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【2023WBC】中華人民共和国国家隊通信簿&総評

★~★★★★★の計5評価。各個数の意味は下記の通り

★ 残念、期待が難しい
★★ ちょっと残念、惜しい
★★★ まずまず
★★★★ 良かった、期待出来た
★★★★★ めちゃくちゃ良かった、めちゃくちゃ期待出来た 

監督

Dean Treanorディーン・トレーナー ★★★★
MLBが国家隊の編成フローの共同主体となったこともあり、これまでの経典賽の中で最もまとまりあるチームを作り上げた老将。日本、チェコとのゲームは若い人材への経験値となる場を提供しながら、終盤までしっかりとコンテンドと、継投への嗅覚はさすがMLBで投手コーチを任されただけの手腕だった。陽気なキャラクターでチームからも愛された。満点評価でも良かったが、オーストラリア戦に朱権を送り込めるとの欲が若干見えたか、チェコ戦の9回のちぐはぐな継投だけが本当に惜しまれる。

伊健イージェン ★
広東隊のエースとは一体、、本来であればSPとして若い国家隊をリードすべき人材が、日本戦で0.1IP/5失点で終了。球速アップも無ければ、アンダーカテゴリから売りにしてきたコマンドも精彩を欠き、今後への期待との観点でも全く良い点が無かった。

宮海成ゴンハイチェン ★★★★
コマンド難のこれまでを思うと、若い国家隊の中で1歩先を行く落ち着きを示したパフォーマンスは大きな成長と思う。体格やパワー面、伊健のスランプを思うと、直近のエース最有力の1人になるのでは。

王唯一ワンウェイイー ★★★★
経典賽前の薩摩・宮崎での練習マッチで全く情報が無く、コンディション不良が危ぶまれたが、日本戦を含めて元気にプレー。MAXで88マイルをマーク、ボールを動かしながらゾーンを攻める持ち味も示し、まずはたった2年で陝西隊から世界デビューをしたことに拍手。NPBの3冠王である村上宗隆からはKもマークした。やや小手先に頼りすぎな上、そのテクニックも経典賽では通用したと言い難い。根本的なフィジカルアップでさらなる成長に期待。

斉鑫チーシン ★★★
コンディション不良でなかなか国際的なパフォーマンスの場を作れずにいたが、オーストラリアに対してGSする形でヴェールを脱いだ。随所のコマンドはチームで一番の物を示していたが、国内のパフォーマンスを思うともっとやれるのでは、との感想も拭えない。19年CNBLの大活躍からコンディション不良を挟んで、デリバリーが変わったのでは、との声も挙がった。

趙富陽ジャオフーヤン ★★
錦標賽の時と全く同じく、早い回でノックアウト。カタログスペックだけを見ると良い物があるのだが、ここまで打たれるのは球質面で何かしら欠陥があるのだろうか。Baseball Savantのデータをベースに究明したいところ。趙富陽を救いたい。

鄭超群ジェンチャオクン ★★★★★
後述する蘇長龍と共にベテランの大事さを教えてくれた。国内ガンでは84マイル程だったストレートが常時86~87マイルとパワーを示しつつ、変則デリバリーや落ちる変化球のコンビネーションで存在感を示した。若く足元もおぼつかない人材が多かった中で、彼がいなかったらチェコ戦はもっと悲惨なことになっていた可能性もあった。

朱権ジュウォン ★
棒球協会とのコミュニケーションロス等の同情ポイントこそあれど、大会前の本人のモチベーションの低さ(と、それをメディア向けに公けにしてしまう精神性)含め、二度と召集しなくて良いと思う。三顧の礼で召集に漕ぎつけたとしても、恐らく誰も幸せにならないな、との気持ちは、チェコ戦で確信に変わった。

張彦倫アラン・カーター ★★★★★
UDFAでLAA入りした直後に国家隊の召集に応じた新鋭は、流石は北米で揉まれただけあるスペックを披露。94マイルオーバーのストレートとシャープなカーブ主体に獅子奮迅のパフォーマンス。韓国戦は欒臣臣が彼の規格のボールに全く対応が出来ずバッテリー共々苦戦したが、間違いなく今後も主戦格として期待。言語面の不安も聞き取りは問題無い等、当初想定よりもはるかに順応する基礎があった点は朗報だった。

