見出し画像

著書だけで想像する、高島宗一郎・福岡市長のポリシー


ここ10年で人口は増えるは、市税収入は増えるは、地価は上がるは、ベンチャーは次々立ち上がるはと、コロナ・ショックまで絶好調だった福岡市。その立役者といわれているのが、2010年に史上最年少の36歳で就任した高島宗一郎市長です。10年前の彼のキャッチフレーズが「とりもどせ元気!とりもどせ信頼!」だったころからは隔世の感があります。

私は2019年末に故郷である福岡市に帰ってきたのですが、確かに福岡市の活況は目を見張るものがあります。ビルの建て替え促進プロジェクト「天神ビッグバン」の舞台である中心街・天神はもとより、博多駅周辺もJR博多駅の駅ビル「博多シティ」が年間来場者数7000万人を突破するなど大盛況、マンションもタケノコのように次々に建っています。

そんな福岡市の高島宗一郎市長が2018年12月に出版した著書『福岡市を経営する』を先日読む機会があり、私なりに感銘を受けました。ところが話を聞いた知人は冷ややかな反応、「PR本をわざわざ買って感動してどうするの」、「手柄は全部高島市長ってわけ?」とのことでした。そうだよな、西日本新聞も読まないで、市政だよりも読まないで、高島市長は素晴らしい、はないよな、と反省した次第でございます。そこで今回は、著書『福岡市を経営する』1冊だけで、高島市長のポリシーをまとめてみたいと思います。つまり他の情報なしでとりあえず判断してみようという試みです。

「時間」を有効に配分する

262ページの平易な文章の同著ですが、「限られたリソースを」という言葉がところどころ出てきます。私が一番強く感じたのは、高島市長は第一に、「時間」という限られたリソースをいかに配分するかということを意識しているということです。
具体的にいえば、知り合いの開店祝いとか、パーティなどには基本的に出ない。小学校の運動会にも、町内会などの会合にも、企業・各種団体の祝賀会や賀詞交歓会にも出ない。表敬訪問して記念写真を撮ったり、地元の会合とあれば足を運んだりといったこともしない。
なぜならば、「全体がよくなる」ことはできても「全員がよくなる」ことはできないから。それはそうですよね。小学校は144校あり、町内会は2000を超える。各種団体・企業も限りなくあるでしょう。その人たち全員の要望に応えることはできない。だから、しない。
経験豊富な大企業の幹部に会うことも、無責任に都市計画に意見を言ってくる(市長曰く)「まちづくり評論おじさん」にも極力会わない。
市民や企業・団体などに向けてはSNSで情報を発信するが、ネット上で議論したりはしない。メッセンジャーも開かない。批判に対しては「鈍感力」でかわす。
その代わり普段行かない公営団地などの人々、リスクを取っても世の中を変えたいというベンチャーなどの若者には極力会う。

影響力のある市長という立場を預かっている機関はとくに限られた時間を大切に使っていきたいのです。

シンプルに、分かりやすく

ふたつ目は「シンプルに、分かりやすく」メッセージを発信することです。総意や正確性が問われる行政の媒体ではなく、市長自らSNSの媒体を持っているのもそのため。

「天神ビッグバン」にしても、

たとえば「国家戦略特区の規制緩和を活用して航空法の高さ規制を緩和して、福岡市独自の容積率の緩和と附置義務駐車場制度を変えて…」と言うのではなくて「ようするに大きなビルができます」と言う。

そういえば高島市長はワンフレーズが得意です。「天神ビッグバン」から、金融都市に向けた「TEAM FUKUOKA」、そして今回のコロナではいち早く「感染症対応シティ」を打ち出しました。
彼は政治姿勢を素人には分かりづらい「総合格闘技」ではなく、自身も大好きな「プロレス」のようにあるべきだと言っています。パフォーマンスが過ぎると批判を受けることもある市長ですが、本人もそう言い切っているわけです。


攻めの戦略

最後にあえてあげるとすれば、攻めの戦略でしょうか。
「人を幸せにするのは、『今日より明日がよくなる』という希望」
「団塊ジュニアの私が『成長ではなく成熟だ』なんて言いたくない」
「課題先進国だからこそできる『攻めの戦略』」
「福岡市が世界を変えていく『ロールモデル』になる」
などの言葉を著しています。


というわけで、時間を有効に、スピード感を持って、シンプルに、分かりやすく、攻めの戦略を旨とするのが高島市長のようです。ワンフレーズ、規制緩和などは小泉純一郎氏にも通じる危うさがありますが、本人は国政には当分出ないそうなので、引き続き手腕を見守ろうかなあ、と私は考えているところです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?