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【サウナと私1】初めてのサウナ

どうも、ラリー遠田です。お笑いに関する文章を書いたりする仕事をしている人間です。

私がサウナにハマったのは数年前。きっかけは当時としては最もベタなタナカカツキさんの『マンガサ道』。マンガ好きとして何気なく読んだマンガの一つがそれだった。へえ、とは思ったけれど、読んですぐに実践はしなかった。

その後、友人と温泉に出かけた際、ホテル内の温泉施設でサウナを見つけて、初めて入ってみた。サウナ自体は入ったことはあるので違和感はなかった。ただ、その後に水風呂にじっくり入るのは未体験だった。

ある程度のところでサウナを出て、バンジージャンプをするぐらいの覚悟で思い切って水風呂に入った。最初の数秒は死ぬほど冷たい。しかし、その後、異変が起きた。

なぜか冷たさが消えた。冷たいとか寒いという感覚がない。それどころか、すべての感覚が遮断されたかのような静けさの中にいた。試しに少しでも体を動かそうとすると、すぐに水の冷たさが蘇る。しかし、動きを止めれば再び静けさの中に帰っていく。

しばらくして水風呂を出た。そこで「ととのう」という感覚が来た。大浴場の中の洗い場スペースの椅子に腰を下ろし、自らの体の状態を確認するかのようにそっと目を閉じる。体の中の魂的なものが渦を巻いて上昇して、頭の先から上へと突き抜けていく。

これが、噂の、あの「ととのったー」というやつなのか! 合法的にこの感覚が味わえることに新鮮な驚きを感じた。そして、多くのおじさんやおじいさんがなぜあれほどサウナが好きなのか、その理由が実感としてわかった。これだったのか。

薄目を開けて目の前の鏡を覗くと、そこにももう一つの不思議があった。鏡の中の自分が自分ではない他人に感じられる。自分がそこにいるという普段の感覚がなく、そこにただ人間大の物体がある、という感じだ。そこにあるあれは自分ではない。そうはっきりと感じられた。

さらに目を細めて光の量を絞ると、光の輪郭だけがぼやけて残り、すべてはその中に溶けて消えていった。しばらくその感じを味わい、ようやく少し落ち着いたところで、タナカ先生の描写の正確さに震えた。「ととのったー!」のときのあのサイケデリックな描写は大げさでも何でもなかった。サウナとはそういうことだったのだ。こうして私のサウナ道が始まった。