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あらためてスマイリーがどんな活動をしたいかつれづれ書いてみる。

こんにちは。いつもスマイリーの活動にご理解と応援をいただきありがとうございます。
卵巣がん体験者の会スマイリーの片木美穂です。

2024年5月8日は世界卵巣がんデー

現在、世界卵巣がん連合では2024年5月8日の世界卵巣がんデーに向けていろいろな啓発資材の準備などを進めています。
世界卵巣がんデーは2013年5月8日にスタートし今回で12回目を迎えます。スマイリーは第1回目から日本唯一の公認団体としてこの世界卵巣がんデーに参加しています。

世界卵巣がんデーの啓発は0歳から100歳を超えるすべての女性に卵巣がんのリスクがあることから、より多くの人に卵巣がんを知ってもらうこととして大切な活動であり、毎年のようにこれらの啓発を見て「そういえば長いこと下腹部に違和感があるな」と思った女性が婦人科に足を運び卵巣がんが見つかった、子宮内膜症で婦人科を受診している女性が子宮内膜症のうち1%が癌化することを知り婦人科で相談し念の為の検査をしたところ早期の明細胞がんが見つかったなど報告を受けており婦人科の受診機会を促進する大切な活動だと思っています。

2024年ももう少ししたらSNSを通じてこれらの啓発資材を発信します。
英語で作られてくる資材を私の方で日本語訳して作り直していることから若干世界とタイムラグがありますが、情報がみなさまのもとに届いた際はぜひともシェアなどご協力をお願いします。

スマイリーの活動で大切にしていること

こうした世界規模の啓発とは別に、私たち卵巣がん体験者の会スマイリーが大切にしていることは患者さんの相談支援やおしゃべり会です。
つまり患者さんと「対話」することです。
スマイリーのホームページには【私たちの理念】として「私たちの活動全ては卵巣がん患者さんのために(All Activities for Ovarian Cancer Patients)」を掲げて活動しています。

患者さんは卵巣がんと診断されてから色々な感情の変化・体調の変化・社会的環境の変化などと向き合うことになります。
同じステージ・同じ組織型・同じ年齢・同じ主治医であったとしてもそれぞれが感じる「辛さ」「痛み」「不安」などは違います。
患者さんが病歴を語るとき、患者さんそれぞれが記憶に残ったこととして語るストーリーは当たり前の話ですがひとりひとりが全く違うのです。
私はそうした患者さんが語ってくれる個人的なストーリー“ミッション・モーメント”は患者会として取り組むべき大切な課題が示されているものだと思っています。
「それってあなたの価値観ですよね」みたいな言葉を耳にすることがありますが、卵巣がんと向き合ううえでの患者さんの思いを「あなたの価値観(感じてること)」とその人の個人的なものとして無視してはいけないと思っています。

私たちスマイリーは【理念】とは別に【目標】として3つのテーマを掲げています。
・卵巣がん患者さんが納得の治療を受けられるようにしたい
・卵巣がん患者さんが誰一人取り残されないようにしたい
・卵巣がん患者さんに正確に卵巣がんの情報を提供したい

卵巣がんの患者会として目標とすべき世界は、卵巣がんのリスクがある人を含めた卵巣がんと共に生きるすべての女性が日本のどこに住んでいようとも「卵巣がんと診断された際に生存の確率を可能な限り高くすること」「生活の質が高く過ごせること」を実現できることだと感じています。

でも、実際のところ2022年にスマイリーが行った「卵巣がん患者の医師とのコミュニケーションに関する調査」では55%の卵巣がん患者が主治医に不安や質問を伝えられなかった経験をしており、21%の卵巣がん患者が伝えられないことが頻繁であるというコミュニケーション不全を訴えています
コミュニケーション不全は患者にとって適切な情報へのアクセスを妨げるだけではなく、主治医への不信から適切な医療への不信にもつながり、患者が最善の医療を受けられなくなる結果につながることもあります。

そうした課題をあぶり出し、より良い医療に繋げるためにも患者さんの相談を受けること、おしゃべり会でざっくばらんに対話するということ・・・つまりみなさんの思いや経験は卵巣がん医療の未来にとって大切なことなのだと考えています。

世界の卵巣がん、今後の予測

さて、最近とても卵巣がんに対する衝撃な予測がGlobocanから出ました。
2050年までに世界の卵巣がん罹患率は55%以上増加、死亡率は70%近く急増すると予測されているのです。

※Globocanの予測を日本だけで見た場合は、日本の国民が今後減少していくこともあり、2050年に卵巣がんと診断される女性の数は2020年に比べ11.9%減少し、卵巣がんで死亡する女性も4%減少すると予測されています。

