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Pino Palladino and Blake Mills featuring Sam Gendel & Abe Rounds 東京公演レポート🌕

ビルボード東京 2022/11/8
【セットリスト】
Off The cuff
Soundwalk
Djurkel
Notes with attachments
Infant eyes
Ekute
Just worng
Man from molise
Chris dave
Sharrock
harmonica
Benny

✳︎セットリストはサムゲンデルの足元のリストから。

上記が東京のセットリスト。
2ndは聴くことが叶わなかったが、
恐らく1st,2ndともに大きな変更はなかったと想像される。
曲が終わる度に、ステージ上でピノパラディーノとブレイクミルズが確認し、4人で確認をした後にカウントしてインということが淡々と続いていく。

とにかく冒頭から凄まじかった。
FRUEでの音響は未聴だが、これまでビルボード東京で聴いたどの公演よりも音の解像度が高く、4人のアンサンブルも緊密、どこまでもリラックスしていながら音楽の指向性の強力さは、呆気に取られるようであった。

客席も冒頭から想像を遥かに越える音像に、やや戸惑い、理解するまでに時間がかかる、然しこの今体験している時間は生涯数えるだけの奇跡だと実感していたように思う。
少なくても私はそうだった。

繰り返し聴いた傑作のアルバムが、今この瞬間に生まれるという新鮮さで、かつ進化、深化した形で音を浴びる体験は、これから先に体験できるはわからない。

淡々と進む衝撃。
概念の破壊。
新たな世界。

衝撃は語彙力を失わさせる、そう思いながら、どの一音も聴き逃すまいとステージに注がれる視線と熱気。

4人の立ち位置は、ステージに向かって左からブレイクミルズ、やや奥にピノパラディーノ、エイブラウンズ、右にサムゲンデル。
弦楽四重奏のようなスタイル。
最新鋭なのに、古典。
完成され尽くしたバッハのスコアやベートーヴェンの弦楽四重奏のような緊密さに満ちる。

ピノパラディーノのスタイルは決して出過ぎない。静かな鉄人スタイル。サウンドの要を持ちつつ、グルーヴをハーモニーを創りつつ、ブレイクミルズとサムゲンデルに展開をあずけるような場面が見受けられる。
サムゲンデルの幽玄なサクソフォンは極まって色彩を加え、楽器にミュートをかけるためにベルにはタオルを被せ、ペダルを多用。2声、時に4声にも聴こえるコーラス、エフェクトを大胆に、時に繊細な調整で音楽を進めていく。楽器は恐らくC管。
足元に置かれた譜面の、精密さ。
どこまでが作曲でどこまでが即興か。

神々の戯れと評される4人だが、サムゲンデルのスコアを見る限りでは、4人とも卓越した作曲家であり、演奏家、プロデューサーであり、美的な感覚を持った芸術家であること、そして互いを尊重し、音を描き、重ねていることが印象的である。

エイブラウンズは非常に幅広いドラムのセッティング、サウンドで、奥にはラディックのコンサートバスドラム、奏者の左にコンガが置かれていることが特徴的で、サウンドの展開の幅が非常に広い。カリンバをメロディックに奏で、テーマをループする手法や、泡立て器をステックとして活用したり、ラテンパーカッション、トライアングル、フィンガーシンバルによって、世界中の要素を盛り込み、聴く人によって多彩な民族的な印象を想起させることを生み出していた。
これがクリス・デイヴであったらまた、違ったのかもしれないが、クリスではなく、エイブであることも、この4人の良さ、調和を生み出している要因に感じる。水彩を溶く、水や空気のような役割。

最後にブレイクミルズ。
3種のギターを使い分け、最も強烈なサウンドを生み出す、独特の奏法。テレキャスターからこんな音が出るのだろうかと、目を疑う弦を叩きつけるようなエッジの聴いた演奏から、柔らかなアルペジオと、手数は無限。
音楽のエネルギーの高まりを冷静さを保ちつつ、強烈に提示するブレイクミルズは、このバンドの最前線を務める役割。
しかしながら、エゴの塊ではない。
あくまでもアンサンブル。
超個性的であるのに、調和を重視するという、矛盾するような天才の芸術。
何度でも何時間でも聴きたいと思わせてくれる、ギター。
ブレイクミルズ。

この奇跡の4人を招聘してくれたFRUEのスタッフに感謝を。
そして、今晩は博多で行われるツアーファイナル。

いける人はどんな無理をしても、観てほしい。たとえ終電を逃しても、財布にお金がなくなっても、クレジットを切ったとしても、絶対に人生が変わる体験が待っている。そう確信する。
九州に呼ぼうとされた、人々の物語と、天才たちが淡々と熱く奏でる奇跡のライブ、叶うことなら、全てを投げて飛行機に乗りたい。

体験したすべての人が旧八女郡役所音楽の会を、心から応援していると信じて。

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