それは覚悟と決意


今回も有償記事のご依頼を頂きましたので、レシピ公開という形で記事を書いていきます!
レシピの開示としっかりとした制作記事は5000円〜承っておりますので(内容量による変動あり)お気軽にご相談ください。
ちなみに、過去制作した作品もレシピが残っている限りは可能ですし、今後制作するものも解釈・解説書としてお出し致しますよ!
無料の記事はあくまで制作日誌として気まぐれに残していきますが期待はしないで下さい。

剣を持って


さて、以下解析書です。
今回ご依頼頂いたのは海外作品の悪役令嬢モノに登場する騎士の方です。元々この作品は、店主自身がその作品を追っかけていたのもありよくよく知っている作品でした。いや〜そういう事もあるんですね。うんうん、という感じです。
今回作った香水は、騎士本来というよりは騎士とヒロインが出会った後の香りという事だったので、フォーカスをそちらに向けつつ制作致しました。

香水のタイトルは「剣を持って」です。
今回このタイトルにしたのにはしっかりと理由がありまして、騎士は元々産まれが王族であり、敗戦国出身です。敗戦国とはいえ元々は武力に優れていたとの情報もあり、王族であるからと言って政治に傾いていたかと言われると剣術に秀でて居たのだと思います。
故郷を失い、人権も失い、奴隷となった彼にとって唯一残されたもの、それが武力の象徴である剣術である事から、このタイトルには奪われることの無い「自己証明」
そして「主を護るという覚悟」、「自分というものに対しての誇り」そういった意味も込めて「剣を持って」と付けました。
剣を持つと言うことは人を切るという事であり同時にそれらは、己の覚悟という事です。
覚悟を持って生きていくという強い意志からつけました。

続いてレシピですが、ご依頼者様からは嗅ぎ慣れた香りなのに何かわからない、何処かすえた香りがするけど市販品ではないような香りと言われました。
その正体はウィンターグリーンとアシュワガンダ。
ウィンターグリーンの主成分はサリチル酸メチル。
香料の成分の殆どがこのサリチル酸メチルになります。
サリチル酸メチルはアスピリンに近い効能を持っていて、現在だとガムや歯磨き粉のフレーバーとして使われる以外に、湿布薬として使われていた時代もあります。成分的にも湿布薬の様な効能が多く打ち身に効果的だったり、解熱鎮痛であったり、肩こりなどにも。

元王族騎士とはいえ、騎士は騎士。ましてや奴隷扱いですからさぞかしその特訓や修行、訓練は過酷なものでしょう。それが故に、騎士は湿布薬や包帯といったものが欠かせないのでは無いか?という所から選ばせて貰いました。
ちなみにウィンターグリーンの花言葉で一番騎士っぽいのは「明日の幸福」です。
前へ前へと生きたいという想いそのものとも言えますね。

そしてすえた香りの正体ですが、アシュワガンダです。アシュワガンダの香りはくぐもった感じのハーブの香りです。
根っこや土っぽさ、大地と乾燥した草の香りとも言い換えられます。騎士のイメージがどうしても荒地なのでこちらを選びました。
様々なストレスに対して和らげてくれることから中国医学(漢方)なとでも親しまれているものです。
騎士は生活的にどうしても気が滅入る生活が多く、店主の解釈としては睡眠障害を持っていてもおかしくないな?と思いました。眠りにつけば戦争のことや、奴隷時代のこと、そして現在の主の事を思い出しては目覚める毎日なのではないか、と。それでも日々は進むし前に進まなければならない、だからこそこういう漢方の様な存在を治療として取り入れている可能性を考え、また枯れた大地のイメージから選びました。

この時の騎士は既に主に出会っているので、主のイメージとしてローズの香りに似ているローズゼラニウム、ローズウォーターを選択。しかしこのローズの香りも主らしい香りではなくあくまで騎士の中のイメージである主という所がポイントです。
騎士が感じてる主へのローズ感は、あくまで彼が求めている優しく包むような愛情であり、根源的に言うのであれば母性の象徴なのでしょう。ローズゼラニウムもローズウォーターも確かにローズの香りに近いですが、ローズそのものでは無い、それが理由です。
主は騎士が求める愛情を与えてはくれるが、それは本物という訳では無い。その事実を象る為に選んだので少しばかり寂しい印象にしました。

そしてここからが1番のこだわりポイントです。ならば本当の主とは?
それはピンクロータス、ローズマリーで表現しました。
ピンクロータスは甘くて濃厚な香りであるにも関わらず何処か透明感があり、手に入らない様な幻影的な印象がある香料です。嗅ぐだけで幸福感を感じる香りなのですがそれをローズマリーという強めのハーブで拡散させます。ピリッとしたハーブなので、スッキリと目が覚めるような感覚。このふたつを組み合わせる事で生まれるのは「幸福感」に対する若干のツンツンとした拒否感と、それが本物ではない様な感覚です。その穏やかさは遠く、手に入らないのでは無いかと。そういうアンバランスさの表現として選びました。

そしてしれっと入っているライム。このライムは調整用の香料ではありますが、ライムの香りには爽やかさがあります。危うい感じと、どこか先を見据えた様な、所謂地に足つかない感覚、ある意味での自由さの表現です。

剣を持つことで覚悟を決めている状態であるが、諸刃の剣とでも言うようにどこか危うい騎士。だからこそのこのバランス。
今回は早めに送るために熟成が少し甘いので、クリスマス頃にはもっと深みのある香りになるかと思います。そうなるとより一層危うげな印象になってくると思いますが、それで良いのです。
最初は警戒心、そして徐々に深まっていく理想像と幻想。行き着く先のドロドロさ。
緩やかに、緩やかにです。

もし依頼者様が早く知りたい!と思う様であればお湯にワンプッシュかティッシュにワンプッシュして擦らずに温めると良いでしょう。そうすることで緩やかに重たくなって行くのを感じるかと。
そして最後には居るはずなのに、遠くに行ってしまった、という感覚が残る香りになると思います。

まあ最初は湿布の香りなんですけどね!

という事で短いのですがこれで以上になります。

最後に
レシピ公開の解析書は文字数のお約束ではなく、レシピの説明になるのでもっとそう言う解釈聞かせて!の場合は別料金にてご依頼してて貰えればOKです。

この度も、当店をご利用頂きましてありがとうございました。

オマケ
・ウィンターグリーン 「明日の幸福」
・ローズゼラニウム「恋煩い」
・ロータス「離れゆく愛」
・ローズマリー「追憶」
・ライム 「あなたを見守る」
・ローズ「あなたを愛しています」

※香りで選んでるので花言葉をメインにしていませんが、たまにそういう仕込みで遊ぶことはあります。

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