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教材作成、教育現場、学習科学のプロとつくる新しい学びの形

先日、THE GUILDの深津さんがモデレーターとなり、Ubieの村越さん(医療)、みんなの銀行の中村さん(金融)とともに登壇しました!このnoteは「突撃!となりの業界のUX」でのLTの内容とをまとめたものです。
※下部に書き起こし記事のリンクをまとめています。ぜひ合わせてご覧ください。

Twitterでの様子はこちらにまとめています。

イベントで答えきれなかった質問にも答えていますので、ぜひご覧ください!

自己紹介

atama plusの林田です。新卒でリクルートに入社し、UXデザイナーとしてリクナビというサービスを担当していました。
その後、今から4年ほど前に創業期のatama plusを見つけて、ミッションにビビッときて入社しました。そこから更に2年ほどUXデザイナーとして、まさにプロと一緒にプロダクトを作り上げていき、直近2年はプロダクトオーナーをしています。

1-1自己紹介

atama plusとは

atama plusのミッションは、「教育に、人に、社会に、次の可能性を。」です。

1-2atamaplusのミッション

教育は、個人にとっても、社会にとっても、ものすごく大事なもので、教育が新しくなれば、社会をまんなかから変えていけるんじゃないか?と思っています。

そんな思いから、私達は学習をパーソナライズする、atama+という教材アプリを作り、全国の塾・予備校さん向けにSaaSモデルで提供しています。

生徒一人ひとりの状況を分析して、一人ひとりに合ったカリキュラムを提供するプロダクトです。例えば、2次方程式を理解するためにはこれほど膨大な単元を理解している必要があります。

1-3膨大な単元の理解が必要


どこかの理解が欠けていると、生徒は2次方程式の説明を聞いてもわかりません。プロの頭の中では、このように知識が繋がっており、生徒一人ひとりがどこにつまずいているかを見極めて指導します。どの知識が欠けていて理解できないのか、生徒自身が見つけることは難しいです。先生も生徒が増えていくと、一人ひとり違ったつまずきを見極めるのは時間的に難しくなります。

私達のプロダクトでは、このプロの頭の中をプロダクトに入れて、一人ひとりに専用のカリキュラムを作っています。

1-4カリキュラムを作成

このような学び方を実現させるためには、プロとの協力が不可欠です。
本日はatama plusが行っている3つの領域でのプロとの協力についてお話します。

1-5プロとの協力

学習科学のプロとの協力

まずは学習科学のプロとの協力についてです。こちらと関係が深いのはアルゴリズムチームです。

2-1アルゴリズムチーム

アルゴリズムチームは教育分野の様々な学術的知見、つまりプロの発見をプロダクトに反映していくチームです。ここでいう「プロ」と直接接点はありませんが、、学習科学のプロの知見なくしてはatama+は成り立ちません。冒頭で紹介した学習プロセスも、自分たちで考えたオリジナルではなく、完全習得学習やアダプティブラーニングなどの既存のアイデアをもとに作られています。

アルゴリズムチームでは定期的に論文の読み合わせして、自分もその資料を参照させてもらっています。教育に関する理論は、アナログな教育現場では実践することが難しいものも多く、研究されていても世の中に実現されていないものがたくさんあります。文献には「おー、これはプロダクトの中で試してみたいっ!」と思うようなアイデアがたくさんあり、読むだけでとても楽しいです。

しかし、いざ実現するとなると難しさもあります。大きいのは理論と実践の間には必ずギャップがあるということです。

まず、実験の条件と完全に同じ状況はないので、自分たちが向き合っている状況において再現性があるかどうかは試してみないとわかりません。例えば、論文で書かれている実験条件と完全に同じ状況はありません。実験で行われるタスクの内容はシンプルなものが多かったり、実験は大学院生で行われているが、自分たちのターゲットは中高生だったりということがあります。

また、書かれていることと同じ学習効果が得られるとわかったとしても、現実の様々な制約を乗り越えてはじめて生徒に学びを届けられます。たとえ実験内容が有効だったとしても、テストに向けた生徒の時間は有限ですし、過度に複雑なものは運用することができません。


