見出し画像

嵐の中の宮古島旅行③灰色の空と宮古ブルーに踊る髪

3年越しの念願、行けていなかった新婚旅行代わりの宮古島は、滞在3日間ほぼ嵐。
台風シーズンを外したつもりが見事にやられ、晴れ間はおろか太陽の姿を見ることすらありませんでした。

そんなあいにくの状況の中でも、たっぷり満喫できた宮古島の旅のことを、何回かに分けて書いています。

第1回は、かわいい癒しの草木やお花たち、
第2回は、やさしくおいしい食べ物についてでした。
今回は、風景やスポットにしぼってみます。

宮古島といえば、何と言っても「宮古ブルー」と呼ばれる海。
果たして、きれいな景色を拝めることはできるのか?

灰色の空と宮古ブルーに踊る髪

着いた初日は、雨も風も激しくてあちこち移動するのは危険と判断し、空港近くで「宮古そば」を食べたり、市場に行くなどして近場で過ごしました。

島の構造上、水はけがよくないようで、街中いたるところ道路が冠水しています。
前回も触れたように、レンタカー屋さんから「冠水したところを無理に入ったら、保険はおりません」と言われています。

しばらく様子を見ていましたが、今日は雨は収まりそうもありません。冠水も解消しないでしょう。
早めにホテルにチェックインして、今後のプランを立てることにしました。

予報では、雨は2日目に少し弱まり、3日目には止む時間帯もありそう。行きたい場所にピンポイントで雨雲レーダーとにらめっこします。
「島の天気は変わりやすい」とのことなので計画通りは行かないでしょうが、およその見立てをしておいて、その場の状況に応じて判断することにします。
あとは運。
そして、日頃の行い・・・。

2日目。雨は昨日より少し弱まっている感じです。
ホテルの朝食に大満足したのち、意を決して出発。
北に浮かぶ池間島と宮古島を結ぶ「池間大橋」に向かいました。
「宮古島随一の絶景」と言われるスポットです。

まだまだ雨も風も強く、道路には大きな水たまりがたくさん。
注意深くゆっくりめに運転し、目的地に到着。

手前の浅瀬は白く、沖に向けて水色、エメラルドグリーン、そしてコバルトブルーの水平線、というグラデーションが美しい海・・・
のはずですが、
待っていたのはこちらの風景。

荒波と池間大橋

荒くて高い波が橋に打ちつけ
雨で煙っていて遠くは見えず
空は雲で覆われています。
かろうじて、
海がちょっとだけグリーンがかっています。

旅行サイトやガイドブックでは決して見ることのない絵
これはこれで、おもしろい。

カサも持てないほどの強風で、雨粒は小さくなったとはいえ容赦なく顔を打ちつけてきます。

そんな中、髪を乱しながら、目も開けにくい状態でツーショットにチャレンジ。
私の世代は、自撮り棒など使わず、カメラを片手で持ってレンズをこちらに向ける「写ルンです」方式。勘と経験で角度を決め打ちです。
風で手がブレるのを必死にこらえながら、笑顔をつくる。
笑顔にならないので、何か叫ぶ。

エメラルドグリーンの海と乱れ髪

観光客と思しき女性二人連れの車が通りかかり、私たちを見て笑っています。
でも、車を停めて外に出ると、覚悟が決まったようです。
やがて彼女たちも、カサを持たずに乱れ髪姿の撮影会を始めました。

そうそう。
今ここでしかない状況を楽しもう

色とりどりの魚たちと、楽しそうな職員さん

お次は
宮古島海中公園

池間大橋から少し南に下り、サトウキビ畑に囲まれた道を抜けた西側の海沿いにあります。

ここでは、水深3~5メートルの海の中に建てられた施設の窓から、海中の様子を見ることができます。
体力的にダイビングが難しい人、水が苦手だったり濡れたくない人でも、自然の熱帯魚の姿を見ることができるスポットです。

悪天候で視界はよくありませんでしたが、それでもたくさんの魚たちが遊びに来てくれました。

右上に白く見えるのはイソギンチャクです

ガイド役として職員さんがひとり常駐しているのですが、数分ごとにいろいろな話をしてくれます。
それも、来ている人の様子や会話をうかがいながら話題を選んで、語りかけるように解説してくれるんです。

いま見ることのできる魚の特徴。
白い砂ができる過程と魚の関係。
島のなりたちや地形、天候の話。
海ガメが来てくれることもある。

話の内容もおもしろかったのですが、
何よりこの職員さん、
島と魚たちへの愛情があふれているんですよね。
とっても楽しそうに話をしてくれます。

帰り際
「お話、おもしろかったです」
と話しかけると、満面の笑みで
「そういっていただけるだけでありがたいです。
あいにくの天気ですが、お気をつけて、宮古島を楽しんで行ってくださいね」

好きなことを、愛情込めて
楽しそうに打ち込む姿、
いいな。

うすあかりの神社、お家のようなお墓

2日目の夜、
宮古島市内にある「宮古神社」へ。

旅行では、まずその土地の神社にお参りに行くのですが、今回は2日目になってしまいました。

日が暮れて、再び雨と風が強くなる中、ホテルから歩いて向かいます。
途中カサの骨を折りながらも、何とか到着しました。

過度な装飾がなく、いい雰囲気です。
夜なので暗くて分かりませんが、屋根は伝統の「赤瓦」のようです。
また、このときは「シーサーがいる」と思いましたが、あとで考えると狛犬だったのかもしれません。

