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やめられない、止まらない

NHKのBSドキュメンタリー「欲望の資本主義」があります。
2017年から続いているシリーズ番組で毎年欠かさず録画をして、子どもたちと観ています。特に、大学の経済学部で学ぶ息子とは毎回白熱した議論で盛り上がります。

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さて、そんな息子がオンライン授業となり、レポートを作成する日々の中、課題図書が出されました。それがこちらです。

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番組制作を手掛けたプロデューサーの方が書かれた本で、番組の中でも度々登場する、日本を代表する経済学者の岩井克人さん(東京大学名誉教授)の、変化の激しい今の時代の課題を鋭く突くお話を、素人の私でもとても読みやすく、わかりやすくまとめています。

レポートを書き上げた息子から拝借して、パラパラとめくっているうちに、引き込まれました。難しいことはさて置き、とても興味深いことが書かれていましたので、少しだけご紹介させていただきますね。

お金(貨幣)は人間の欲望を無限にした

モノを効率よく交換するために生まれた「貨幣」ですが、交換しているのは『価値』です。まだ、貨幣を使う経済が安定していなかった時代は、いつなんどき価値交換のために誕生した貨幣が、失われてしまうかわからないので、金や銀を貨幣として使っていました。次第に貨幣経済が安定してくると、重たくて不便だったり、大金を持ち運ぶにも危険が伴うので、紙の貨幣が流通していったそうです。
つまり、貨幣そのものには価値がないけれど、”貨幣の持つ価値に大きな価値がある”という、ややこしいモノとして定着していったようです。

確かに1万円札も紙でできていますが、このお札自体はただの紙きれで、それ自体にはほとんど価値はありません。500円玉も鉄や銅、ニッケルといった安い合金で作られているそうですが、それ自体は、ネジ回しになるくらいの価値しかないといいます。ところが、貨幣としての500円玉となると、500円のモノと交換できる『価値』が生まれるのです。

では、500円の『価値』は何によって決まるのでしょうか?
それは、他人や社会によって決まります。
誰かが「これは1000円の価値がある」と言ったとします。1000円の価値に合意することもあれば、大多数の人が「いや、500円じゃない?」と言うことで、500円の価値になるというもののようです。

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人の欲望は無限です。
欲望が満たされても、満足することはなく
今度は更なる欲望が生まれ
欲望は果てしなく続いていくのです。

そうなると、貨幣の持つ意味も変化します。
「自分が提供できるモノ」と
「自分が必要としているモノ」を
交換するためだった貨幣が、いつの間にか貨幣そのものを集めることを求めるようになり、いわゆる「お金儲け」が目的になってしまい、欲望にブレーキがかからなくなってしまうのです。

欲望の暴走は止められるの?

一方、貨幣の持つ本質を見抜いていたといわれる古代ギリシャの哲学者アリストテレスは
「人間は孤立して生きてはいけない存在で
共同体の中で生きることを運命付けられている」
といっているそうです。
共同体とは、あらゆる職業の、あらゆる立場の人が含まれます。それぞれが役割を持ち、共同体として機能していくためには、誰も欠くことはできません。
お互いに支えられて生きているので、自分さえ良ければいいと考える人がいると
全体が危険になる。だから、自分だけでなく、共同体の人々と
「より善く生きること」
を大切にしなければならないというのです。

さらに、哲学者のカントは「道徳律」の中で、同じように
「皆にとって良いことをするように」
と述べているそうです。
お互いが合意できているのなら、利益追求を求めても良いけれど、一方的に搾取するようなことがあってはならないと。

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さらには「お互い」という視点を広げ、相手を”自然”であったり、社会を構成する大きな”共同体に属する人たち”に据えると、現代に潜む大きな課題が見えてきます。お互いの利益追求が合意できていないがために、環境汚染や格差が加速している。この問題は、私たちの中にある、抑制の効かなくなった「欲望」なのだということに、警告を発しているように思えるのです。

変化の激しい時代は常に本質を見極める目を持つこと 

当初は金や銀だった貨幣が、紙に代わり、今では単なる数字が行き交うだけの時代になりました。通飯もクレジットも、決済は電子情報のやり取りです。
とても便利になった分、背負うことになった代償は『自己抑制』。
便利さに見合った、それ相応の”欲望を抑制する力”です。

現代は、その力を大急ぎで育んでいく必要があるようです。
自分のことで頭がいっぱいになっている、今の視点を変えて、自分以外の誰かが
「幸せになれているだろうか」
と思いを馳せることから始めなくてはと思います。そうすることで、問題の本質を見失わず、解決への糸口を見いだせるのではと思うのです。

鶯千恭子(おうち きょうこ)

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