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偶然を味方につける

プロンプトエンジニア終了のお知らせです。

カリフォルニアを拠点とするクラウドコンピューティング企業VMwareのリック・バトルとテジャ・ゴラプディは、生成AIが小学校の算数の問題を解く能力について、60個の異なるプロンプトを用意してテストしました。

その結果分かったのは、与えられたモデル、データセット、プロンプト戦略にとって何がベストかについては一貫性がなく、そのときどきによって異なるということでした。

そこで、AIでプロンプトを自動生成する新しいツールを開発して試したところ、人間が試行錯誤で見つけたプロンプトよりも、ほとんどのケースで良い結果をもたらしました。

近い将来、人間がプロンプトを考える時代は終わり、生成AI自身がプロンプトを考え、最適解を導き出すようになります。いよいよ、人間のすることがなくなりそうです。

生成AIの一貫性のなさを理解する

とはいえ、しばらくは人間がプロンプトを書く必要があります。そのため、生成AIを活用する際には、アプトプットに一貫性がないことを理解しておくことが重要です。

現状、プロンプトエンジニアリングに最適解はなく、欲しい答えが得られるまで試し続けるしかありません。

以前、自分好みにカスタマイズしたChatGPTを作成できるGPTsという機能を紹介しましたが、GPTsもなかなか使いこなすのが難しいです。

GPTsは画期的な機能ですが、アウトプットの精度を上げようと思うと、使用方法をプログラミング的思考で書く必要があります。

実現したいことをタスクにバラして、できるだけ具体的な作業を順序だてて書く。ときにはプログラムの言語とコードを指定する。そうすると徐々に欲しいアウトプットに近づいていきます。

ただプログラムと大きく異なるのは、そのときどきで答えが気まぐれだったり、屁理屈をこねて間違いを認めなかったりと、扱いがむずかしい後輩のように振舞うことがあります。

「扱いがむずかしい後輩」のイメージ

画像生成AIも一貫性がない

画像生成AIもまた、アウトプットに一貫性を欠いています。

例えば「ネットショッピングをする三毛猫」を描いてみます。まったく同じプロンプトで4枚の画像を生成してみると、構図は似ていますが絵柄はまったくバラバラです。

ネットショッピングをする三毛猫(DALL·E 3で生成)

次に、生成AIで4コマ漫画を描いてみます。ChatGPTでストーリーを考え、 DALL·E 3で描いた漫画です。

ネットショッピングの冒険(タイトルもChatGPTが考案)

こちらは絵柄のスタイルを指定して生成しましたが、それでも統一感を欠いています。また、3コマ目と4コマ目でベッドの色と形が変わっています。

絵柄が一致しない問題は改善されつつあります。MidjourneyにはStyle Tunerが追加され、サンプルイメージに寄せた絵柄を生成することができるようになりました(ただし、まだあまりうまく機能しないことも多い)。

また、Lore Machineという画像生成AIは、ストーリーをマルチメディアに変換することに特化しており、スタイルが一貫した画像をプロンプト不要で生成することができるそうです(現在wait中)。

このように画像生成AIもまだまだ発展途上です。

予期せぬアウトプットを活かす

では、現在の生成AIは役に立たないのかというと、そうではありません。

生成AIのアウトプットは一貫性を欠いているので、こちらが思い描いているものを忠実に生成しようとすると、なかなか満足のいくものができません。

逆に、こちらが想定していない突飛な提案やアイディアを積極的に面白がることで、自分では思いつかないようなクリエイティブを生み出すことができます。

「自分では思いつかないようなクリエイティブ」のイメージ

前回、意思決定とは複数の選択肢から最適案を決定するという行為で、「選択肢を考える」「最適案を選ぶ」の2つのステップに分けることができると書きました。このうち、生成AIに「選択肢を考える」フェーズを任せて、人間は「最適案を選ぶ」だけに集中するというスタイルです。

このスタイルが現時点の生成AI活用法として一番しっくり来ています。文章の要約やリライトなど作業的な用途でも活用していますが、自分の想像の域を超えた何かを創るほうが、個人的にはとても楽しいです。

生成AIが提供する偶然を愛せよ

スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授らが提案した計画的偶発性理論というキャリア論があります。個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定される、その偶然を計画的に設計し、自分のキャリアを良いものにしていこうという考え方です。

計画された偶発性は、以下の行動特性を持っている人に起こりやすいと考えられています。

  • 好奇心[Curiosity]

  • 持続性[Persistence]

  • 柔軟性[Flexibility]

  • 楽観性[Optimism]

  • 冒険心[Risk Taking]

生成AIの予期せぬアウトプットを活かすコツも同じで、自分のアイディアに固執することなく、オープンマインドで、あらゆる可能性を柔軟に検討することです。

新しいテクノロジーが普及する初期段階においては、ルールがないことが唯一の優先ルールです。楽観性と冒険心を持って、自分なりの生成AIの活用法を模索していきましょう。

では。

ルールがないのがルールさ

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