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自動詞と他動詞(続き)

この記事は以前の記事からの続きです。

自動詞は主語自体の動きを表します。このため、自動詞は自然現象や生理現象、そして単純動作を表します。

ジュディが笑う
Judy smiles.
マイクがあくびする
Mike yawns.
ジョージが泳ぐ
George swims.

自然現象、生理現象、単純動作といったものには、あたりまえのことが多く、文脈によっては情報として伝える価値がないこともあります。このため、多くの場合、これらの文には修飾語がつきます。

Judy always smiles at me.
Mike often yawns in class.
George swims in the pool every morning.

Itを主語にした天候を表す文にも自動詞が現れます。

It rained in the morning.

存在を表す動詞も自動詞ですが、〈場所〉の表現が必要です。

城は丘の上に立っている
The castle stands on a hill.
彼の家は駅の近くにある
His house is near the station.
ジョンはロンドンに住んでいる
John lives in London.

移動を表す動詞も自動詞です。これらの動詞には〈方向〉の表現が必要です。

私は映画を見に行った
I went to the movie.
バス路線は公園の近くまで来ている
The bus line comes near the park.

存在や移動の動詞に必要な〈場所〉や〈移動〉の表現は、原則として省略することができません。つまり、これらの語句は純粋な意味での修飾語ではないのです。

日本語では動詞と結びつく名詞はすべて「名詞+格助詞」という形で表します。この格助詞のうち、「が」「を」と一部の用法の「に」は、話しことばで省略することがあります。これに対して英語では動詞と結びつく名詞には名詞(句)単独で直接動詞と結びつく場合と「前置詞+名詞」という形で結びつく場合の2通りがあります。名詞が直接動詞と結びつく場合、動詞の左側で結びつく名詞を主語、動詞の右側で結びつく名詞を目的語と呼んでいます。日本語の場合はすべての名詞が「名詞+助詞」で動詞と結びつきますから、主語や目的語とそれ以外の語句との区別が曖昧になります。実際、現行の学校国文法(=国語の教科書に載っている文法)には「目的語」は登場しません。

Mary sang. メアリーは歌った。
Mary sang to the baby. メアリーは赤ちゃん歌いかけた。
Mary kissed the baby. メアリーは赤ちゃんキスした。
Mary hit the baby. メアリーは赤ちゃんたたいた。

sangで文が終わっている最初の文は自動詞の例です。対応する日本語の「歌った」も自動詞であるといえます。ふたつめのto the babyがある文ですが、英語ではメアリーが歌っていても、赤ちゃんがその歌に耳を傾けて反応するかどうかは別問題であるということで、他動詞ではなく自動詞になっています。そして歌いかける相手を「to the baby」と前置詞のtoをつけて表しています。対応する日本語では、「赤ちゃんに」という「名詞+格助詞」が「歌いかけた」と結びついています。この対応はspeak/speak toが「話す/話しかける」などにも見られます。

三つ目は英語ではkissという行為がメアリーの唇が赤ちゃんに物理的に接触することから、赤ちゃんに影響が及ぶものと考え他動詞になっています。これに対応する日本語ではsing toの場合と同じく「赤ちゃんに」という「名詞+格助詞」が「キスした」と結びついています。これはキスという行為が確かに物理的接触を伴うものとはいえ、それによって赤ちゃんが痛くなったりかゆくなったりするわけではないという判断が働いています。最後のhitの文では赤ちゃんが痛くなるという明らかな影響が及ぶため、英語では他動詞の文であり、日本語では「赤ちゃんを」という「名詞+格助詞」が「たたいた」と結びついています。日本語の助詞は「に」よりも「を」のほうが主語からの影響を大きく受けていることを表していることがここからわかります。

ここから、英語の「主語(S)+述語動詞(V)+目的語(O)」という文型を「SがOをVする」という日本語のパターンと対応づけて覚えようとする傾向が生じるわけです。確かにこれが典型的な対応関係ですから、とりあえず最初に覚えておくのはよいでしょう。しかし、上のkissの例のように「SがOにVする」が対応している場合もあります。また、日本語の文法を考えた場合、「名詞+を」を目的語とみなすことは問題なさそうですが「名詞+に」を目的語としてよいのかは慎重にならなければならないように思われます。

動画もあります。


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