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なろう系はどこから来たのか なろう系は何なのか なろう系はどこへ行くのか 〜ニジュウ年代のアニメ史 〜

  鈴懸の木の道で「君の微笑みを夢に見る」と言ってしまったら僕たちの関係はどう変わってしまうのか、僕なりに何日か考えた上でのやや気恥ずかしい結論のようなもの

 ……というタイトルの曲をご存じだろうか。

 答えは、AKB48の34枚目シングルのタイトルである。

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 この曲を作曲した秋元康はこう語っている、「今回のじゃんけん選抜のメンバーをイメージしながら曲を作っている時に、“一言では言い表せない何か”を感じた」(wikiより)と。

 本来タイトルというものは、短くてキャッチーなもの、長くてもワンフレーズほどで終わるのが人の記憶にも残りやすく丁度いい。例えば、ワールドワイドな活躍をしている韓国のアイドルグループ、トゥワイス(TWICE)の「What is Love?」(愛って何?)や「YES or YES」といった具合に。

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 なので、冗長なタイトルというのは概して忌避されるものである。

 しかし、そんな長ったらしいタイトルをわざわざ乱発するものがある。

 それは、ライトノベル(≒一部のアニメ)である。

 今回は、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(略して、俺妹・おれいも)からはじまった無駄に長いタイトルのラノベの巣窟である、小説投稿サイト「小説家になろう」からアニメ化された作品をテキストマイニング(計量テキスト分析)する。

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 と、その前に、小説投稿サイト「小説家になろう」とは何か、その歴史と仕組みについて、ざっくり説明しようと思う。

 さて、「小説家になろう」というサイトは、小説家ワナビー・小説家死亡の集まったサイトである。

 ちなみに、アンサイクロペディアの説明によると、「小説家になろうとは、・・・小説家志望者が恥知らずにも自由に小説を投稿できるウェブサイトである。読者は投稿された小説を金を払うことなく思う存分読むことができる」と書かれている。

いやはや、実に辛らつだ。アンサイクロペディアにはその後も同様に、「小説家になろう」(以下、なろうと略す。)に対する憎悪と嫌悪と軽蔑の念が満ち溢れたブラックユーモアがアンサイクロペディアにしては珍しく続く、ユーモアというよりシニカル、単なる皮肉だ。

 そんなサイトだが、現在では、異世界転生ものを中心として、数々の作品を商業化し、世に送り出している。一般的にも知られたものだと、去年、一昨年と立て続けに映画化した『君の膵臓をたべたい』がある。

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 なろうは、ランキング制のサイトであり、商業化・小説家デビューを夢見る書き手たちは、ランキング上位を巡って日夜争っている。それゆえに、なろうでは、必然的に、ランキング上位に入りやすい文章・ストーリーの作品が量産される。

 そこで、テンプレ化したのは、異世界転生俺TUEEEと呼ばれるものである。わかりやすくいうと、異世界転生したオタク・ニートがチート級に無双して、ハーレムを作る話である。このパターンは、なろう系とも呼ばれ、なろうでは王道となった流れである。

 ……不思議そうな顔をしているね。え?、そこまでテンプレ化しているなら、あえて、邪道な展開を採用してニッチな層に向けて珍しさをアピールするインセンティブ、戦略が働くんじゃないかって?

 だがしかし、絶対そうはならないシステムがなろうにはあって、それがなろう系というジャンルを量産し続けているもう一つの要因になっているんだよね。

 それが、感想欄の存在だ。

 実際にあった例だが、ヒロインが非処女であれば当然、元彼でもいようものなら作者が叩かれ炎上し、大量の迷惑メールまで送られてくる始末だ。他にも、主人公が負けても感想欄が大炎上する。

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 そんなわけだから、最初の設定は面白かったのに、読者の期待・欲望に答えようとするあまり、いつのまにか単なるクソハーレムものになってしまった作品は枚挙にいとまがない。これは、なろうに限ったことではなく、キリトで有名なSAO(ソードアートオンライン)や最近放送された盾の勇者も同じ道をたどった。

 なろう作品は、よく「オタクのオナニーだ」とか、「現実世界で満たされないオタクが妄想の世界で欲望を満たしている自慰作品だ」とかいうような罵倒を浴びることが多い。実際、なろうは、『To LOVEる (とらぶる)』(少年ジャンプで連載していた漫画)や『いちご100%』(同じくジャンプ作品)とは比べものにならないくらい、女性をモノ化・性欲の対象としか見ておらず、エロゲ―に登場する出会って三分後には合体している美少女となんら違いはない。違いがあるとすれば、永久に処女であることぐらいか。

