見出し画像

プロのライターになるには(個人的経験から)

はじめに

こんな夜更けなんですけど、プロのライターになるのはみなさん難関って思われているようですが、私自身は記者になること自体はそんなに難しくありませんでした。30手前まで営業マンでしたが、どうしても書く仕事がしたくて、飯田橋のハローワーク通っていたら、運よく業界紙記者の募集見つけて、面接受けたら一発で受かりました。専門知識なくても好きなだけ現場に取材に行けたし、好きなだけ企画して、好きなだけ記事書けました。こんな私でもシンクタンクに転職するまで10年ほど記者をまっとうしました。幸せな10年間でした。

noterさんの記事読んでいると、ああもう、俺かなわないなあ、この人プロのライターになっちゃえばいいのにと思うことが多々あります。というわけで今回は、プロのライターになるにはどうすればいいか、私の経験を踏まえて考えてみました。

私の履歴書

そんなこといったってお前、いい大学出てるじゃん、と思われるかもしれません。しかし私は就職氷河期の2000年に、7年間かけて文学部を卒業したもうドロップアウト寸前の人間でした。ちゃんと4年で卒業したゼミ仲間も、1人は大学院、1人は地方公務員に受かりましたが、あとはSEの人材派遣とか、バーテンダーとか、パン工場のバイトとか、思い思いに散っていきました。

私は書くのは好きでしたし、新聞社か出版社に入りたいと思って文学部に入りました。しかし大学1年にしてある挫折を味わって、ろくに勉強もせずに7年間を無為に過ごしました。なんとか卒業したので、タウンワークの募集を読んで、パソコン入力係とか、はては怪しげなアクセサリー販売業などにも応募しましたが、面接ですげなく落とされるありさまでした。

なんとか就職した会社は月給手取りで12万5000円、しかも午前9時から午前2時まで盆暮れなしで働かされるいわゆるブラック企業でした(のちに私の直属の上司は詐欺容疑で逮捕されました)。1年半で辞めた後、予備校の事務員もやりましたが、これも長続きしませんでした。福岡に帰り、資格試験を1年しましたが、これも一次試験で落第。気づいたらもう29歳。ドロップアウト寸前ところか、完全にドロップアウトしていましたね。

30手前になって、結局お前は何をしたいんだ?と父親に問われて、「やっぱり書く仕事がしたい!」と言いました。無理だと父親は言いましたが、なぜかもう覚悟をしていました。もはや何の縁もない東京に上京、カプセルホテルに泊まり、喫煙室のテーブルで職歴も資格もない、東京の住所の記載すらない真っ黒けの履歴書を書いては、ハローワークに通いました。ハローワークの職員ですら「職種を選んでる場合ですか」と説教されましたが、聞きませんでした。ひたすら新聞社や出版社の面接に応募し、落ちまくりました。

いや、2社だけ、面接をしてくれるという会社がありました。1社は某プロ野球球団の下請け会社で、試合速報をひたすらネットにアップするという仕事。もう1社は印刷業の業界新聞社でした。
印刷業界の業界新聞?私は印刷業に関しては無知も無知だし、業界新聞というのも実態がよくわかりませんでした。築地の近くにある会社の社長室で社長と面談。社長は履歴書を読み、頭を掻きながら「いや、印刷業も厳しくてね」と仰ったところで、私は業界動向も分からないうちに、「いえ、大切なのはコンテンツです。コンテンツを最適なメディアに落とし込めばいいんです。印刷物もそのメディアの一つです」と力説しました。すると社長は膝を打って、「そうなんです。印刷業界もメタモルフォーゼのように生き返るんです」と喜んでくださいました。というわけで面接一回で社長と意気投合、1週間後に採用が決まり、築地の寿司屋で一人、就職祝いをした思い出があります。

就職した新聞社は社員20人ほど、編集部(新聞製作)と出版部(雑誌と書籍刊行)の記者はあわせて7人ほどでした。2週間後には記事を書いてくれと言われ、3週間後には雑誌に私の記事が堂々と載っていました。涙が出るほど嬉しかった。

こうして約10年にわたる業界紙記者時代があるのですが、苦しくもあり、不満もいろいろあったけれど、夢のように楽しい記者人生でした。全国に出張して大企業から中小企業までの経営者にインタビューできましたし、イギリスやドイツ、香港などにも取材旅行に行けました。
細かくは書けないのですが、数年後には新聞の紙面責任者(キャップ)になり、まあいろんな記事を書いて、一部は国会図書館(CiNii)にも収録されています。

CiNiiに登録された私の記事一覧

10年後、一応それまでの実績を買われて、印刷業界のシンクタンクに移籍しました。ただ、あまりライターとして活躍できなくて、コンサルティング会社に移籍、そこでもたくさん記事を書きました。その後の私については省略しましょう。

結局どうしたらライターになれるって?

結局どうしたらライターになれるって?そうですね。
1つは、大手新聞社や有名出版社でなくても、新聞社・出版社は数多くあるということですね。おどろくなかれ、印刷業界一つをとっても日本印刷新聞社、印刷出版研究所、ニュープリンティング、印刷ジャーナル、印刷タイムス、ラベル新聞、新聞之新聞社、つるぎ出版社と10社近くあります。これに「印刷10団体」といわれる組合の組合誌などを加えると、いったい何十紙誌になるでしょうか。中央区の「印刷図書館」で閲覧できるので下調べしてもいいですね。
というわけで業界新聞社だけでも数百社あると思われます。想像できると思いますが、これらの業界新聞社は極めて厳しい経営環境にあります。それでもいい、業界なんて問わない、書きたいんだという強い意志があれば、ひょっとしたらnoterのみなさんの力量なら採用されるのではないでしょうか。

業界新聞以外にも、フリーペーパーやフリーマガジン、Webの情報サイトなどで採用があるかもしれません。一般書籍や自費出版などのゴーストライターという仕事も意外にあります。
ただし、フリーのライターはあんまりお勧めしません(noteの趣旨に反するかもしれませんが)。なにせ単価が安いから。私は一時期コンサルティング会社のオウンドメディアのライターを正社員としてやっていましたが、経営陣の方がネットで活動しているフリーライターの単価と比較してしまって、正社員の私はたいへん肩身が狭かったです。ランサーズなど仲介業者もありますが、くれぐれも値段で叩かれないようにね。

さいごに

こんな記事を書きたいとか、逆に得意分野が見当たらないとか、あんまり思う必要はないかもしれません。書きたいんだろ、じゃあプロになっちゃえよ、という感じです。私が就職したころとは状況はだいぶ違うと思いますが、情熱とある程度の書く力があれば、需要はあるように思います。入社してから必死に勉強して追いつくことですね。
あと社会人としてのコミュニケーション能力は当然問われます。私はその点についてどうこう言う資格がありません。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?