元気いっぱい大学生

 どうやら夢は、夢のまま終わるらしい。部屋の真ん中で、消えゆくそれに涙を流していた。

 でも、今にも溢れそうなゴミ箱を見た時。そんな綺麗なものじゃないと、認めざるを得なくなった。
 別に叶えたい未来なんてなくて、憧れる将来像も持っていない。

 「10年後、あなたはどんな人間になっていたいですか」
 何度も面接で聞かれたけれど、「まあ生きていたらラッキーですね」が本音だった。夢を持つほど、きちんと生きていない。

 去年、福島へ一人旅に行った。1時間以上かかる目的地までとぼとぼ歩いていた時、工事現場で働くおじさんが声をかけてきた。
 「大丈夫か? おじさん送ってくよ」
 悪い人には見えなくて、その人のトラックに乗せてもらった。福島での思い出や悩み事。会ったばかりのおじさんに、何故かペラペラと話していた。そうかそうかと頷いて聞いていたおじさんが、就活の悩みを話した後にこう言った。
 「おじさんはね、何も目立った仕事をしていないんだけどね。福島の人たちが少しでも暮らしやすいと思ってくれたらいいなと思って、そうやってやってるんだよ」
 「またいつでも福島にいらっしゃい」

 夢も希望も無くて、でもお金がないと死んでしまうからとりあえず企業にエントリーしているというだけの話で。
 あのおじさんみたいな人に、また出会えたら幸せだよなと思って生きているだけで。

 楽に生きようとは思ってないのに、頑張ることも決してできずに今日も終わる。
 周りより早く就活を始めて忙しくしていれば、勝手に頑張れると思っていた。
 でも忙しいことと頑張ることは、全くの別物だったから。

 明日もまたリクルートスーツで自分を隠して、虚言を吐くんだろう。
さっきまで泣いていたくせに、「心身ともにタフです!!」なんてニコニコして。

どうせまた落ちるんだ。
もうどうぞ好きなだけ祈ってください!



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