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「信じる」とは、最高に強くて美しいエゴイズムの在り方。

学生時代の友人に何年か振りに会った。お互いの空白の時間を埋めるべく話に花を咲かせて行く中で、話題はいつの間にか「振り込め詐欺」の話に。

ただ、そんなもん最近じゃ下火になった話だし、ここ何年かの話をしている流れで出て来ただけの軽い時事ネタ程度で終わるはずだったのだが、友人の一人が笑いながらこう言った事でその空気は一変した。

「そうそう、俺この前、振り込んじゃったよ…2万!」

この言葉を聞いた途端に一同は静まり、数秒後大爆笑となった。

その後、「振り込んだヤツ初めて見た!」「俺のじいちゃんでも振り込まねえよ」「バカだ」「アホだ」「むしろ男だ」などと大いに笑われ罵られる友人。

おそらくあまりの無知が招いた悲劇なんだとは思うが、普通は例え知らなくとも、どう考えても怪しい請求なのだから、振り込む前に多少はネットなどで調べたりして、そこで分かるはずだと思う。当然他の友人もそう口を揃えた。

まあ、彼も一応は調べたそうだ。何を調べたかっつうと、他のエロサイトの相場を。で、得た結論。

「見放題を半年で2万は妥当な額である」

そして彼は見事に振り込んだのだが、やがて何かがおかしい事に気づく。

「なぜ契約を交わす前に請求が来たのだろうか?」「もしかすると詐欺にあったんじゃないか?」

そして騙されたと分かった彼はすぐ行動に打って出る。

そう彼はバカだけど決して泣き寝入りするようなタマじゃない。ただバカなだけだ。元々、正義感の強い彼は一目散に警察署に駆け込んだ。


プリントアウトしたエロサイトのホームページを片手に。


そんな男らしく且つ愛らしくもある男の訴えにも関わらず、警察は全く相手にしなかった。彼は何も金を返して欲しいわけじゃない。そんなものが野放しになってるのが許せないだけだ。

そんな男がエロサイトのホームページを片手に警察署にまで駆け込んできたのだ。俺が警察だったら迷わずただ強く抱きしめてやるだけだ。

「まだ詐欺だって決まったわけじゃない」「詐欺だという証拠が無い」というのが警察の言い分らしい。

しかも何故か、「ダメですよー振り込んじゃ~」「まぁ男だから分かりますけど~」などと説教までされる始末。

ただ、そんなんじゃ彼の腹の虫は収まらない。

自分にどんな落ち度があるにせよ自分が被害者である事は間違いないのだ。それが厳然たる事実なのだ。そう信じた彼は懸命に警察に訴え続ける。

「俺は詐欺にあったんだ!俺は騙されたんだ!被害者なんだ、せめて被害届だけでも受理してくれ」と。


もちろんエロサイトのホームページを強く握り締めながら。


そんな彼の情熱にほだされたのか、警察はついに重い腰を上げた。

「じゃあこうしましょう。1ヶ月待ってください」

「1ヶ月?」

「そう1ヶ月。詐欺だとはまだ決められないんで1ヶ月だけ待ってください」

「…」

「で。1ヵ月後また来てください」

「…」

「いいですか?1ヶ月ですよ。1ヶ月待てばハッキリしますから」

「…分かりました」


ここでもまた騙される彼だった。



※男は【単純明快】超わかりやすい。

※女は【複雑怪奇】複雑にして妖しく不思議なこと。



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