「くうちゃんがね、亡くなってしまいました」 10月12日午前12時48分、実家から電話があった。 いつもの優しい父の声で、あまりにも残酷な報告を受ける。実家で飼っていた犬が、突然息を引き取った。 死ぬまできっと忘れないのは、2012年5月5日の夕方のこと。私は小中高といじめられっ子で、毎晩一人で泣いていた。その日もこっそり泣こうと部屋に向かっていると、後ろからカチャカチャと足音がした。振り向けばマヌケな顔で私を見上げる子犬がいる。あまりにも可愛くておかしくて、その
高校2年の時に付き合っていた一つ上の彼氏に、私は8ヶ月もの間放置された過去がある。遠距離をしていて、LINEでのやりとりがメインだったあの頃。確か7月の半ばだった。 「受験勉強で忙しくなるから、連絡あんまり返せなくなるかも」 「でも受験終わったら会いに行くから」 そう言う彼氏に、「頑張ってね」と「待ってる」の二言を返した。 そうしたら。 そこからなんと8ヶ月も音信不通になってしまった。 私はとんでもなく馬鹿なので、大変お利口に待ち続けた。友人も皆優しかっ
「おはよう」 たった6畳の一人暮らしの部屋で、私は自分に挨拶した。リモコンで照明をつけ、一番暗い設定に急いで変える。 掛け時計の2本の針に目をやると、仲良く一緒に「12」を指していた。3本目の針がせかせかと動くせいで、その2本は徐々に離されてしまったけれど。 閉め切られたカーテンを開けてみるも、私に朝日は降り注がない。空は黒く塗りつぶされているから、「皆」にとっての一日は既に終わったようだ。窓の外を見てみても、猫背の私の目には物干し竿しか映らなかった。少し背中を伸
プラスチックの棚の上に、段ボールが一つ。かつては、実家から届いた食べ物がびっしりと詰まっている箱だった。届いてから1週間もしないうちに全てを食べつくし、今となっては物入れみたいなゴミ箱だ。そんな箱がこの部屋にはあと4つ、散らかっている。適当に本を入れている箱。取り込んだ洗濯物を入れている箱。クローゼットに収まりきらない服の入った箱。それら全部を詰め込んだ箱。まるで自分みたいで、醜かった。 私は服が大好きだ。正確には、お気に入りの服を着ている自分が大好きだ。服そのものへの
私は異常なまでのパンダ好き。部屋中にパンダが住んでいて、白黒の世界が広がっている。 「なんで好きなの?」と皆に聞かれるけれど、本能で好きだと返していた。可愛いのは誰もが知っていることだし(と信じているし)、他に理由なんてない。 しかし最近、もしかしたら私はパンダに憧れているのではないかと思うのだ。パンダはなんでも持っているから。 白黒つけられ、白黒つけなくてはいけない毎日に、いよいよ私は限界を迎えた。カーテンをグレーにしてみたけれど、そういうことじゃなかった。白
どうやら夢は、夢のまま終わるらしい。部屋の真ん中で、消えゆくそれに涙を流していた。 でも、今にも溢れそうなゴミ箱を見た時。そんな綺麗なものじゃないと、認めざるを得なくなった。 別に叶えたい未来なんてなくて、憧れる将来像も持っていない。 「10年後、あなたはどんな人間になっていたいですか」 何度も面接で聞かれたけれど、「まあ生きていたらラッキーですね」が本音だった。夢を持つほど、きちんと生きていない。 去年、福島へ一人旅に行った。1時間以上かかる目的地までとぼ
就活真っ最中の私 本日で5通目のお祈りメール お祈りされるくらいなら、 お前なんかうちには要らぬと 突き放してくれた方がマシ そう思いながら、 いつもお祈りされるしかなかった 4社目まではすぐに立ち直れた 「またなんかお祈りしてるよ」と笑って、 普段通り過ごせていた でも今日は “5度目”の「お祈り申し上げます」が目に入った途端、滝のように涙が溢れた 「うわ。思ったより本気だったっぽいな」 悔しさを右手に託し、玄関のドアを思い切り開ける 靡く冬の風は、残酷にも涙