そんな理論と現実のギャップを埋めるのに役に立ったのが、アジャイルなアプローチです。
いきなり複雑なロジックで作るのはリスクが大きいため、まずとてもシンプルなロジックのレコメンドエンジンを作り、それを生徒に使ってもらうことで課題を特定し、改善を重ねていきました。創業初期の頃は、紙と人力でロジックの検証するケースがほとんど。今ではロジックの検証にABテストを使うこともあり、検証プロセスもどんどん進化しています。

具体的な改善例もあげると、元々はスピード重視で、1番早く目標達成可能になるようなレコメンドエンジンを作っていました。ただ、それだと生徒が目標としている部分をできるようになったなと実感するまでの道のりが遠く、途中で嫌になってしまうということが起きていました。そこで多少スピードを犠牲にしてでも、早く小さく達成感を得られる順番に変更しました。

2-2アルゴリズムの改善例

このように仕組み上はうまくいくはずだが現場ではうまくいかないということは本当にたくさんあり、社内では日々こういったテーマについて議論が行われています。

現場で使われなければもちろん意味がないですが、一方で学習効果を発揮する上で重要なポイントがブレるとなんのために提供しているのかわかりません。両者を両立させることは本当に頭を悩ませる難しい問題なので、アルゴリズムチームだけではなく、たくさんのチームが向き合っています。理想と現実とのギャップを、アジャイルなアプローチで埋めていくことが、プロと協力する上でポイントの1つかと思います。

教材作成のプロとの協力

次に教材作成のプロとの協力についてです。ここはコンテンツチームが深く関わっています。コンテンツチームとは、atama+の講義動画や演習問題などの教材コンテンツを作成するチームです。

3-1コンテンツチーム

学習ツールの中には、既存の教材を使用したり、教材とシステムが完全に独立していたりする場合があります。atama+では社内にコンテンツ作成を担当するチームがあり、そのチームと外部のプロの教材作成の方が連携して教材作成しています。レコメンドの仕組みに合わせてコンテンツも改良することが非常に重要なのでこのアプローチで作っています。ただ、それもあって、教材作成のプロにとっても教材を作る上で難しい場面にぶつかることもあります。ここでもプロとの協力に工夫が必要です。

例えば、atama+では生徒の理解度に合わせたレコメンドに従って、異なる内容・順序で学習するため、どこから学び始めるかわかりません。他にも、一般的には一つのまとまりとして学ぶ内容を細かく分けて教えたり、特定の学力層向けではなく幅広い学力層を想定して教材を作る必要があったりと
、教材作成のプロも経験したことがない場面が多くありました。
プロの力を引き出すために、コンテンツチームではペルソナと各教材で学び始めの状態と学んだ後の状態を整理して伝えました。

3-2目線を合わせる工夫

このペルソナは、会社全体で認識をあわせてatama+を提供するために作成したものです。それが教材を作成する先生との目線合わせにも活用できました。

また、現場で起きている課題を特定するため、コンテンツチームとUXデザイナーが生徒や塾の方にインタビューを行うこともよくあります。インタビューの内容をコンテンツチームから先生方へ伝えて教材の改善に繋げています。教材を作る先生は、生徒が実際にどう教材を使っているかわからないことが多いので、「フィードバック自体がすごく嬉しいことだ」と言っていました。

この取り組みで改善された例の一つが、英語の「不定詞」という1つの内容をレベルに合わせて2段階に分けたことです。レベル1では専門用語がわからなくても理解できるように、具体的な内容で教えました。その後レベル2で専門用語を含め、具体で学んだことを一般化できるような構成にしました。

3-3コンテンツの改善例

プロに十分に力を発揮していただくためには、自分たちの取り組んでいる課題について丁寧に目線合わせをすることが重要だと感じています。

教育現場のプロとの協力

最後は教育現場のプロとの協力についてです。ここを担当するのがatama+のアプリを開発するアプリチームです。

4-1アプリチーム

atama plusでは生徒向けのアプリに加えて、講師向けに生徒指導をサポートアプリを提供しています。教育現場のプロがこれまで工夫してきた生徒指導の良い点と新しい学び方をうまく融合させるために、現場で取り組まれていることを繰り返し観察しサポートアプリに反映していきました。

4-2現場

atama+を使う場合、複数の生徒が別々の範囲を学んでおり、その上動画を見ていたり、問題を解いていたり状況は様々です。そのため、教室にいる先生が状況把握しにくく、声をかけにくい問題がありました。

