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あれからのお話


ご無沙汰しています。
前回の投稿からたくさんの方からの反響をいただいています。

少し前回のものも微々たる修正をしました。
よかったらもう一回読み直してみてください。

前回までのやつはもう過去の事だからと最後に自分の行いを精算する意味で書いた内容でしたが、私のつたない文章を買ってくれた方にお礼の意味も込めて、最近新しい情報が入ってきたので少しだけ共有しようと思います。

前回は別れた後に消息不明になったと言っていた有田のその後です。

ちょうど昔の同期と会う機会があって偶然にもそいつの近くに彼女がいて近況を聞くことが出来たという話です。

飲みながらの話だったんですがとある事実を知った時に完全に酔いが覚めたので、結構再現できていると思います(笑)

今回も稚拙な駄文乱文にお付き合いください。


有田の話



運送屋で養育費を支払いながら細々とした生活を送り、肉体労働にも慣れてきたとある日、久しぶりに昔の仲間からの着信があった。

彼はオリエント時代の同期で今はオリエントの役員として活躍している。
次期社長という話も聞いたことがある。
電話ではなんだからという事で久しぶりに飲みに誘われた。

ちょうど前回の投稿から二カ月くらい経った時期だと思う。


「大友~。いろいろ聞いたよ(笑)。お前も馬鹿なやつだな~」

「馬鹿だったな。ほんとに(笑)とりあえず乾杯」


この同期の名前は村瀬。
オリエントの入社時期はほぼ変わらないが年齢は俺よりも3つ年下だ。
年齢よりも実力が重視される業界だけあって年上とか年下とか関係なくタメ口で話してくれるし、昔からこっちの悪いとこをズバズバ言ってくれるありがたい存在だった。

俺がオリエントを辞めてリアルストックを立ち上げ、有頂天になっていた時期も地獄に落ちた時期もずっと見ていたらしい(笑)

村瀬は俺が独立する時に木村と水野、石原を引き抜いて戦力が落ちてしまったオリエントを立て直した人間だ。
業界の内外に顔が広く、その人脈で傾いたオリエントの再構築に一役買ったと風の噂で聞いていた。

俺はメンバーを引き抜いて独立した後ろめたさもあったし、もう連絡を取る事もないだろうと完全にオリエントの人間とは連絡を取っていなかった。
更に独立して失敗したという恥ずかしさもあるからオリエントの人間とはできるだけ合わないように生きていたというのもある。

そんな中での久しぶりの村瀬からの連絡だった。
主力メンバーを引き抜いていった俺に対する嫌味もあるだろうが、それよりも有田の行動が目に余ったらしく、どうしても俺に話をしたかったらしい。


「でも大友よ。お前女見る目なさすぎだ。あの有田な。ヤバい奴だよ。
オリエントに入社してきたのもつかの間、すぐに俺に媚び売ってきやがった(笑)
なんか入社早々色仕掛けを仕掛けてくるから周りのみんなも引いていたよ。
んで何やら社長にも接近していたけどちょこっと関係持ったらすぐにボスの女気取りだ。すぐに社長とヤッたっていろんなやつに話していたぜ(笑)

なんかお前のとこをやめてウチで働いてくれている女性の営業いたろ?
その彼女がお前の会社の中での彼女の行動を俺に話してくれたのもあって、俺も社長に注意したんだけどな。
でもあの社長は何枚も上手だなって感じたよ。

お前あいつに相当甘い汁吸わせてたろ?社長は要求がすごかったって笑っていたよ。
肉体関係を持った瞬間に社内の権力を握ろうとしてきたらしくてさ、なんか重要ポストと大幅な年収アップをせがんできたらしくてな(笑)
社長があいつを入社させたのはお前んとこのノウハウとかデータを持っているっぽいという狙いがあったみたいでさ。端から社長はその情報にしか興味がなかったらしいんだ。その流れで抱かせてくれるというからやっちゃったんだろうな。
ただあのタヌキ親父も簡単に落ちるようなヤツじゃないだろ?有田と肉体関係になったがあいつが大したデータも持っていないと知るや否やポイだもん(笑)

多分、今までいろんなところで同じように女を武器に生き残ってきたんだろうな。社内の懇親会では同期や先輩には脇目も降らずに俺とか幹部連中のコンパニオン状態だ。ボディタッチも激しいし、ちょいちょいヤレそうな雰囲気を醸し出すもんな~(笑)
幹部の中には女慣れしていないヤツもいたけど、うちはほら社長の素行を見ているからみんな社内恋愛をしないという暗黙の了解があったじゃん?
んで幹部連中が相手にしないと悟ったらすぐにターゲットを社長に鞍替えだ。逞しい女だよ。お前んところでトップを落とせた経験があるからそれをそのままオリエントでもやろうと思ったんだろ(笑)」

ここまで聞いて少し反論をしたくなった。

「でもな。村瀬。あまり悪く言わないでくれよ。彼女も子育てしないといけないし、家庭もあるから金を稼ぐためには仕方ない生き方だったのかもしれないよ。生きるためには何だってやらなきゃいけないという人もいるさ」