王宇宸ワンユーチェン ★★★
米サマーリーグのパフォーマンスを含め、こんなものかなー、との印象。2IP/0失点と国家隊では一番のパフォーマンスだったが、事前触れ込みと照らし合わせると、もっとスピードボールを拝みたかった気持ちは強い。

孫海龍スンハイロン ★★★★
人によって評価が割れそうと思った。独特なチェンジアップを主軸に置いたプレースタイルは味がある一方で、個人的には国として掲げる28年五輪を目がけた人材としてはスケール不足な印象の方が強かった。まだ若いので、これから大化けする可能性に期待してちょっと通信簿は甘めに。

張昊ジャンハオ ★★★★
規格外の体格から88マイルを投げ下ろすパワーエース人材が誕生。全体的に力みまくりで、監督が「まだまだスロワー」と語る点も納得。一方で素材は近年の国内人材では圧倒的に良く、高いレベルに触れる中で技術を学べば大化けする可能性も感じた。インタビューを見ていると、普段は人懐っこい表情、プレーになると鬼気迫る顔になるあたり、大谷翔平の様にも思う。

蘇長龍スージャンロン ★★★★★
41歳にしてチーム最多の3Gにプレーと、存在感を示した。鄭超群と同じく、ベテランらしい落ち着きをチームにもたらした功績は大きい。コマンド面でも最も安定感があり、次回経典賽もプレーして頂きたい所存。お願い蘇長龍、もう1年だけ、、と3回土下座する準備は、こちらは出来ている。

林強リンチャン ★★★
可も無く不可も無く、、河南隊のメンバーとのことを考えると、こんな物だろう、と、あまり感想が無い。

王翔ワンシャン ★★★★★
2.2IP/0K/8BBで★★★★★はふざけていない。左で86マイルを叩き出す人材がいる上、デリバリーの未熟さ、体格の細さを思うと無限大なアップサイドと、日本戦のSPとして初球を投げた瞬間にたちまち棒球迷の期待値をぶち上げた人材。3年後の大化け筆頭。上海はお手本になる好投手が多くいるため、これから色々と学びながら、大きくなって頂きたい。

欒臣臣ルァンチェンチェン ★★
絶対的なレギュラーとして君臨する姿を思い描いていたため、どちらかと言えば李寧にアピール負けした点は残念。韓国戦の守りは張彦倫の様なボールを投げる人材は国内にいないため仕方が無い。

李一凡リイーファン ★★
あまりプレー機会に恵まれず、欒臣臣と同じ様な感じで通信簿も記載。ただ、韓国戦でのバッティングは割と内容が良く、ここ数年でのバッティングの進歩が見えた点はとても良かった。

李寧リニン ★★★★★
まさかレギュラー格として獅子奮迅のパフォーマンスとは、今回の国家隊で最大のサプライズと思う。3-8で打率.375を叩き出し、Cに加えて2Bとしてもプレーとユーティリティ性も披露。献身的なプレースタイルも随所に滲み、今後も国家隊に必要な人材と確信。使い勝手に精神性、実力と、3拍子が揃った人材で、個人的にも評価を見直した人材。

陳晨(小)チェンチェン ★★
ほとんどプレーが無かったため、あんまり印象が無い。

曹傑ツァオジエ ★★★★
オーストラリア戦から何かを掴んだかの様に持ち味のパワー溢れるバッティングを示し、最終的には期待溢れる形で経典賽を終えた。日本戦でも変化球にしっかりと粘る姿勢を見せる等、バッティングに関しては間違い無くこれからの主戦格。1Bディフェンスは悲惨だったため、その点で★はマイナス1個。

羅錦駿ルォジンジュン ★★
新星国家隊のキャプテンは攻守で存在感を示すことが出来ず。下位で比較的責任は小さめだったバッティングはともかく、2Bディフェンスはレンジ・スローイングいずれも不安が残るパフォーマンスに終始した。国内で3Bとしてのプレーを見た時はもう少し安心感を感じたが、今回のパフォーマンスを踏まえると、守らせるべきポジションが見えなくなってきた印象。

陳晨(大)チェンチェン ★★
パフォーマンス的には★相当な気もするが、元々振れの大きい人材とは認識をしていたため、ノーヒットで経典賽を終えたことも想定の範囲内。心の準備が出来ていたと言うか、、陸昀の負傷とのアクシデントもあったため起用自体には不思議は無かったが、彼を超える3B人材の台頭は待ち望まれる。

