言葉 2024年3月11日の日記

・LOST IN TIMEというバンドが学生の頃から好きで、今でもよく曲を聴いている。

・「歩く速度とその矛盾」という曲の中で、こんな一節がある。

悲しみはやがて
その傷を喰らって
優しい力へ生まれ変わる

LOST IN TIME『歩く速度とその矛盾』



・同じく、LOST IN TIMEの楽曲に「ジャーニー」という曲がある。その中の一節。

悲しい事は 悲しいままで
嬉しい事は 嬉しいままで
進み続ける 砂は減るだけ
僕が何もせずとも

LOST IN TIME『ジャーニー』


・どちらも個人的に大好きな曲。

・この2曲は『LIFE IS WONDER』というアルバムに収録されている。3曲目と4曲目。シャッフルを使わなければ、この2曲が順番に流れる。

・連なるようにアルバムを彩る両曲だが、「悲しみ」という感情へのとらえ方が全く違うように思える。

・歩く速度とその矛盾では、悲しみは別の力(優しさ)に昇華する、と歌っている。ジャーニーでは、悲しいことは悲しいまま、変わらないありさまを歌っている。

・元々「歩く速度~」はLUNKHEADというバンドのフロントマン・小高さんが歌詞提供した楽曲だ。ジャーニーはLOSTの海北さんが作詞。違うバンドマンが作った正反対の歌詞でも、同じバンドが歌っているというのが興味深い。


・どっちの解釈が正しいねん、と思うかもしれないが、どちらでも正解だと思う。

・音楽、とくに日本人にとって歌詞の意味が分かりやすい「邦楽」であれば、自分に寄り添ってくれる曲を聴けることが、幸せであると思う。

・悲しみは悲しいことのまま、悲しみはいつか救われる、どちらの解釈でも構わない。聴き手が抱く「思考」を優しく肯定することで、聴き手を後押しする…というのも、音楽の大切な役割。

・と、つらつら昔バンドをやっていた人間が語っております。歌詞の考察って楽しいのよね。


・この『LIFE IS WONDER』アルバムについて。

・2013年発売の音源だけど、東日本大震災に大きな影響を受けたアルバムだと1ファンとして思う。

・PVでは被災地を目の当たりにするメンバーの映像が流れ、『五月の桜』という曲は東北のバンドTHE YOUTHの中村さんからの歌詞提供が。

・LOST IN TIMEというバンド自体、3.11から数日たったあと配信でアコースティック編成のライブをやっていた。

・当時、電力供給が危ぶまれ、それに乗じて「節電」の必要のない地域でも節電を強制する輩がいた。これは確実に覚えている。

・その中で、必要最低限の電源だけを用いて配信ライブを行う勇気。すごく嬉しかったし、悲しいニュース1色の中で「エンタメ」を発信してくれることが心地よかった。救われた。

・この出来事は、「一配信者」である自分に大きな影響を与えている、と思う。


・最近では「歌詞に意味なんかいらない」という考え方を持っている人もそれなりの数いらっしゃる。タモさんもそんなこと言ってたし。

・それでも、日本語ロック・ならびにJ-popにおいて「歌詞」が人の心を救うこと。これは、多少なりともあると思う。

・自分の心情にフィットした言葉が、千切れそうなメンタルを何とかつないでくれる、そんなことが幾度となくあった。

・「言葉」って本当に力があると思うんです。それがお笑いであれ、演劇であれ、ラジオであれ。

・非常事態の時に「エンタメは必要ない」と散々言われてきた。それでも、自分はエンタメの力、そこから紡ぎ出される言葉の力を信じてみたい。それによって助けられた人間をたくさん見てきたから。


・3.11からもう13年が経つ。

・あの出来事で、僕の中で「言葉」に対する価値観が大きく変わった。


・そして「悲しみ」について、僕自身はどう解釈しているか。

・正直、まだ決まった答えは無い。悲しいことは悲しいままだし、悲しみは生まれ変わる、どちらとも思っている。

・でも、生きていく中で起こる出来事1つ1つによって、これからも価値観がグラグラしていくんだろう。その中でどう解釈が育っていくのか。

・人生はきっと不可思議だ。




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