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トルコでの新型コロナに関する私の体験(3/16時点)

この記事はわたし自身が見聞きしかつ体験した範囲内での話です。あくまで、とりとめのない話の一つとして読んでいただければ幸いです。

1.トルコにコロナがやってきた。

この国の人々は、普段マスクを着用しない。風邪程度でマスクをして外に出かけると恥ずかしい目にあう。しかし、ここ数日でこの国でもマスクを着用して、町中を歩く人が増え始めた。

3月11日だったか、とうとうトルコにも新型コロナウイルス感染症(COVID-19:以下、コロナ)の罹患者が現れたことがトルコ保険省によって発表された。昨年12月の中頃、中国の湖北省武漢市で感染報告されてから、日本や韓国、イタリア、イランをはじめとして、世界中で感染者が広がっている。3月現在も収まるどころか、日々感染者が広がっているのが現状である。

現在(3/16)トルコでのコロナ感染者は5人である。感染者第1号とその親戚たちである。政府は、小学校から大学までを本日3月16日から3週間の休校を命じた。対外的にはヨーロッパ方面への門戸は閉じ、国内では、人々にむやみに外に出ないように勧告された。トルコ全土でカフェや映画館などが営業停止となった。迅速な動きではある。

テレビではトルコ保険大臣の名で以下の14か条の決まり事が出された。

1.手を水と石鹸で最低20秒間よく洗うこと、2.悪寒があると思われる人とは人間3-4人分の距離を空けていること、3.くしゃみや咳をするときはハンカチで口と鼻を覆うこと、4.握手や抱擁といった近い関係は避けること、5.手で目口鼻を触らないこと、6.国外旅行は中止するか、延期すること、7.国外から戻ったら最低14日間は家で過ごすこと、8.居場所の空気の入れ替えを頻繁に行うこと、9.衣類は60-90度のお湯で普通洗剤で洗うこと、10.ドアノブ、便所にようなよく使う面を水と洗剤で毎日きれいにすること、11.あなたが悪寒をかんじた場合、老人や患者とは接触しないこと。マスク着せずに外に出ないこと、12.タオルなどのように個人的な持ち物を共有しないこと、13.規則正しい食事と睡眠に気を付けること、14.熱や咳、呼吸困難が収まらない場合には、マスクをして保健所に申請すること

コロナの症状は致死率が高くないとされる。ただし、感染力が非常に強い。かつ、得たいが知れず、治療法も不明である。気持ち悪いものであることは間違いない。死亡者は免疫力の弱い老人ばかりであるという。みな、むやみに外に出ずに、規則正しい生活をして免疫を強めておくしか方法はない。

3.うちの状況

国内でコロナ感染者が出て、政府が国民に外出回避を勧告し、コロナ情報がテレビで報道されはじめたこともあって、おじさんもおばさんも一日中家で過ごすようになった。おばさんは一日中ソファに座って編み物をし、おじさんは一日中寝転んでテレビを見ている。その生活が今日で三日目。とうとうおじさんが我慢ができなくなり「おれは散歩に行く」と言い出した。すると、おばさんがあんたは「この家の大黒柱で、父親だ、ウイルスに感染したらどうするの?」と極めて強く外出を止めていた。私は少し外出する程度よいではないか、と思ったのだが、おばさんは相当に警戒しているようだ。

おばさんは2月の段階では、「心配ない!コロナなんて怖くない。春になれば収まるんだから」と言っていた。さらに、おばさんの親戚が「籠城」のため買いだめを進めたときも、ばかばかしいと笑い飛ばしていた。しかし、国内でコロナ感染者が出ると、「わたしは、あんなこと言っちゃってたけど、こわくなってきたわ~」と大きく舵を切り替えた。ふとキッチンを見るとパンが買いだめられていた。

かれらの二人の娘たちはそれぞれ国外で暮らしている。ニューヨークでいる姉はコックとして働いているものの、コロナのせいで勤め先の店が営業停止となってしまった。ニューヨークの高い家賃をどう支払おうかに困っているのだという。他方、妹はベルリンで大学院の修士課程に通っている。いまは宇宙関係の仕事をしながら、修士論文を書いている。修論を大学のパソコンを使って書いていたのだが、大学図書館が閉まったことで論文に手を付けられない状態らしい。仕事は家でオンライン勤務しているとのことだ。

こうしたこともあって、おばさんはおじさんに万が一のこともあってほしくないとは思うのであろう。そういわれると、私も外出しずらいものだ。万に一つ外からウイルスを持ち込んだ日には、もう私は立ち直れない。だから、私も許可なくは外に出ないようにしている。

