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うま味の使い方を知れば、毎日の家庭料理で「鰹と昆布の出汁」は不要です!

一生ものの食の知識を、あなたに。

家庭料理コンサルタントの古谷真知子です。

出汁の文化や素晴らしさを否定するつもりは毛頭ありませんが、毎日の食卓に乗せるお料理に鰹節と昆布で出汁を引くのが大変だったり面倒に思うお気持ち、よくわかります。

かく言う私も、息子が離乳食を食べていた頃は「一番出汁一神教」の信者でした…

自治体の離乳食教室に参加した際に

「赤ちゃんの味覚はピュアなので、出汁(うま味)を効かせた素材の味をしっかり教えてあげましょう。塩分や糖分は内臓に負担がかかるから使わないで下さい。」(意訳)

と言われまして。
当時(十数年前ですが)、育児雑誌や育児書を読んでもだいたい同様のことを書いてありました。(今はどうなんでしょうね?)

当時は育児が初めてでしたので、ふんふんなるほど、と言われるがままに鰹節と昆布で出汁を引き、それを全ての離乳食に使っていました。
大真面目にまに受けていましたので、大人のおみそ汁も鰹節と昆布の出汁で作っていました…

もちろんそれが悪いことではないのですが、手間もコストも毎日苦もなく続けられる私にとっての家庭料理のそれとはちょっとかけ離れておりまして、疲れ切ってしまい下の娘の離乳食の頃から方針転換したのでした。

前置きが少し長くなりましたが、そんな折に浜内千波先生の『だしのいらないうまみレシピ』と言う本と出会い、「(鰹節と昆布の)出汁を使わなくても、うま味を効かせたお料理は作れるんだ!」と開眼した次第です。

それからは、鰹節と昆布以外にも色々な素材自体に含まれるうま味を活かしてお料理を作るようになりまして、日本の家庭料理を専門とした料理教室を主宰する立場にも関わらず、レッスンでお伝えしているレシピにはほとんど鰹節と昆布の出汁を使わないという、ある意味異端な料理教室を続けています。

そんな私のポリシーに共感して下さってかどうかは定かではありませんが、お陰様で教室は昨年秋に10周年を迎えることが出来ました。
これからも、鰹節と昆布だけにこだわらず、毎日無理なく続けられる、うま味を活かしたお料理や調理のコツを発信していく次第です。

では、具体的に鰹節と昆布の出汁を使わずにどうやってうま味のあるお料理を作るのか、私が普段のレッスンでお話ししている内容をお伝えしますね。

アレにもソレにも!以外とうま味は含まれてる!

うま味、と一言で言いましても、実はたくさんの種類があります。
うま味は、アミノ酸の一種であるグルタミン酸、イノシン酸、コハク酸、アスパラギン酸、グアニル酸などにより生じる味の総称です。

うま味の多い素材とは、これらのアミノ酸を多く含む素材ということです。わかりやすい例を出すと、お肉やお魚は焼いて軽く塩を振るだけでも美味しく食べらますよね。これはこれらのアミノ酸が豊富に含まれるからなのですね。

あまり知られていないのですが、野菜にも多かれ少なかれアミノ酸が含まれています。

こちらも、わかりやすい例を出しますと、トマトとオリーブオイル、にんにくだけでソースを作ったトマトパスタが美味しいのは、トマトにうま味がたくさん含まれているからなのです。

トマトのパスタ

このように、どんな素材にうま味が多く含まれているかを知ることで、鰹節と昆布の出汁を使わなくても、うま味を含む素材を組み合わせることで、美味しいお料理を作ることが出来ます。

うま味を多く含む食材はこんなにある!

うま味を多く含む代表的な食材をご紹介します。

◇グルタミン酸

・昆布、海苔
・パルメザンチーズ
・干し椎茸
・トマト
・マッシュルームなどのきのこ類
・グリンピース
・ニンニク
・白菜
・大豆
・じゃがいも
・とうもろこし
・大根
・人参
・玉ねぎ、長ネギ
・キャベツ
・アスパラガス

◇イノシン酸

・鰹節
・ハマチ
・カツオ
・真鯛
・豚肉
・鶏肉
・いわし、さば、アジなどの青魚
・海老
・牛肉

◇グアニル酸

・海苔
・干し椎茸
・ドライトマト

◇コハク酸

・帆立貝
・あさり
・しじみ
・はまぐり

絶対ではありませんが、植物性の食材にはグルタミン酸、動物性の食材にはイノシン酸、と覚えておくと目安になるので、うま味の多い野菜とタンパク源となる肉や魚を組み合わせたお料理は、栄養面だけでなく美味しさの上でも合理的なんですね。

