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【ネタバレなし感想】大豆田とわ子を見てほしい4つの理由

今更「大豆田とわ子と3人の元夫」を観た。放映当時は「なんか変なタイトルのドラマやってるな」くらいに思っていたが、自分の友人(それもセンスに信頼のある)複数名から「大豆田とわ子は視て欲しい」と言われ、なんだか気になるなあと思っていた矢先にPrime videoに追加されていたので1週間で見切ってしまった。今は何をするときもとわ子とわ子、とわ子のことが横切ってしまうくらいにはロスだ。こんなに1つのドラマのことを考える事はなかなかないので、需要はないかも知れないが勝手におすすめポイントを紹介させて欲しい。

1・テーマが刺さる

このドラマを、何ドラマ?と聞かれたら返答に困る。3人の元夫たち、あるいは4人目の夫候補との恋愛ドラマかもしれないし、一人の女性の仕事との向き合い方なのかもしれないし、友人や娘とのかかわりを描いたヒューマンドラマなのかもしれない。ただ一つ言えるのは、このドラマを通して描かれる主題は、出会いと別れを繰り返す人生の中で、一人の人間としてどう生きていくのか、だということ。人と出会い共に生きるとはどういうことなのか。人と別れるとは、どのような状態を指すのか。一人で生きていくってどういうことだろう。共に生きていくって、どういうことだろう。幸せになるって何だろう。人を愛するって、どうすることなんだろう。そんな問いかけの中で、とわ子が導いた結論が、圧巻だった。このドラマを見ながら、とわ子と共に悩みぬいた。葛藤の末に、こういう形があってもいいじゃない、と言われたような、こんな人がいるのだから私もできるかもしれない、と思わせて貰えたような気がする。色々な人に観て欲しいが、大切な人との別れを経験した人には特に観て欲しいなと思う。誰にとっても切り離せない、人との関わりを見つめ直させてくれるドラマだと思う。

2・不条理

「いろいろあるさ。どっちか全部って事はないでしょう。楽しいまま不安。不安なまま楽しい。」第一話のとわ子の台詞だが、日々その言葉の意味をしみじみと実感する。良くも悪くも、物事は長続きしないし、一生懸命やったことが叶うとも限らない。大切な人との関わりがある日突然途切れたりする。フィクションの世界では、主人公特殊な能力を持っていたり宿命とも言えるような巡り合わせで奇跡を起こしたりすることが多く、その分話の展開も派手で楽しめたりもする。しかし大豆田とわ子は、3人の元夫がいる社長ではあるものの、ちゃんと不条理を生きている。ドラマの展開も、なかなか他にはないタイプの展開のように感じる。詳しくは書かないが、4話の終わりには「え~!?」と声が出たし、6話の終わりでは言葉を失った。7話ははじめから涙が出たし、その後仕事での困難に直面するシーンは、こちらまでしんどくなってしまうくらいだった。そしてそんな不条理との付き合い方が、ちゃんと弱くてちゃんと強い。前向きに頑張るだけだと折れてしまうし、いじけて文句を言うだけでも辛くなってしまう。逃げられず自立する中で、真っ正面から受け止めたり、かわしながら時にしっかり反抗するとわ子に、腐らず真摯に向き合う姿勢に、綺麗事からはは感じ取れない勇気を貰えるのだ。なんだかんだ、とわ子が作中一番にかっこよかったと思う。

3・台詞が良い。なのに軽やかなテンポ感。

前の項目でもとわ子の台詞を紹介したが、このドラマの台詞はときどきハッとするようなことを、さも当たり前のような自然さで登場人物たちが口にするからそのたび驚かされてしまう。ときどき一時停止して言葉の意味に思いを巡らせたりするぐらいだ。そんな問いかけがある一方で、観ている感覚としては全く重さを感じずに、テンポの良い小説を読んでいるようなサクッと感で観れる。全編を通してコメディ要素の強いシーンが多いのも理由の一つだろう。見始めはクスリとしながら、ときどき切なさややるせなさを登場人物たちと共に感じ、彼らが向き合った結論に驚かされたり、気づきがあったり。このバランスの会話劇が繰り広げられる作品は他にないように思う。
 加えてサウンドトラックもその魅力を引き出している。コメディシーンでの少し気の抜けたBGMの入り方は秀逸すぎるし、日常のちょっとしたやらかしが起きるたびに、テーマの音楽が流れて伊藤沙莉のナレーションが入るようになった。また劇の終盤でピアノイントロから始まる「All The Same」は切なくも暖かくてドラマの世界観をよく反映している。心地よさを感じながら軽やかに楽しめるところも魅力の一つだ。

4・キャラクターの奥行き

好きなドラマ、というのは、登場人物が魅力的なドラマ、という風にも言い換えられるのではないだろうか。過去に毎週楽しみにしていたドラマも、共感するキャラクターや、かっこいい!と感じる魅力的なキャラクター揃いだった。大豆田とわ子も例にも漏れず、魅力的なキャラクター揃いだ。しかし少しその魅力のタイプが違うように感じる。何ていうか、みんな、ちょっとみっともないのである。最初はなんでこの人たちと結婚したんだろう?と思ったし、女性にダメ出しされるシーンなんかもあるのだけど(かわいそうだった)、だんだんそんな部分こそ愛らしく感じられてしまうのだ。素直になれなくてつい攻撃的になってしまったり、好きな人の前では不器用になってしまったり。程度の差こそあれ、自分にもこういう一面があるかもしれないなあ、と感じる。全然上手くやれなくて、みっともなくて、それでも諦められなくて。そんな彼らをいじましく思うと共に、自分のみっともなさを肯定できるような気持ちにもなった。頑張れなくて、変われない。そんなところも自分なのかもしれない。そんな優しい目線で描かれる、彼らの懸命さが心を打つ。あとサブカル女子の皆さんは一話目から田中八作にどうせ狂うことになるし、見終わる頃には慎森可愛いって言ってますよ。鹿太郎はね、いい人だよね、うん・・・

おわりに

ここまで大豆田とわ子と3人の元夫を見て欲しい4つの理由を紹介してきたが、きっと観る人やその人生のタイミングによって刺さるポイントは変わってくるんじゃないだろうか。私も何年後かにまた観直したいドラマだな、と思う。映画を観るのも好きだが、1回1時間も行かずに観れて、10話も楽しみを追えるから、より思い入れも強くなるところがドラマのいい所だとと思う。リアルタイムで観てたらまたハラハラしながら楽しみに、3ヶ月彼らと生きていたんだろうなあ。このドラマを観た人と是非話がしたいと思う。そんな魅力があるドラマです。ぜひ観てみてください。


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