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愛を探して。

今日は、軽く自傷行為をしたクライアントの傷の手当てをした。

私が働くグループホームに住む、ティムさん(60歳)。自閉症をお持ちの男性。

最近、耳が遠い彼のお母さんと、意志の疎通が上手くいかずにイライラしているらしい。


「お母さんはボクのこと全くわかってないんだよ!」

「お母さんはボクのことなんかいらないんだ!お兄ちゃんの方がかわいいんだよ!」

「もうこんりんざい、お母さんのとこには泊まりにいかない!」

夕食前にしきりとこぼしていたティムさん。

今日はそんな理由でイライラしていたせいか、時々物を床に落としたり、コーヒーの入れ物に蓋を上手く閉められなかったりする自分をひたすら責めていた彼。


それから1時間ほど経った時、

ティムさんがスタッフルームを訪ねてきた。

まるで小さな子供のように肩をすくめ、下を向いたまま、

「ねぇ、ボクの手にバンドエイド貼ってくれる?」

私 「あら、どうしたの?」

するとティムさん、ゆっくりと左手を私の方に持ち上げた。

ティムさんの左の手の甲、親指の下あたりに、乾いた血が大きなシミのように貼り付いていた。

私「えぇ?ティムさん、それどうしたの??」


するとティムさん、

「あんまりにもイライラしちゃって、自分の爪をここにねじ込んじゃったんだよ」

ティムさんをダイニングの椅子に座らせて、応急処置箱から出してきた消毒液で傷を洗う。


するとティムさん、


クスクス笑い始めた。

私「何?笑ってるの?くすぐったいの?」

するとティムさん、

「ボク、今、応急手当て受けてるー!」

クスクス笑うティムさんにつられて、私も一緒に笑い出す。


バンドエイドを貼ってもらったティムさんは、すっかりご機嫌になった。


キッチンで、自分のサラダを作るティムさんを見ながら、心の中で呟いた。


わかるよ、ティムさん。

お母さんに、「あなたはそのままでいいのよ」

って言ってもらいたいんだよね。

お母さんの笑顔が見たいんだよね。  


お母さんを責めてはいるけど、

お母さんに思い切り愛して欲しいだけなんだよね。



過去の私と母の関係を思い返しながら、ティムさんをそっとしておくことにした。


ティムさん、例え生き方や考え方が違っても、お母さんはティムさんを世界一愛してるんだよ。


ま、ティムさん、きっとわかってるだろうけど(^-^)