鉄筋コンクリート造の1Kは、想像以上に冷え込む。

今日の仕事も疲れた。

残業を終えて、冷え込んだ帰り道を1人、とぼとぼと歩く。

歩きながら、そういえば明日の朝の食パンを切らしていたな…と思い出し、スーパーに寄って食パンや諸々を買う。

仕事、頑張ったから…

ご褒美に焼き鳥も何本か買ってみた。

無駄遣いはしないように、きちんと家計簿に「焼き鳥 590円」とメモする。

今月の食費の残高は…

家計簿とにらめっこしながら歩いていたら、いつのまにかマンションに到着していた。

誰も待っていない、暗くて寒い1Kの、自分の部屋に向かう。

バタン。

重い扉が閉まった音で、
「ああ、今日もなんとか終わった…」
と実感するのだ。

毎週録画しているバラエティ番組をなんとなく観ながら、さっき買った焼き鳥を食べる。

一口目は幸せになったけれど、歳のせいなのか、最後には胃がもたれてしまった。

テレビはついつい、いつまでも観てしまうな…
嫌になる前にお風呂に入らないと…

重い腰を上げて廊下に出るけれど、
1Kの廊下はやはり寒くて、暗い。

しばらく部屋干しして取り込まれていない下着やニットをくぐり抜けて、狭い洗面所に入る。

座りっぱなしでシワの寄ったスカートを脱いで、洗濯機に放り込む。

少しでも手間を省きたくて買った、拭き取り式の水クレンジングでメイクを落とす。

洗面化粧台の鏡に映る、ヨレたメイクを落としている自分。

ちっとも幸せそうじゃない…

…あれ?


私、なんのために生きてる?…


そう自問自答したら、いきなり虚しさが込み上げて、鏡に映っている顔がゆがんだ。

不細工な自分の泣き顔を見たらますます情けなくて、ぶざまで、泣き止むことができない。

涙を流しながら、今までに何度も言われてきたことを思い出した。

人生一度きり!
やりたいことをやろうよ!

簡単にそう言うけど、実際には無理なんだ。

やりたいことなんて分からないし。

自分がやりたいことが分からなくなるくらいに、自分の感情を押し殺して生きてきてしまった。

やりたいことってなに?

…少なくとも、今の生活がやりたい生活ではないことは明らか。

それなら、そんな生活からすぐに逃げればいいのに。

…そうはいかないのが社会人なんだ。

そうやってまた自分の感情を押し殺した。

いつのまにか涙は枯れていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?