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112 フリージアと愛犬

フリージアというお花を知ったのは確か、
小説だか随筆の中でだったと思う。

香りに敏感すぎる母親を持ったので、
花の香りさえ排除される実家で育ちました。

でも私自身は香る植物が大好き。
沈丁花も金木犀も梔子も大好き。

ハーブの香りも好き。
人工的な芳香剤や香水は苦手だけど
(具合が悪くなる)
お家の中にお花の香りが満ちているのは大好きです。
お正月の空気にぴったりな気がするので、
水仙かフリージアを飾ることにしてます。

フリージアを飾ると思い出すのは、
もう10年以上前に他界した犬のことです。

自分の犬ではなかったけど、
彼の晩年の4年間を共に過ごしました。
初めの2年で彼は生死の境を彷徨って、
その時に私は彼に約束しました。

ここで生還したら、
この後の生涯を絶対に満足できる素晴らしいものにするからって。

その誓いを三途の川のほとりで聞いていたのか、
彼は生還して、
私は宣言通りに彼に全てを捧げるかのように、
自分のことよりもまず彼のことを考えて暮らしました。

その彼が2年後本当に三途の川を渡った時、
荼毘に付した土の上に飾ったのがフリージアだったんです。

土に挿したお花が、枯れぬどころか蕾が次々咲いて、
結局1ヶ月はその場で咲いていました。

それは年老いた可愛い彼からの最後のプレゼントのようで、
フリージアの可愛い姿と香りを嗅ぐと、
小さくてあったかくて気難しかった彼のことを
優しい気持ちで思い出すのです。


フリージアは長持ちするお花で、
大体は蕾が次々に咲きますが、
暮れに飾ったお花がだいぶ萎れてきたので、
やはり11年前のあの奇跡は、
よーたからのプレゼントだったのかなと
ぼんやり思ったりします。

卯年なのであの頃買った陶製のウサギと、相棒にパリで買った陶製のパンダを添えて。

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