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福岡都市計画③博多国際展示場&カンファレンスセンター

2019年まで7年連続で市税が過去最高を記録、人口が160万人を突破するなど、コロナまで絶好調だった福岡市。もっともコロナが起きても、土地開発の動きにブレーキはかかっていません。2021年の福岡市土地開発について、解説したいと思います。今回は博多国際展示場&カンファレンスセンターです。

MICEってなあに

福岡市には一級河川がないため、これといった製造業がなく、商業の街として発展してきました。かつては支店都市の意味合いが大きかったのですが、近年は東アジアの拠点として、MICEを梃子に発展してきた感があります。MICEとは「会議、インセンティブ旅行、コンベンション、展示会」を指します。
ビジネスパーソンでない方はピンと来ないかもしれませんが、ビジネスでは産業ごとに大きな見本市が開かれます。私は印刷業界出身なので、ドイツのデュッセルドルフ市が思い出されます。デュッセルドルフでは4年に1回、世界中の印刷機器メーカー・ベンダーが一堂に会し、製品を出品する「drupa」が、メッセ・デュルドルフという展示会場で開かれ、世界中の印刷業者が訪れます。今は成熟産業ですが、全盛期は40万人を超える来場者がいたそうです。デュッセルドルフへの出張は会議や慰安旅行も兼ねていますから、経済効果は計り知れません。印刷産業だけでも十数万人ですから、プラスチック・ゴム産業、パッケージ産業…と次々に展示会が開かれることで、デュッセルドルフ市は大いに潤います。
福岡市は30年ほど前から「東アジアの拠点」を目指した都市計画がなされてきましたが、最近はインバウンド効果もあって、福岡のMICEは成功を収めました。空港と港湾と鉄道駅と市街地とが近いコンパクトシティの魅力はあって、日本のMICE拠点としての存在感を示してきました。
拡大するMICEビジネスの「成長痛」として、展示会の規模、ハイグレードホテルの少なさなどが課題として浮き彫りになってきました。一時は全国2位だった国際会議開催数も、神戸市、京都市に抜かれています。

2つの展示場が2021年に開業

それを解消するのが、2021年に開業する2つのコンベンション施設「マリンメッセ福岡B館」と「博多国際展示場&カンファレンスセンター」です。このうち「博多国際展示場&カンファレンスセンター」は西日本鉄道が運営する、民設では西日本最大のコンベンション施設で、約 3,000 ㎡のホール 2 室と 16 の会議室を備えています。博多駅からなんと徒歩で13分、福岡空港からバスで9分という驚きの近さです。
マリンメッセ福岡については多くのイベントが開かれていてすでに知られていますが、現在のマリンメッセ福岡がA館に改称され、B館が隣接されることになっています。

展示会ビジネスは曲がり角?

国際MICE都市として、またインバウンド需要を追い風に発展してきた福岡市。個人的にはだからこその懸念があります。一つは中国・韓国との軋轢が生じると、インバウンド効果はあっけなく「蒸発」してしまうことです。2018年には309万人だった外国人入国者は269万人まで減ってしまいました。これは全体の42%を占める韓国人入国者が外交問題で減少したためです。
2つめはアフターコロナ時代に、はたしてMICEは拡大していくのかという問題です。ZOOM会議でも十分という声も聞かれます。展示会ビジネスも、個々の企業がネットでデモンストレーションしたり、地元の導入会社などでハウスセミナーを行うなどの代替案が考えられます。
MICEを梃子ににして、国際都市として発展してきたからこそ、気がかりなアフターコロナの世界。もちろん福岡はベンチャー企業が多い、若者が多いなど成長エンジンは様々ですが、今年2021年4月開業の「博多国際展示場&カンファレンスセンター」は一つの試金石になるでしょう。

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