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【第15回】ライトニン・ホプキンス/モージョ・ハンド

以前居酒屋のようなところでランチをしていたときに、隣のおば様がビールをとても美味しそうに飲んでいて、私に向かって「なんか悪いわね〜」と笑顔で謝ってきた。私はお酒はほとんど飲めないし、ビールも美味しいと感じたこともないので、うらやましくともなんともなかったのだが「いえいえ、美味しそうですね」と一応答えておいた。
このときのおば様があまりにも幸せそうにしているもんだから、私の方もなんだかほっこりとしてしまった。まあもし私がビール大好きな人間だったらイラッとしてしまうのかもしれないけれど。
お休みの日に昼間から煮魚やら天ぷらやらをつつきながら、ビールを気持ち良さそうに飲んでる人を見ると、お酒を飲めない私は人生の何割かを損しているんじゃないかという気持ちになってくる。お酒を飲みながらブルースを聴くことができたら、なんだかとっても粋な男になった気持ちになれる気がするのだが。
ブルースマンの中にもたくさんのお酒好きがいそうだけど、こんな感じで幸せそうにお酒を嗜んでいそうな人というと、私の中では「ライトニン・ホプキンス」がそのイメージに1番近い。
これはライトニンさんの名盤「モージョ・ハンド」を聴いているからであろう。このLPの1曲目「モージョ・ハンド」の途中「デヘヘ」という笑い声が聴こえてくるのだが、この「デヘヘ」が私には酔っ払いの笑い声に聴こえるのだ。「こんな昼間っから酔っ払っちゃって悪いね〜」なんて言ってそうな、そんな感じである。このLP自体は渋めの曲が多いと思うんだけど、この「デヘヘ」のおかげでどの曲もどこか陽気な感じがしてしまう。近所のおっさんがホロ酔い気分でブルースを奏でている感じとでも言おうか。この曲の渋さとのギャップが実に心地良い。
曲は基本的にはアコギに歌とドラムのシンプルなブルースが続くので、真剣に聴こうとするとちょっと疲れちゃうかもしれない。でもLP全体通して35分程度だし、肩の力を抜いて気楽な気持ちで聴くのが良いんじゃないかと思っている。私は何度聴いても1曲1曲の区別はいまいちつかめないけれど、LP全体を通しての雰囲気を楽しんで聴いている。
ちなみに私はお酒はほとんど飲めないけれど、お酒のつまみは大好きである。イカソーメン、チータラ、ビーフジャーキー(チーズと合わせて食べると最高!)などなど。私はこれらをつまみにして、炭酸ジュースを飲み、そしてライトニンさんのLPを聴いてホロ酔い気分になる。昼間っからジュースなんか飲んじゃって悪いね〜という申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

ライトニン
避け(酒)て通るな
良い(酔い)ブルース

季語はブルース。

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