日本では2009年に抗がん剤ドキシルが米国の承認から10年遅れで承認されました。
その後も厚生労働省が設けた検討部会に申請することでトポテカン、ゲムシタビン、エトポシド、パクリタキセルの毎週投与法、ベバシズマブが承認されました。
さらに2018年以降ではオラパリブやニラパリブが承認されました。
そしてこれらの承認された治療薬をより適切に使うための臨床試験が行われ、プラチナ感受性卵巣がんには「カルボプラチン+ドキシル」「カルボプラチン+ゲムシタビン」という治療の選択肢、プラチナ抵抗性卵巣がんに対しても従来の「ドキシル」「ゲムシタビン」「トポテカン」を単剤で使う以外にも「ベバシズマブを組み合わせる」治療も選択肢であることなどがわかりガイドラインに掲載されています。

こうした治療進歩にもかかわらず、卵巣がんは女性特有のがんのなかで最も困難ながんであることは変わりなく、治癒する患者さんが飛躍的に増えている実感は患者会としてありません。

世界卵巣がん連合のミーティングでは「卵巣がんと診断された際に生存の確率を可能な限り高くすること」「生活の質が高く過ごせること」ということを実現できない苦しみを日本だけではなくアメリカやイギリスも感じていることがわかります。

例えば卵巣がんは死亡者を減らすと証明された検診・検査がないため半数近い患者さんが進行がんで発見されます。
進行がんの患者さんに対しては手術と抗がん剤治療(+維持療法)が標準治療ですが、イギリスの卵巣がん監査試験(OCAFP)の結果によるとイングランドでは進行がんの4人に1人が抗がん剤治療を受けておらず、卵巣がんの標準治療である手術と化学療法の両方を受けた女性は51%であるという結果が示されています。
これでは「卵巣がんと診断された際に生存の確率を可能な限り高くすること」を達成することは困難です。

日本で同様の調査は行われていないため適切な医療を受けられている患者さんの数自体を証明することはなかなか難しいですが、それでも海外からも学びながら日本の卵巣がん医療をよくするためにできることはまだまだあると思っています。
そのためにも、みなさんとの対話は私たち患者会にとっても大切なひとつなのです。

スマイリーの現状とこれから

2022年、2023年と相談が爆発的に増え1300件を超えている現状を見て相談支援を有料化すればいいといった提案をいただくことが増えています。
しかし、私はその決断をしていません。
ただでさえ患者会という存在は「ものを売りつけられるのではないか」「実態は宗教じゃないのか」といった怪しく思われる存在なのに有料化してしまうとさらに患者さんへの心理的な壁が大きくなりスマイリーの目標である「誰一人取り残さない(No Woman Left Behind)」というものからずれていってしまうからです。

ただ正直にお話しすると、スマイリーの活動を立ち上げたとき32歳だった私もすでに50歳です。
平日の活動日は22時23時まで相談の返信を続けて1時2時に寝て5時に起きる、休日は講演会や学会のスライドを作る・学会に参加をして学びを得るという休みない生活をこれからも続けられるのかという体力的な不安は常にあります。
でもまずは手の届く範囲、つまりスマイリーに声を寄せてくださった患者様にだけは可能な限り私は対話したいと思うのです。

昨年、スマイリーの会計担当者が長い長い子宮頸がんの治療を終え亡くなりました。
そして今年は事務局長が病気になった家族を支えるために長期間スマイリーの活動から離れることになりました。
スマイリーのメルマガ会員さんには先日スマイリーの2023年の収支をお見せしましたが潤沢な資金を持ちながら余裕をもって活動をしているわけでもありません。
こんな小さな患者会ができることなんてたかが知れている・・・私自身それはわかっています。

それでもある患者さんは「スマイリーを見つけた時に卵巣がんになってはじめてホッとしました」と話してくれました。
別の患者さんは「インターネットに書かれていることが主治医の説明と違い、主治医は本当に卵巣がんのことがわかっているのか不安になった。でもスマイリーに問い合わせたらインターネットに書かれている情報の方が間違えていて、主治医は学会の卵巣がん委員会などでも活躍されていて勉強をしている先生だと教えてもらえてホッとしました」と言ってくださるのです。
このように微力であったとしても患者さんが評価してくださるのであれば活動を続けていきたいなと思っています。

また、3月10日に開催するイベントでもお気付きのように、現在スマイリーにはおしゃべり会やイベントの際には手伝ってくれる素晴らしい卵巣がん患者さんたちがいます。大阪に帰ったときには駆けつけてくれる古くからの卵巣がん患者さんたちがいます。
だから私は図々しくもスマイリーを頼ってくださるみなさまに頼りながらもできることを2024年もやっていこうと思っています。
どうぞよろしくお願いします。

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