キリスト復活祭の日に聞いた「使う言葉に気をつければ自分は変われる」の話

「どれも大事だから、しぼるってけっこう難しいんですよね。おもしろいものが今はいっぱいあるから」
「でもさ、キミはエストニアまで来てるわけだし、自分の一番はちゃんと分かってるんじゃないの?」

 この時の私は、エストニアにあるアーティスト・イン・レジデンスというアトリエ滞在型のアートプログラムに参加していた。韓国のプログラムに参加する前に、二か月半ほど空きができてしまったので、その期間をエストニアで過ごすことにしたのだ。
 滞在先は歴史的な建物で古く、年に数回はトイレが詰まると聞いた。シャワー室は地下にあるのだが、半分崩れかけたようなレンガの壁が、なんだか秘密結社のアジトみたいでとても気に入っている。

 各国のアート団体とも連携し、積極的にいろんなプロジェクトを行っているレジデンスだったため、かわるがわるいろんな国からアーティストが来た。タリンの大学で映像の修士課程を学んでいる学生さんたちが来た時には、レジデンス内は人がいっぱいで、毎日おいしいごはんに招待してもらえた。彼らと一緒に深夜、エストニア南部に暮らす少数民族セトのキリスト教会で復活祭のための催しを見学に行き、私はフィンランド人の仏教徒だという学生と話をしていた。

「一番やりたいことだからやるんだけど、ちょっとずつ先延ばしにしてるような気もするし、関係ないことに時間かけちゃう時もあるし」
「関係ないことってたとえば?」
「料理にすごく時間をかけてみたりとか、マンガを一日中読んでたりとか。運動のために毎日外を散歩してるけど、そういう時に本当は物語のことを考えたり、次の作品とかを考えたりするといいんだろうなぁ、でもできなくてサボっちゃったーってへこむことが多いかも」
「そっかそっか。使う言葉を変えるといいかもね、それは」

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