楊晋ヤンジン ★★★★★
大谷翔平からのレフト前はきれいに捉えており、素直に実力でもぎとったと思う。現在の中華人民共和国内のベストプレーヤーなことはもはや揺るがなくなった、そんな経典賽になったのではないか。

陸昀ルーユン ★★★
負傷でプレー出来ずも、ベンチから先頭に立って声を出す姿が度々目撃された。監督からもチームのハート・アンド・ソウルとの高い評価を得ており、その点に恥じない貢献だったと思う。最近リリースされている国家隊ドキュメンタリーで一番好きになった選手。

張宝樹レイモンド・チャン ★★★★★
老け込んでいるのでは、との不安を払拭するどころか、チームでトップクラスのバッティングは未だ健在。MLB側から派遣の監督・コーチ陣との懸け橋としても見事にハマった様に思う。近年は国内での競技普及や後進育成に尽力しており、もはや球界にいなくてはならないスーパーレジェンド。

真砂勇介マサゴユウスケ ★★★★
バッティングは期待を下回ったかもしれないが、OFディフェンスの安定感はセンターラインをしっかりと落ち着かせた点で影響は絶大。フィールド外を見ても、合流後から積極的に技術指導をする姿が見られ、すっかりチームに馴染んでいた様に思う。技術レベルの発展において非常に大きな貢献をしたのでは無いか。張宝樹が担ってきた役割を真砂が受け継いでくれるとうれしい。

梁培リャンペイ ★★★★
バッティングを中心に粗いポイントは各所に見られたが、チームに勢いをもたらす役割をこなしたのは間違いなく彼だった。核弾道らしい思い切りの良いスイングで日本戦では戸郷翔征からソロホーマー。日本語で中華人民共和国情報を伝える広報的な役目もこなすと、フィールド内外でインパクトを残した。(内容バレになるので詳しくは書かないが)北京の日本語誌で語った経典賽での目標が達成されたのかは素直に気になる。

寇永康コウヨンカン ★
こんなにマン振りキャラだったっけ、、LFのディフェンスも不安定で、伊健共々MILマイナー組は存在感を発揮出来ず。

韓嘯ハンシャオ ★★
コンディション不良か、ほとんどプレー無く終了。本来はレギュラー有力な人材だっただけに惜しまれる。

朱旭東ジュシュドン ★★
快速OFとして薩摩での練習マッチから度々注目を集めた人材。経典賽自体は色々と不安が残るパフォーマンスだったが、リードオフらしいスペックの人材で面白いなー、とは思った。

梁栄基リャンロンジー ★★
ほとんどプレーは無かったが、韓国戦でのスイングが思ったよりも鋭く驚いた。

総評

注意
本当は26年経典賽に向けた展望やリスクについて語りたいところだが、内容を考える限り、それ自体で1本のブログを書く方が相応しい様に感じたため、ここでは展望関連の記載は割愛することにした。

経典賽のパフォーマンス自体は、実は比較的好意的に受け取っている。甘々な評価と罵ってもらっても構わない。それでも、17年の時の様な対応力の土台になるふところがまるで無いプレーぶりから大きく成長し、格上の相手にも食らい付くプレーを継続したことが、私の中では非常に大きな成長ポイントと理解をした。特にバッティングに関しては、調子による振れはありつつも、現状出来る最大限のパフォーマンスはしっかり見せられたのではないか、と思う。

反面、投は全体的に、国内で見られる様な「見下ろしてのプレー」がほぼ全員出来なかった点は歯痒かった。国内のプレーを見る限り、特に斉鑫伊健王唯一はBBから自滅する様なタイプでは全く無いのだが、経典賽の舞台ではカウントコントロールに終始苦しんだイメージだ。国内規格から明らかに外れた体格・スイングスピードの打者たちを恐れた結果かと推測するが、この点はほぼ同じ様な境遇の下積極的な攻めを展開したチェコの投手たちを参考にしていきたいところだ。

ディフェンスはセンターラインの安定感が秀逸だった一方で、コーナーはIF/OFいずれも精彩を欠いたイメージ。梁培が十分なレベルなだけで、その他は不安定なプレーに終始した様に感じる。1Bはしばらくは曹傑が国家隊を牽引する理解なため、彼はこれから毎日感謝の特守を1日1万本行って頂くとして、3BとLFは国内デプス的に選択肢に乏しい点が響いたか。あまりプレーを見ていないが、王立子朱天舟が人並みに守れる様であれば、、との希望はある。

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