4.アジア人は外にいずらい

もちろん私はコロナに感染することを恐れている。しかし実はそれ以上にコロナをめぐる悪感情や相互不信、が人々のあいだで伝染することのほうが恐ろしいと考える。

コロナ発生以降、欧米圏ではアジア人への差別やヘイトが起こっていると耳にした。イスタンブルの町中では、2月中、酒屋のやつに「ころ~な」と言われることが数回ほどであっただけで、ほとんど人はそんな無神経なことは言わない。3月に入ると、私を見るなり口元隠す人々が増えたように思う。さらに、ぼくの住んでいる家の隣のこどもなどは、僕を見るなり、コ、ココ、コロナーーーって口を隠して逃げるのである。ひどいなあ~

トルコでコロナ感染者が出たころ、私はちょうど、トルコの地方都市に人を訪ねに行っていた。移動に飛行機を使ったのだが、私が機内に入るなり、入口で出迎える客室乗務員の女性が顔を背けてあとずさりするのだ。機内から出るときも同様に無言で顔をそむける。また、地方の町を歩いているときも「ウイルスがきたわ」とかコソコソ言う人もいたりした。移動のバスのなかではやはり口を隠されてしまう。バスのなかでゲホゲホ咳をしまくるばあさんよりも、僕のほうが安全だとおもうよ。

アジア人を見たら、コロナと思え・・・。いい気分はしないが、。私は彼らの気持ちがわかる。この時期にアジア人を見たら怖いし、そりゃ頭でわかっていても警戒するであろう。だから、公共交通機関に乗るのが申し訳なくなる。怖がらせてすみませんとなる。これが最も大きなストレスとなるのだ。

むろん、そういう人ばかりではない。あからさまなことはしない人が大半である。とはいえ、やはりちょっと警戒されているであろう。私の自意識が過剰になっているだけかもだが。

4.コロナウイルスをめぐる流言飛語

コロナについてはさらに、トルコでは陰謀論として語られる例が多く見られた。そもそもトルコの人々は陰謀論の類が好きで、大体はアメリカやユダヤ人が悪いとの結論になる。このコロナの件では、おばさんは経済戦争に勝つためにアメリカが仕込んだと説明し、床屋の兄ちゃんはアメリカが中国の人口を減らすためにやっているという。あと下宿先のおじさんは中国共産党が自国の膨れ上がった人口を減らすためにウイルスを人工的に仕込んだと、それぞれ陰謀論を展開します。根も葉もない論を本気で展開してくるので少し困る(よく考えたら、日本でも似たような人はいるから、どこも一緒か。)

つい最近まではこういう説もまかり通った。専門家が自信満々にっ語るそれらを、うちのおばさんはじめ、多くの人が信じているのだ。

一つはウイルスは気温が高くなると死滅するという説。春になるころにはコロナ騒動は収束しているというのだ。しかし、春夏になって収まるとする根拠はどこにもないし、そもそも温度の問題であれば、体内で死滅するのではないか。または、太陽光に弱いといういみなのか。とにかく根拠がないのだ。

もう一つは、「人種」とコロナとを結びつける説である。コロナは黄色人種には感染しやすい一方で、白色人種や黒色人種には感染しずらいというのだ。そして、トルコ人は白人だから、感染しにくいのだという。であればイタリアはどうなのだと聞きたいところだ。なかには、トルコ人はコロナにはかからないとする、トルコ人最強説を打ち出す民族主義者もいることを友人から聞いた。もちろん、何の根拠もない。

このような質の悪い説が平気で出回る。俗説自体は非常に興味深いものばかりなのだが、それを本当に信じられてしまうと、徒労感でいっぱいになるのだ。

5.難民と伝染病への懸念

これは私の勝手な懸念だが、トルコは多くのシリア難民やアフガン難民を抱えている。2月末にトルコ政府が国内にとどまる難民をヨーロッパへ行くよう促したことで、エディルネ方面に国境地帯に難民たちが集まっている。トルコとEUとの交渉あってのものではないので、ギリシアの国境は開かないままである。難民たちは現在も国境を越えられず立ち往生しているという状況にある。外で薪を割って暖を取りながら、野宿している。最悪の場合、今後、こうした衰弱した難民たちのあいだで、コロナ感染者が発生する可能性もあろう。すると、より厄介な問題を抱えることになりはしないか。少なくともそのようなリスクを欧州は死んでも受け入れないであろう。

6.いつまでつづくのか

トルコも今後どうなるのか、先行きが全く見えない状況である。コロナ騒ぎもまだ始まったばかりで、イタリアのようなパンデミック状態になるかもしれない。4月末まで続くとするものもあれば、まだ先に続くとするものもある。この目に見えない「敵」には生活上下手なことをしないことと規則正しい生活で対抗するしかないのであろう。

日本では、東日本大震災から9年、いまだ原発の問題も何も進展していない。近年は幾度にわたる自然災害にあったものの、2020年にはオリンピックで一旗揚げると息巻くも、このコロナの伝染病によって計画は大きな変更を余儀なくされている。トルコでは戦争と難民問題という大きな課題を抱えながら、コロナの疫病が到来した。なんだか、変な感じがしますね。

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