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元テレビマンが『ニッポンおもひで探訪』に震えた理由

ネット上で話題になっていたNHKの番組『ドキュメント20min. ニッポンおもひで探訪 ~北信濃 神々が集う里で~』を見ました。面白かったです。

番組の前半は、よくあるNHKのドキュメンタリーという雰囲気。宍戸開さんが小さな集落を訪れて、地元の祭りに参加します。でも、後半には意外な展開が待ち受けています。

この番組の前半部分を見たとき、私は期待と興奮でゾクゾクしました。たぶん、一般的なテレビ視聴者よりも少し強めにゾクゾクしていたと思います。なぜなら、私はもともとテレビ制作会社で仕事をしていた経験があり、NHKの番組を作るとはどういうことなのか、というのをわかっているからです。

番組の前半は、表面上は普通のドキュメンタリーっぽいんだけど、どこか不穏な感じが漂っています。この段階で、目の肥えた視聴者なら「ああ、最近流行りのフェイクドキュメンタリー系の番組なのね」と思うところです。

でも、「いや、そうじゃない」と元テレビマンである私は断言できます。公共放送のNHKでは、そんなウソの情報を広めかねないような、あとからネタバラシをするタイプのトガッたフェイクドキュメンタリーを作れるはずがないのです。だから、この番組の着地点はそちらではないと断言できる。

でも、だとするとどういうことになるんだ、というのがよくわからない。ここで大きな謎を抱えたまま、後半部分に入ってあの結末を見届けることになりました。

そして「なるほど! そう来たか!」と思いました。たしかにこれならルール違反ではない。NHKの「ドキュメント20min.」の枠で流す番組としてギリギリ成立している。しかも、単なる「仕掛けのための仕掛け」じゃないところもいい。視聴者を驚かせるためではなく、演出上の意味があってそれを選んでいるのがわかります。

ここでやっていることは、民放の番組でもできないことはないけど、NHKでやった方が間違いなく面白い。NHKの番組であること自体をフリにして、大仕掛けを成立させているからです。

私の経験上でも、NHKが面白いのってこういうところなんだよな、とも思います。NHKは民放と違って、スポンサーや視聴率に縛られていない。だから、できることの範囲は意外と広く、純粋に面白さを追求しやすいところもあるのです。

意外な結末で驚かせるタイプの上質な短編ミステリのような番組でした。TVerやNHKプラスで見逃し配信があるので、未見の方はぜひチェックしてみてください。



《告知》

12月12日(火)の19:00~23:30に新宿の「ビキニマシーン」というBARで一日店長イベントをやります。よろしくお願いします。

『お笑いの話ができる地下BAR』
日時:12/12(火)19:00~23:30(L.O.23:00)
場所:ビキニマシーン
(東京都新宿区歌舞伎町2-9-18 ライオンズプラザB1F)
料金:チャージ1000円、ドリンク700円~