一方で、これまでの授業を見ると、生徒が間違えたタイミングで適切に介入していることや、ちょっとしたことでもたくさん褒めていることがわかりました。

そこで私たちは生徒の状況がわかる機能を搭載しました。先生が褒めたり、生徒が間違えた問題の解説を読まずに進んでいた場合に適切に介入したりできるようにお知らせを出すようにしました。

4-3アプリの改善例

自分たちの目で現場の一次情報を取りにいくということが、プロとの協力で大事なことだと思っています。

まとめ

学習の領域には様々なプロがいます。

5-1さまざまなプロ

これらのプロとうまく協力するためのコツとして、アジャイルなアプローチ、ペルソナでの目線合わせ、現場観察を通じた一次情報の3つを紹介しました。

言ってしまえば、プロダクト作りにおいて重要なポイントは、プロと協力する上でもとても有効だということになります。

私たちはプロダクトづくりのコツを使い、プロの知識・技術を引き出し、生徒とプロをつなぐ役割をしているんだと考えています。

5-2まとめ

答えきれなかった質問に答えます

Q.生徒向けコンテンツを作成する中で、生徒向けアプリのシステムのUIの変更が必要になる場面はあるのでしょうか?またその場合はチーム横断になってしまうと思うのですが、どんな風に連携しているのでしょうか?

A.教科や問題形式等も少しづつ追加・改善しているので、それに伴う生徒向けアプリのUI変更はよくあります。
そのような場合、弊社では一時的に各チームから人を集めた合同チームを組成し、作るものの方向性を決めるところまでを、そのチームで行うという事が多いです。その後、各主務チームで定期的にコミュニケーションを取りながら開発しています。
また、塾の業務フローに影響がある変更の場合は、カスタマーサクセスチームとリリースタイミングや更新内容の展開方法等も連携を取っています。

Q.ABテストの際の指標はどのようなものを使われているのでしょうか?生徒のテストの点数か生徒/先生のアンケートでの満足度調査のようなものを想像しておりますが

A.テストしたい内容によってケースバイケースですが、一例を上げると、生徒がある範囲をマスターするまでの時間などが指標になります。

Q.アタマプラスさんの先生へのアラート機能の開発の背景が知りたいです。具体的には、褒めを自動化するという考えもあったのではないかと思いますが、敢えて先生にアラートをするという意思決定に至った背景が背景が知りたいです。

A.創業時から、過去の他社事例などを踏まえ、学習を継続するにあたって人のサポートが重要だと認識していました。そのため「いかに先生に上手に生徒をサポートしていただくか?」を前提に、今までの指導で重要視していた観点を明らかにしプロダクトに実装していきました。

Q.アタマプラスさんを始め、現場でのリサーチはどのような時に行いますか?このような場合は現地に行く、このような場合はエキスパートにヒアリングする、などの基準がありましたら、知りたいです

A.こちらもケースバイケースで一定の基準があるわけではありません。ただ、漠然とした課題を明確にする上では、現場で具体的に何が起きているのかを直接見ないとわからないことが多いです。一方、明確な課題のソリューションを検討する上ではエキスパートの視点が参考になることが多いと感じます。
弊社で取り組んでいるプラクティスをまとめた記事がありますので、よろしければご覧ください。

Q.LeSSを採用した背景や理由について教えていただけないでしょうか。1プロダクト、複数チームで運用をしていると様々な課題が出てくると思いますが、LeSSを採用にする決断をした際に、なにか大きな課題があったりしたのでしょうか?

A.LeSS採用の背景にあった.大きな課題は、チーム毎に領域を分けたことによるサイロ化でした。こちらの記事に詳しいことが書いてありますのでよろしければ御覧ください。

Q.今回うかがったような個別特殊な領域でのデザインを進める上で、新しいデザイン方法が求められることもあるかも知れません。デザインに関する手法について、既存のものでは全然足りなくて、自分たちでこんな手法を作って使ってるぜ!みたいなお話があればぜひお願いします!

A.発表中にもありましたが、一般的にプロダクト開発で重要な観点と相違ないと思います。様々な背景を持つ人達の、思いや課題感を発言や行動から明らかにしていくUXデザイナーのスキルは、プロとのものづくりにおいても、とても役に立つと思います!

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