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電離層異常検知による地震予知の可能性について(京大梅野先生の研究から)


はじめに

最近、京大梅野研が地震に伴う電離層異常のメカニズムについて発表があった(詳細はこちらのPDFを参照)。地震予知につながる重要な成果である。ここでは、その成果を生かすべくさらにいくつか検討した事項についてメモを残しておく。

宇宙天気予報との連携

大地震が起こる前に電離層の異常がみられる、という指摘は梅野先生以外にもいくつかなされてきた。例えば、早川先生の研究紹介などがある。問題なのは、では、「電離層に異常があれば必ず起こるのか?」という点である。つまり、地震の前兆現象以外に電離層かく乱の原因があるならば電離層の異常検知をもって、ただちに地震がくる、とはいえないからだ。電離層に異常がみられる原因で最も大きなものは太陽活動であろう。たとえば、NICT(情報通信研究機構)のサイトにあるように短波帯に異常をきたす「デリンジャー現象」などが紹介されている。「宇宙天気予報」に照らし合わせながら電離層の異常検知をおこない、天気が晴れ(太陽活動ほぼなし)なのに異常が見られればそれをもって、地震前兆とみなす、という流れになるであろう。
(2024/4/26追記)※ 宇宙天気由来か地震由来かを区別する手法に関しては、やはり梅野らの研究報告がある (2016年熊本地震)

短波の電離層反射モニター

上でも書いたように電離層に異常があれば、短波帯などの反射に異常がみられる(前出の早川先生の阪神淡路大震災時のVLF反射異常についてはこちら)。電離層の電子密度の直接観測やこの短波異常反射をモニターする、という観測も地震予知には重要になってくる。

月の満ち欠け

月の満ち欠け(満月 or 新月)が大地震に関係してるのかどうかについては、まだ統計的に多くのデータがあるわけではないので憶測の域をでないが(個人の見解です)、いくつかの研究発表がある。念のため、月齢についても1つの要因として考慮したほうがよいと思われる。

その他宏観異常現象

地震雲だとか動物の異常行動だとか虫?の大量発生だとか巨大地震のあとにこんなこともあった、とかTwitter等で流れるケースがある。こちらも関係しているのか、関係ないのか、はっきりとは言い切れないが念のため、1つの要因として考えてもいいのではないだろうか。

予知のタイムスケール

南海トラフのように30年以内に起こる確率は90%、のようなスケールでは実際に避難行動をするにはあまり適切なタイムスケールではない。では、予知に適切なタイムスケールとはどの程度を意味するのだろうか、そして、電離層異常検知の方法はそのタイムスケールの範囲内となるのであろうか。たとえば、前述の早川先生の紹介の資料(神戸の地震)では数日前から短波帯の反射の異常がみられたようだ。すなわち、タイムスケールとしては数日(2日前後ぐらい)と想定される。今回の梅野先生の研究だと電離層の電子密度は約1時間前に急激な変動あるとのことで、タイムスケールは1時間程度ということになる。これは避難行動としては最も適しているタイムスケールではなかろうか。ただし、予知の精度が上がれば上がるほど該当地区の民衆がパニックを起こしたりして余計に危険が増すことになりかねない。どのように情報を伝えるのかについてはかなり慎重な議論が必要であろう。

以上、ざっと考察してきたが、まず、電離層の異常を検知するのが大前提で、そのときに「太陽活動(宇宙天気)」がどうなっているのか、短波の反射に異常はないか、そして月の満ち欠けはどうか、など複数の要因を考え合わせながら地震予知を検討していくとさらに精度が上がるのではないだろうか。今後の課題としては、先にタイムスケールについて述べたが、乱れ方の大きさと地震のマグニチュードとの関係など(つまり、乱れ方が大きいとより巨大地震が起こるのか)重要な関連性への知見が期待される。(※文章を書くにあたっては、生成系AIは全く利用しておりません)

追記:地中の電磁波に関する研究は、京産大の筒井先生のものがある。
追記2:大気電気変動現象(1998年9月15日仙台の地震)の例(東北大竹内先生)


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