「ん?あいつの子供と家庭?
お前まじか?どこまでお人よしなんだよ(笑)あいつもともと独身で家庭なんてないってよ?
あ。そうかお前のとこでは『子育てをするお母さんを応援します』みたいな求人出していたもんな~。そこで苦労している健気な子育てママを演じてお前に接近してきたんじゃね?
それを真に受けて信じているお前もほんとにバカだよな~。
あれだけの精鋭部隊を率いていたのにあんな女に落ちて会社ごと溶かしちゃうなんてよ(笑)
あ、お前もしかしてあいつが子供の頃に虐待受けていたとか、妹が幼少期に急死したとかも信じていないだろうな?
不幸な身の上話で同情してもらって相手の懐に飛び込むなんて詐欺師の常套手段だろ?あんな子供だましみたいな嘘に騙されるやつがこんな近くにいるとは(笑)。お前営業力あるくせにお人よしが過ぎるとこがあったもんな~。」


この事実は衝撃だった。
素直に有田の家庭の事や子供の事を信じていたし、彼女の不幸な生い立ちを聞かされてどうにか彼女の力になってあげたいと思っていたのは事実だ。
会社の経営も上手くいっていたし、金銭的な援助も少なくない金額を渡していた。すべてが嘘だったというのか。

確かに毎日夜遅くまで残業をしたりして家事との両立を心配した時期もあったし、家庭の事は彼女の口からしか聞いたことがない。そう言えば付き合ってからは家庭の話はほとんどなくずっと一緒にいたような気もする。
付き合う前までは家事や子育ての苦労をたくさん聞かされたが、思い返せば一緒に居るころは家事をしているような素振りが一切なかったような・・・


でもなぜ彼女が嘘をついていると断言できるのか?

頭がふらふらしてきたがこの後の村瀬の話に驚愕した。


「んでさ、お人よし君(笑)
あいつオリエント辞めた後どうなったか知りたくないか?
俺の一番弟子だった片岡覚えてる?お前のとこに居た木村の一個下くらいで入ってきて木村とのバチバチの対立の後にオメガエージェントに転職した片岡。」

「あ~。直接俺が関わったわけじゃないけど覚えているよ。木村の厳しいやり方に正面から批判していたやつだろ?仕事はできるけど木村とは正反対の営業スタイルだったもんな。情熱の木村と冷徹な片岡って感じで後輩の中では目立っていたしな」

「そうそう。その片岡。こいつが今はオメガの副社長になっててさ、有田はオリエントを辞めた後にお前んとこのリアルストックのデータとオリエントのデータを持っていますって言って片岡んとこの門を叩いたんだと(笑)ほんと節操もない奴だよ」

片岡は今でも村瀬を慕っているらしく定期的に情報交換と言っては飲んでいるらしい。

「そこでな。有田のやり方が全くうちと一緒だったわけ(笑)
馬鹿の一つおぼえみたいにまずは幹部連中に色仕掛け。そのあとは社長に言い寄る始末。
ま、オメガの社長はほら女に興味ないじゃん?だからターゲットが片岡になったらしくてよ。オリエントにも居たしリアルストックにも居たというから片岡は最初から警戒していたらしい。
狭い業界だし短期間で転職した2社の情報を持っているってアピールされると逆に警戒するってもんだしな。
んでさ、片岡ってロボットみたいに冷徹なヤツじゃん?データ命!みたいなさ。少し素行がおかしいと思ってあいつの会社の懇意にしている調査会社に有田を探らせたらしいんだ。
すると住所や経歴が全て嘘だったということが判明したらしくて、そんですぐに俺に連絡が来て『あの有田って女村瀬さんとこで何やりました?大丈夫でしたか?』みたいな感じになってさ。
履歴書調べてみたらうちに来た時の経歴も全部デタラメ。
調査事務所が調べたら過去には美人局をしたり、夜の街でいろいろやっていたらしいぜ。
もちろん子供も旦那もいない。貧しい実家というよりは結構な裕福な家庭だったとも聞いている。」


正直、この事実を聞く時にはもう言葉も出なかった。
嘘で塗り固めた女に金も会社も何もかもを溶かしたという自分の馬鹿さ加減に辟易していた。


「んでさ、片岡ってあんなやつじゃん?キッパリとお前みたいな女は要らんって切り捨てたらしい(笑)
んで業者会とか片岡のネットワークで要注意人物として情報を回したらしくてさ、もうあの子はうちの業界には転職できなくなったんじゃないかな?
でも今から他の業界にいくのは難しいかもな〜。あの子もう40だろ?まずこんなに年収稼げる業界は他にないし、業者同士でここまで横のつながりとか礼儀を重んじる業界もなかなかないし。
オリエントとオメガなんて老舗中の老舗だし、そこのトップに色仕掛けするし、急成長のお前の会社を食い潰したと噂になればもうどこも雇うことはないだろうしな。

ま、最初も言ったけどお前は女を見る目がなさすぎる!それを言いたかったんだ(笑)」


業界から離れていた俺には彼女の素行や情報が入ってこなかったがそんなふうになっていたんだ。
もうなんの感情も出てこなかった。


村瀬はこれだけを言うために俺を呼び出したらしい。


ドラマや映画だったら
「お前もだいぶ反省したみたいだしウチでもう一回やり直さないか?うちの重要なポストが空いてさ」
とか
「あの女、いろいろやり過ぎてどでかいしっぺ返しくらったってよ。刑務所送りだってさ」
みたいなハッピーエンドとか因果応報の結果を用意するだろうが現実はそうはいかない。

俺はそのまま運送屋で養育費を捻出する日々だし、彼女はまだどこかでお金と男の匂いを探りながら生きているんだろう。


ただ単純に魔が刺して不倫をしたら何もかも失って昔の同期にも笑われるだけの男のお話でした。


また、なにかあればみなさんにこうやって共有することがあるかもしれませんが、あまり期待しないでください(笑)

では今回はこのへんで


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私の起業失敗談

栄枯盛衰の続き


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