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夏をあきらめて

初めてこの曲を聴いたのは小学5年生のとき。デーハーとは程遠いメロディ、アレンジ。第一印象は「大人っぽい」。

鍵盤出身の私はどうしても鍵盤の立場で聴いてしまう。「アウフタクトのイントロ、エロッ」「これ多分原さんが考えたんだろうな」が第二印象。Dmに対して「ミ」をぶつけるメロディライン。9thのテンションの切なさが心地良い。同じテンションでも、DmをFに替えてF△7にすると何かが違う。ここはやはりDmに対して「ミ」、7thの「ド」を加えてDm9なのだ。サビも以下同文。サビのエレピのカウンター。恐らくこれも原さん考案のフレーズだろう。メロディを邪魔せず、且つ引き立たせるカウンター。まさに天才の所業だ。

音楽理論のこねくり回しはここら辺で。

1組のアベックが海に来ている。天気は生憎の雨。響く波音と雨雲の対比。濡れた身体が乾く間もないほどの雨。胸元から滴り落ちるしずく。無言で“夏をあきらめる”。

「Darin' Can't You See?」 「I'll Try To Make It Shine」「Darin' Be With Me!」「Let's Get To Be So Fine」パープーの拙い英語力で訳すとすれば、「俺が晴れさせてみせるから、俺と一緒にいてよ。元気出してよ」といったところか。まァ切ない。“つれない素振り”の女性と彼女を追っかける男。まさに桑田さんの詞のパターン。この女性はLong−brown−hairなのだろうか。名前は栞さん?脱線しそうなので自主規制。

潮風が騒げばやがて雨の合図。地元住民だからこその“肌感覚”なのだろう。Pacific Hotelのガラスごしから見る背中で見る渚。こんな天気じゃ彼女の水着姿も見れやしない。熱めのお茶と意味シンなシャワーは手持ち無沙汰故か、それとも彼女の泣き顔を見たくないからか。サビの“カラ元気”をもう一丁。

岩影にまぼろしが見えりゃ虹が出るのに。おそらくこの段階でも雨はまだ“ポカンポカン”と降り続いている。江の島が遠くにボンヤリ寝てる。「見える」ではなく「寝てる」。江の島がボンヤリ霞むほどの雨。このまま君とあきらめの夏。倒置法。最後のAメロの追っかけコーラスが“バンド感”を感じられて好き。


noteに寄稿するということは、仮にも自分の文章が世界中に公開されることになる。下手なことを書かないためにも歌詞を何度も読み返した。普段何気なく聴いている、生活の一部であるサザン。歌詞カードを見るからこそ、歌詞カードを見ながら曲を聴くからこその良さを発見した。と同時に『作詞家・桑田佳祐』の凄さを再認識した。この曲は特にメロディとアレンジと歌詞とが呼応し合っている。こんな凄い曲がタイアップなしのアルバム曲。恐ろしや。

ヘッダーの写真はサザンビーチちがさきのヘッドランド、通称『Tバー』から見た江の島。この日は快晴だったから江の島は“ボンヤリ”ではなく“ハッキリ”見えた。



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