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「皿の上の聖騎士」感想

ネタバレがあるので未読の方はご注意ください

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物語の展開が非常に良かった

83点/100点満点

あらすじ

伝説とともに世界観の設定
かつて群雄割拠の中亡国の危機にさらされた小国に一人の農民が各地の霊獣のもとを訪ね霊獣の力を宿した鎧を
受け取りその力を持って平野の多くを祖国の先兵として戦い平定した
霊獣は他の後追いの者たちに授けられた物とは決定的に違いその力はその国の伝説になっていた

その英雄となった農民の子孫はその祖国にて騎士になっていた
類まれなる才能と美貌に恵まれた姉・アシュリ・フィッシュバーンと平凡でいながら才気あふれる姉に追いつこうと努力を重ねる弟:アイザック・フィッシュバーン
姉が16歳その世界では成人の年を迎えた日、先祖から受け継いだ霊獣の力を宿した鎧を受け継ぎ聖騎士の称号が授けられる式典が執り行わられた。

式典当日、式典の会場となる謁見の間にやってきたアイザックは王と騎士団長など国のごく一部のお偉方のみで執り行われるその様に自分が想像していた盛大なイメージと反していて違和感を覚える。
そしてアシュリーが霊獣の鎧を身に着けた際に異変は起こる。
鎧を付けたアシュリーの身体がまるで中身がなくなったかのようにバラバラに崩れ落ちその部分部分は消え失われてしまっている。
胴回りはドラゴンとなり右腕はグリフォンとなりその謁見の間から瞬く間に飛び去ってしまう。

アイザックは目の前で起こる異常事態にアシュリーに歩み寄ろうとするが、騎士団長のサイラスが静止する。
しかし最後の一部分である兜つまりアシュリーの頭部のみになった瞬間その静止を振り切りアイザックはアシュリーの頭部を抱きしめる。

周りの王や大臣たちはその行動に激高しすぐさまアイザックに頭部を手放すように命令するがその様にアイザックは理解する。
この事態はこの者たちにとっては想定内の出来事であると。
アシュリーが消え失せることを知った上での式典だと言うこと、この場で事情を知らずに立ち会っているのは自分ただ一人であることを
アイザックは王に説明を求めるが聞く耳を持たない王はサイラスにアイザックの処刑を命じる。
サイラスは以前から姉以上にアイザックのことを目にかけてくれている数少ない人物であり王の命令にも異を唱えアイザックに事情を説明することを願う。

王は渋々説明を了承しアイザックにフィッシュバーン家に受け継がれる霊獣の鎧の驚くべき事実が告げられる。

かつての先祖は霊獣に与えられた無理難題の試練を祖国を思う気持ちと勇気で乗り越えその勇気を称え己の能力が加護された鎧を授けたと言い伝えられているが実のところ霊獣たちが男に与えた試練は唯一つ100年後に見ればひと目でそれとわかる絶世の美女がフィッシュバーン家に生まれる。その女を霊獣たちに差し出せとのことだった。
男は100年後に生まれる自分の子孫の命を差し出し霊獣たちの加護を受けた鎧を手に入れ英雄となったとのことだった。

その100年後に生まれる美女というのがアシュリーであった。
王たちは英雄から受け継いだ約束を果たすためアシュリーを騎士として育て今日この日に成人の儀と偽り霊獣たちの生贄にしたのだった。

それを知ったアイザックはその理不尽さに怒りを覚えアシュリーの首を抱えたま謁見の間を抜け出す。
アシュリーはなんと顔だけになっても意識がありその頭は兜をかぶった蛇の姿になっていた
兜はヒュドラの力を得たもので先程の胴回や右腕がドラゴンやグリフォンに姿を変えたことから各鎧の部位が与えられた霊獣の姿に変わるようだとわかった。

アイザックは蛇へと姿を変えた姉を連れ生まれ育った祖国から逃亡する道を選ぶ。


印象に残った良いところ

アシュリーが身体を奪われてからアイザックが国を去るまでの展開


アイザックが祖国の城から逃げ出す際にずっとアイザックのことを目にかけてくれたサイラスが説得を試みる。
サイラスは姉を引き渡し思い直せと説得するが、そこでアイザックは一つ心の底から生まれた疑問をサイラスに投げかける。
「俺のことを目にかけてくれたのは姉がいつかいなくなることを知っていたからですか?」
サイラスはその問いに「そのほうが合理的だろう?」と答え、アイザックはその言葉をきっかけに国に反する決意を固める。


そしてサイラスは逃げるアイザックをその後も説得する姿勢は見せたが説得が無理とわかるとあっさりとアイザックに矢を撃ちかけた
アイザックは遮二無二に逃げる、そこにアシュリーが語りかける
「弟よ」
「・・・・」
「弟よ」
「・・・・・」
「泣くな弟よ」

唯一の身内である姉が今にも消え去りそうになり、それに抗うには自分にはあまりにも大きすぎる敵の存在
自分が今まで支えとしてきた尊敬する人物の言葉気持ちがただの打算であり
損となればあっさり切り捨てられてしまう
そんな辛い現実を突きつけられながらも崩れ落ちることもできない
ただ傷つきながら歩み始めた弟にその傷の多くは自分自身のせいとは思いもせずただただ泣いてる弟にたいして今の自分は声をかけてやることしかできない姉の言葉。

アシュリーが鎧を身に着けてから怒涛のごとく展開が進んで行く。
その展開に目を奪われている中で不意にアイザックが涙を流すというシーンが泣いて当たり前の状況なのにはっとさせられて
改めてその辛い状況を鑑みてアイザックが受けた心の傷の大きさに心が動かされる表現だった。

砂漠の国 アロンダイトで宿屋での一件

グリフォンが守護する砂漠の国で右腕を取り返そうと訪れたアイザックとアシュリーとドラゴンの娘・イザトラ。
泊まった宿屋で今後の打ち合わせを行う
まずはグリフォンの情報収集だと
相手は霊獣の一人でまともに戦えばアイザック達が太刀打ちできる相手ではない上、その霊獣自身も自分が守護する国の軍隊と砦に守られている
正攻法ではどうこうできる相手ではないため先ずは相手の状況を知り対策を打っていこうという至極当然の方法
しかしその話し合いがすんだ途端に相手のグリフォンのほうが奇襲をしかけてくる
当然の流れを用意させてそこを唐突に裏切ってくる展開にとてもハラハラしたシーンだった


霊獣のあり方

ドラゴンやグリフォンなどその世界でも強大な力を持ちながら人類の世界と敵対するわけでもなくある種共存している様が面白かった
ドラゴンは住処の竜の巣を囲んでいる強大な森がありそこは人が踏み込めるような場所ではない、しかしその森の近くは普通に人が行き来する場所であり
たまに飛行しているドラゴンが見えるということで観光名所にもなっている
グリフォンは砂漠の岩塩や鉄鉱石など鉱石資源の豊富な地域に根を張っていたがそこに難民達が訪れグリフォンの属下にはいることで霊獣の庇護を受ける国を建国した
グリフォンは国を守る代わりにその国に君臨し王でさえグリフォンの手下でしかない
グリフォンは国を守るという面倒を担った代わりに他の霊獣たちにはない人の戦力を手にした
伝説の山の頂上に~とか人の踏み入れない大森林の奥地に~みたいな定番のファンタジー的な存在ではなく人の近くに存在する強大な存在というあり方が新鮮でとても良かった。

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