夜の宮古神社

ところで、市内を走っていて気づいたことがあります。
それは、神社やお寺をほとんど見かけない、ということです。

こちらは、神社ではなく
御嶽(うたき)
なんですね。
ここに様々な守護神を祀っている。
島の人々の暮らしを守ってきた祖先のお墓が伝説化して、聖地になったものもある、とのこと。

そう。
お墓が大きい、というのも気になったことです。
墓石とその前のスペースを囲うように屋根がついていて、まるで小さなお家のよう。屋根の下で、親族が集まって食事(宴会?)をしたりするそうです。
そんなお墓が、団地みたいに並んでいるのを、いたるところで目にしました。

こちらでは、お墓の管理を寺に委託するのではなくて、自分たちで守っているんですね。
命をつないできたご先祖様への感謝を忘れず、一族を大切にする。
日頃、自分の意識に欠けているものだなぁ。

唯一の雨上がり、感動の白とグリーン

ついに最終日。
午前中は雨が弱まる予報です。
確かに、雨雲レーダーを見ると、強い雨を示す色のとぎれる時間帯があります。

仮に昼時に雨が止んだら、食事をとらずに景色を楽しめるように、朝食はたっぷり食べておきます。
何せ、残された時間はあと半日ですから。

天候が回復しそうな3日目に行くことにしていた、北西部に浮かぶ下地島の海岸
17END(ワンセブンエンド)
へ、いざ。

過去2日間に比べて雨は小降り。
期待に胸が膨らみます。
そして空に祈ります。

途中、宮古島と伊良部島を結ぶ名所「伊良部大橋」を通過。
細かい雨でけむっています。
帰りはきれいに見渡せますように。

約1時間後、現地に到着。
とたんに、雨が止みました。
雲が薄くなって、太陽の気配がします。

車を降りて防波堤を歩いていくと、
唐突に私たちの目の前に飛び込んで来ました。
白い砂と、エメラルドグリーンの海が。
「あの」宮古島の海です。

あぁ宮古ブルーと白い砂!
下地島「17END(ワンセブンエンド)」
波打ち際の素晴らしいこと

空はあいかわらずグレーで
太陽も顔を出してくれずに
残念ながら
「晴れた青い空」
との組み合わせは実現しませんでした。

でも滞在3日目で、
ついに「これぞ宮古島」という景色を拝むことができました
嵐の中で辛抱してきた甲斐があった。
感動もひとしおです。

ここは、潮の満ち引きによって表出する砂浜の大きさが変わるようです。
時間帯によって表情が違うんですね。
いま、ちょうどいい感じです。

満たされた気分で伊良部島へ移動します。
途中、下地島と伊良部島の境目となっている海の入り江に立ち寄ってから、かつお香る漁港でランチタイム。
朝に通過した「伊良部大橋」に戻ります。
さて、今度はきれいに見えるかな。

と、途中で小さな砂浜に出くわしました。
車を停め、近づいてみます。

あとで調べると「親泊の浜」という場所でした。


観光地としては紹介されていない(管理されていない)小さなビーチです。
こういうところ、平和でいいな。

手の入っていない「親泊の浜」
向こうに見えるのが「伊良部大橋」

足元には
小さなサンゴがゴロゴロ。
そして砂粒が大きい

海中公園の職員さんのお話を思い出します。
宮古島の砂が白い秘密を。
そういえば、こんなことも言ってたっけ。
「サンゴは持ち帰ってはいけません」

かわいくても持ち帰ってはいけません

車に戻って走り出すと、
いきなり雨が激しく降ってきました。
「島の天気は変わりやすい」とは、このことか。
目的の伊良部大橋にさしかかったときには、再び嵐に。
もう収まることはなさそうな勢いと、空の表情。

もうちょっとだけ平穏でいて欲しかった。
あと10分くらいだったのに・・・

しかたない。これも運命。

我々に残された時間が少なくなってきました。
がんばればもう1カ所くらい行けるかも知れないけれど、あわてて万が一のことがあったら、さっきの満足感が台無し。
早めにレンタカーを返却して、空港でゆっくり旅を締めくくることにしました。

今ここでしか味わえないものに出会えた

終わってみれば、宮古島をたっぷり堪能できた旅行でした。
もちろん、まだまだ知らない宮古島の魅力はたくさんあることでしょう。

でも、旅行サイトやガイドブックで紹介されているものをなぞるより
今ここでしか味わえないもの
に出会い、楽しむことができた気がします。

青ではなく灰色がかった空と、エメラルドグリーンのコントラスト。
激しく波打つ宮古ブルー。

そして、悪天候だったからこそ
きれいな景色に出会えたときの感動。

期待どおり行かなかったり
望みと違う状況になっても
恨んだりせず、今を楽しむ

すると
思いもよらぬ、何かに出会える
セレンディピティ。

巡り合えた幸運に感謝したくなります。
月並みな表現ですが、自然とそう思えました。


展望台から島を見守るシーサー

見守ってくれてありがとう。
おかげさまで、たっぷり満喫して
無事帰ることができました。
また来ますね。



この記事が参加している募集

旅のフォトアルバム

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?