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 一般的に、オタク向けの作品は、女性蔑視であるといわれ、オタクといえば、「ロリコン・変態・童貞」との三拍子のイメージが存在している。

 また、初音ミクが歌を歌うボカロというシステムは、神絵師が可愛いイラスト・動画を付ければ曲自体はめちゃくちゃクソでも、ニコ動の再生数ランキング上位に入る事が出来たりする。曲のテンポ・ピッチをあげたnight coreという海外のオタクが愛好しているジャンルでも、曲とは全く関係のない日本のアニメの美少女のイラストが無数に付けられている。オタクは、美少女のイラストが付いていれば再生ボタンをクリックするだろうという魂胆なわけだ。

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 そして、まさにオタクにはパケ買いという習性があり、ライトノベルの表紙の女の子が可愛かったらそのラノベをレジに持っていく特性がある。

 なので、一般人の目には、オタク作品は性欲が具現化したようなものに映ってしまい、献血ポスターで、炎上した宇崎ちゃんのようなキャラに対する理解に齟齬が生まれることが時々ある。

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 話が多少脱線してしまったので、ラノベの話に戻ろうと思う。

 なろうの作品は、テンプレ化してしまって、だいたい同じ内容ばかりになってしまったことは、先ほど述べた。

 そうすると、ラノベ業界からこういった憂いが聞こえるようになった。

 「ラノベがなろう系ばかりになって、ラノベ業界の質・レベルが低下している。」と。

 たしか、雑誌『ユリイカ』で、佐藤俊樹が「「なろう」と世界の戦いなら、世界の方を支援したい――上遠野浩平と現在のライトノベル産業」で、そのようなことを述べてたような気もするが、読んだのは一年前くらいなので、あやふや。

 まあ、このあたりで、なろうに関する説明は切り上げようかと思う。

 これから、具体的な作品のテキスト分析を行っていく。

 まずは、オーバーロードという作品をKHcoderを使用し、テキストマイニングする。

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 なぜ、この作品を取り上げるのか。理由は2つある。

 一つは、累計760万部の発行部数を誇り、歴代ラノベランキング16位に位置し、典型的な俺TUEEEハーレム作品だからである。

 二つ目は、高校三年生の時に、虚無だった私がこのアニメを五、六回繰り返し視聴し、なろう版・ラノベ版も何度か読み返すほど、ハマってたからである。内容は大して面白くないのにも関わらず、頭を空っぽにして観れる・読める上に、現実逃避的な無双感を手軽に楽しめた作品だからである。

 きっとこれは俺TUEEEにハマる読者(オタク)の典型的な精神状態だと思う。主人公が無双するので、ストレスなく読書・視聴できる。

 ではさっそく、分析結果を見て見ようと思う。

 ⚠️注意 図表は読み飛ばして下さい。図表の解釈結果を文章として記述しているので、読み飛ばして下さい。図はカッコつけで載せてるだけです。

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 文中によく出てきた単語(頻出語)上位200単語はこのような結果になった。

 さて、どういった単語が多いのか、すなわち、何がなろう小説(今回はオーバーロード)の特徴なのかを探りながら分析していく。(ちなみに、こういう「分析したらこうなったヨ!」という分析・研究は、俗にヤッコ―研究、やってみたらこうなった研究と呼ばれていたりする。)

 調べてみると、①キャラクター名と②異世界用語・ゲーム用語の比重が大きく二つを合わせると25%を占めるという特徴が浮かんできました。

 これからは特に、この②異世界用語・ゲーム用語、なろうを語る上では欠かせない異世界転生をメインに考察していこうと思います。

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  他にもいくつかしましたが、これらは、オーバーロードという作品に対する分析にならざるを得ないので、今回は図表だけを載せて割愛します。

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  また、使用されている語彙の豊富さを知るために、R(使用したパッケージは、LanguageR )で、ジップの法則(Zipf's law)・トークン比K特性値(Yule's K)を調べた。

  すると、やはり語彙は豊富とはいえない数値になった。ネット小説あるあるな語彙となった。

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K特性値

 テキスト分析のまとめ。

 ①キャラクター名と異世界用語・ゲーム用語で、文中の単語の25%を占めている。

 ②語彙は豊富とはいえず、話し言葉、ネット小説に近い感じであった。

 

今回はここまで。より深い分析・比較は次回以降に行っていこうと思います。

 次回は、リゼロと転スラをテキスト分析する予定。(盾の勇者とデスマも追加でするか検討中。)

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