野菜の中でダントツでうま味が多いのは、先程も例に出したトマトです。

我が家で作るビーフシチューやカレーはこのトマトや野菜のうま味を上手く使うことで、市販のルーや顆粒のコンソメの素を使わずに作っています。

もう少しわかりやすい例を挙げると、豚汁などは出汁のいらない料理の代表です。

豚汁に使う代表的な食材は、豚肉と大根、人参、ごぼうなどの根菜類、お味噌です。
豚肉にはイノシン酸、野菜にはグルタミン酸が含まれていて、さらに発酵調味料であるお味噌にもグルタミン酸が含まれています。
使う食材にうま味がたっぷり含まれているので、出汁を使わなくても十分美味しくなるのですね。

豚汁とみそおにぎり

普段、出汁や和風出汁の素を使った豚汁を作っている方は、是非一度出汁なしで豚汁を作ってみて下さい。

使う食材の種類やバランスによっては少し物足りなさを感じる場合もあるかもしれませんが、お野菜を3種類以上使った具沢山の豚汁なら、出汁は必要ありません。

同じように、モツ煮込みや牛すじ煮込みも出汁が要らない料理として試しやすいものの1つですので、出汁なし料理の入門編として是非お試し下さい。

出汁は世界に誇る日本の素晴らしい食文化の一つですが、毎日の家庭料理には必ずしもなくてはならないものではないと考えているので、うま味を多く含む食材を上手く組合せて、毎日のお料理を楽に美味しくしちゃいましょう!

最初から和風出汁の素を入れずに、味を見て足りなかったら足すようにすると、調味料や出汁の素を使う量や頻度が減らせます。

もちろん、今まで作っていたお料理の味とは違った仕上がりになりますので初めは物足りなく感じることもあるかと思います。

無理せず少しずつ減らしたり、出汁を使わない味に慣れていけば「出汁がなくてお料理が作れない!」と言うことにならずに済むようになりますし、なにより素材の味をより感じられるようになります。

素材の味というのは、素材のもつうま味だけではなく、甘味や苦味、酸味など素材本来の味のことです。人間の味覚はややこしくて、うま味さえあればそれで満足出来るものではなく、五味(塩味、甘味、酸味、苦味、うま味)と香り、食感、こく、適切な温度帯など複合的な要素で決まります。それらも含めて素材を楽しめるようになると良いですね。

素材の味をより感じられるようになると、塩分や糖分を減らせます。
結果として、身体に優しい食生活になっていきますよね。

教室の生徒さんによくお話しするのですが、お子さんが生まれたら食生活を見直すチャンスです。お子さんの離乳食を機に、大人も薄味で素材の味を活かした食生活に少しずつシフトして行き、離乳食、幼児食、普通食、とステップアップしていくのてはなく、子供は離乳食から幼児食、大人は普通食から幼児食へと歩み寄ると家族で同じ味付けの食事が楽しめて、毎日の食事が楽になります。

素材を活かす料理で「美味しさのハードル」を下げると毎日の料理が楽になる!

もちろん、毎食を完全な幼児食にしてしまうのではなく、たまには辛いものを食べたり揚げ物を食べるのもOKです。そういった嗜好性の高い食事は時々にして、素材の味を楽しめるようになると料理に対する「美味しさのハードル」が下がります。

外食や市販のお惣菜などは、なるべく多くの人に美味しいと思ってもらうためにうま味を強く感じるように作られていますので、「美味しさのハードル」が高いお料理です。「美味しさのハードル」が高いと、毎日食べ続けていると食べ疲れたり、飽きたり、濃いうま味がないと満足できなくなってしまいます。

普段から薄味を心がけて、少ないうま味でも美味しさを感じられるようにしておけば、あれこれ凝ったものを作らなくても、軽く塩をしただけの炒め物やスープでも十分美味しく満足出来るようになります。

そう、毎日の料理を楽にするために、頼るべきは本当は「レシピ」ではなく「素材」なんだと私は考えています。

もちろん、味の好みや作りやすさがピタッとハマったレシピに救われることもありますし、私自身も経験があります。

しかし、どんなに時間をかけて練りに練り上げたレシピでも、個人の好みに完全に合わせることは不可能と言っていいほど難しいのです。

趣向を凝らしたレシピをあれこれ試すのも楽しいですが,まずはご自身とご家族の好みの味に仕上げる方法と、そこにかかる手間やコストを下げる工夫をすることが早道ではないかと思います。

素材の持つうま味を活かして、「美味しさのハードル」を下げてみて下さい。
きっと、毎日のお料理が楽に、楽しくなると思います。

試作のための食材費や、子供達が使いやすい調理器具の購入に使わせて頂きます!