今日のあなたに灯火を


「決して有名じゃないけど、私の心を救ってくれたバンドがいて、このバンドだけは例え周りに好きな人がいなくても応援し続けようって思っていた。再生回数一万回もいかないような誰の耳にすら届かないかもしれない曲の中に、「夢なんかは叶わないな、そう言ってくれたあのロックバンドはもう姿を消していたんだ」といった歌詞があって、「私もいつかこの気持ちを味わうことがあるのかな」と思っていたら、このバンドは1人辞め、2人が辞め、そして最後には無期限活動休止をした。「いつかバンドに終わりがくる」と知ったのはひかりのなかにだったのにそれを身をもって教えてくれたのもひかりのなかにだった。この時初めて、「ロックスターは死んだ、まだ僕は生きてる」の意味を知って、そして、「人生はまだ続く」とはっきり思った。
彼女がロックスターじゃなくなった時に知った、無力感や喪失感はきっと死ぬまでなくならない。」

これを書いた2年前は本当に、2度とひかりのなかに、は戻ってこないと思った。彼女のブログを鮮明に覚えている。

自分がほんのひと握りの人間になれると信じられる人はなかなかいない。それでも、必死に足掻いて手を伸ばして、努力する。そして努力すればするほど、そのほんのひと握りの人達が自分の中でもっと輝いてしまう。私はここで努力をやめるのだけど、稀に自分に本当に才能がないと自分自身で痛感しながらも歩みを止めることができない人がいた。
彼女がそうだった。

彼女も私と同じで、「周りから見て自分に才能があるか、価値があるか」を気にする人間ではなくて、「自分の中で、自分に才能があるか、価値があるか」を考える人だったと思う。この両者は同じに見えるけど、私の中では大きく違う。誰かに認められたいのではなくて、自分を認められるようになりたいのだ。

そうやって歩みを止めずに音楽を続け、ある日ぷつっと糸が切れてしまったみたい。そして無期限活動休止をした。

いなくなるんだなと思った。けれど、それでもいいやと思った。ひかりのなかに、は曲を、彼女の心を知ってから他の好きなバンドとは少しだけ違ってて、彼女に幸せでいてほしいと思ってたから。音楽を休んで、それで休息が得られるのだから、それでいいんだよと思った。心のどこかで、この人は音楽を諦められないだろうなと思っていた。だけどそれを掻き消すほどに彼女のこころが折れたのが分かった。

そしたら、ひかりのなかには活動再開をした。

ライブを始めた。Twitterも前よりずっと頻繁に更新してくれている。

好きなバンドが休止をするのもはじめてだったのに、それが再開をするのもはじめてだった。すごく驚いた。びっくりしたよ。


カホさんへ、あの日「舞台裏」で頭をぶん殴られて、そして我に返って号泣したあの日から、私にとって『ひかりのなかに』はただのバンドではありません。あなたの幸せを願っています。このこころが届かなくてもいいです。私は聴きたい時に、舞台裏を聴き、ナイトライダーを聴きます。
綺麗事を並べ立てる歌にはうんざりしました。だから私はあなたの「舞台裏」が好き。決して優しい言葉ではないけど、私はずっとあの歌詞を信じて生きてきました。これから先もそれは変わりません。
この曲を、初めて聴いた時の、あの時のバスケットボールに対する熱量は今はもう持ち合わせてはいないけど、そしてそれがとても悲しいのですが、今は今なりに必死に生きています。なりたいものになりたくて、なりたい自分になりたくて、いつも葛藤しています。
それを信じてくれて、守ってくれてありがとうございます。

音楽を愛する今日のカホさんへ、今日もあなたが信じられる、あなたでいられますように。

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