「スイセイビヨリ」のはなし

 こんにちは。スナハラサハラです。
 先日今年最初の曲、スイセイビヨリを投稿しました。

 最近宇宙テーマの曲を作ることが多いです。宇宙って暗いし音が聞こえないし寂しいイメージがあるけど全て包んでくれるような温かみも感じるので、内省的な曲を作る時はモチーフにすることが多いです。もう何曲か作って6曲入りくらいのEPにしてボーマスで販売したいなぁ、と思います。
 以前作った「ほしからねがいを」は地球、「テラフォーミー」は宇宙がテーマだとすると、今回の「スイセイビヨリ」は小惑星がテーマの曲になっています。

曲のテーマについて

 概要欄にも書いたのですが、スイセイビヨリは伊坂幸太郎さんの「終末のフール」という短編集をイメージして作った曲です。終末のフールは「8年後に小惑星が地球に衝突する」と言われてから5年後、暴動や混乱が一時的に収まって小康状態にある世界で生きる人々を描いた作品です。人類滅亡が迫るなかで家族との和解や産む・産まないの選択、復讐などさまざまな人の話が展開されていくのですが、特に好きな短編が「冬眠のガール」です。

 冬眠のガールは終末世界に耐えかね両親を心中で亡くした女の子が、ふとしたことから恋人を作りたいと思い過去のクラスメイトや家庭教師に相談するという話です。この女の子がちょっと不思議でとてもかわいいので是非読んでほしいのですが、人類が滅亡する、という絶対的な終わりに向かいながらも、買い物に行ったり本を読んだり恋をしたりという生活の部分からは終わりの終わりまで逃れられないんだな、というところが印象に残っていて、そこに人間の滑稽さというかおもしろみを感じました。

 また別の本なのですが、星野源さんの「そして生活はつづく」というエッセイ集の中にある、「人は生きている限り生活から逃れられない」という一節がすごく好きで、生まれてから死ぬまで生活からは離れられないのでうまく付き合っていくしかないな、と考えると生活そのものがちょっとやっかいな同居人と思えて少し愛しく思えます。

 なので、この2冊の本から着想を得て、終わろうとする世界で続ける生活についてのおかしさ、しょうもなさ、愛しさをテーマにして曲を作りました。

歌詞について

 歌詞の構成としては全体を通して日常生活と終末世界の生活が対になるように書いています。「人類」っていう壮大なワードが出た後に「牛乳と洗剤」っていうThe日用品なワードを出したり、「月が丘に落ちて」というこの世が終わるワードを出した後に「ガスの元栓」という生活感溢れるワードを入れて緊張と緩和を表現しようとしています。

 ちなみに、1Aの東西線は仙台市営地下鉄の東西線を指しています。「終末のフール」の舞台が仙台市南部のヒルズタウンという集合住宅なので、冬眠のガールの子が友達を見送るのは東西線かな、と思って入れました(ちなみに仙台市は2回だけ行ったことがあります)。本当は広瀬川みたいなローカルワードも入れたかったのですが、うまく入れられず辞めました。
 

タイトルについて

 この曲のタイトルは曲が全部出来てから1番最後に決めました。なんならタイトルが決められず投稿できないかも、くらいまで悩みました。

 冬眠のガールの中で、「世界が終わるんじゃなくて、冬眠して永い眠りにつくと考えれば気持ちが楽になるんじゃないか(意訳)」というセリフがあります。
 死ぬのを眠ると考えるなら、生きていることは眠りと眠りの間にある夢を見ている状態に近いんじゃないかと思い、酔生夢死と落ちてくるイメージの彗星(終末のフールは小惑星だけど)を合わせてスイセイビヨリというタイトルにしました。

曲について

 曲はまず跳ねた感じの高速モータウンビートを作ろう!というところから始めました。あと、相対性理論の上海anを参考にリコーダー風のリフを入れて、跳ねてるけど力が抜けるような緩い雰囲気を出しました。

 サビはA#→A#maj7→A#7と半音ずつ下がっていく進行をずっと使ってみたくて今回使っています。カラスは真っ白のハイスピード無鉄砲を参考にしています。

  あとはギターソロもコード感、浮遊感を意識してちょっとオシャレな感じにしたりとか、ベースラインを過去にないくらい動かしたこととかがお気に入りポイントになっています。人気がない瓦礫だらけの街を、ちょっとお洒落して鼻歌を歌いながら歩くような曲になるように作りました。気に入っているので、たくさん聴いてほしいなと思います。

 次はこの前ネタ曲投稿祭で投稿したトンファー・ガール!のはなしか、ボカコレが近づいてきたので去年のボカコレで投稿した瞬間少女のはなしをしたいなと思います。あと、ウマ娘が2周年なのでストーリーがおすすめのウマ娘の紹介もしたいし、書きたいことがたくさんあるのでまた近々書きたいと思います。

スナハラサハラでした。

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