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千年ものときを

泣いて過ごす夜がもう二度と来ないように、と痛切に願ったはずなのに、何度試しても何年生きても繰り返してしまうのは悪夢のようなループものの作品に迷い込んだ気分だ。鬱という言葉が流行りだしてから口に出すことは自分を軽く見せてしまうような気がして避けている。だから今日も「悲しい夜」をじっと堪える。

 今日は満月の一日前。満月よりも、この方がいい、だって満ちる猶予があるじゃない。そう言ったひとが穏やかな満月の夜を過ごさないとしても、わたしはその余裕のある笑顔を覚えている。

 『千年女優』という作品に出てくる主人公の想い人の言葉だ。満月はそんな見方ができるのだ、と気づいたとき少しまた世界が明るくなった気がした。わたしの知らない美しいものはまだ沢山ある。この作品は、自分のようだなとずっと思っている。主人公のように、この言葉を宝物として心にしまったままだ。

 今日を来せるのはこの言葉のおかげ。満月の夜を迎えられるのはまた他の何かのおかげ。こうやって今日を生きのびて、生き延びきれない日がきたらそれはほんとうに「そのとき」。そう思っているのは別に感傷的な自分が嫌いじゃないからだけではないはず。そんな出会いがわたしにも、わたしの文章を読んでくださっている方にもありますように。



 わたしの今日の糧。よければ観てみてね。


本になって、私の血となり肉となります