけです。

仲間と気持ちを一つにして、人間が生きる厳しい環境を乗り越えていく。このプログラムは、人として生きることを運命づけられた私たちにとって、神様から送られた大事な贈りものです。

そのことを大事に守り抜こうとしている人々がいる。
祭りには、通りすがりの人でさえ、そのリズムに引き寄せられ、気持ちを一つにする魔法のような力を感じます。

夏。
クーラーのきいた部屋を飛び出して、この季節にしか味わえない「祭り」の魔法を全身に浴びてみてはいかがでしょう。子ども時代に、祭りを通して沸き起こる高揚感を刻み込んであげると、歳をとっても人とのつながりを求め、大切にする力を授けてあげることになると思います。

2023年8月13日  6年ぶりに開催深川八幡祭り(通称水かけ祭り)

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