本記事は、戦争研究所(ISW)の2024年3月8日付ウクライナ情勢評価報告の一部を抜粋引用したうえで、その箇所を日本語に翻訳したものである。
ロシア軍がアウジーウカ占領戦で示した戦術的適応
報告書原文の引用(英文)
日本語訳
ロシア軍によるアウジーウカ占領戦の最後の数週間、同軍の一部に戦術能力の向上を示し、限られた範囲ではあるが、戦術レベルの奇襲効果を発揮した部隊がいた可能性がある。このことは、一部のロシア軍部隊が、ウクライナでの攻勢任務遂行を経て適応させた戦術を、自部隊の行動に落とし込むことができた可能性を示唆している。ウクライナ人軍事ウォッチャーのコスチャンティン・マショヴェツは3月8日に、ロシア軍のアウジーウカ占領戦を振り返る文章を投稿した。そのなかでマショヴェツは、ロシア軍が戦術レベルで再編成を行い、攻勢作戦の戦術的重点を、アウジーウカ北西部のアウジーウカ・コークス工場の北方から、アウジーウカ北東部付近のエリアにシフトさせることができたと指摘した。マショヴェツによると、ロシア軍がこの再編成と戦術的重点変更をうまく行った際、ウクライナ軍は、この再編成がロシア軍の戦術的重点変更をもたらすものであることを、完全に認識していたわけではなかったとのことだ。ロシア軍は当初、アウジーウカを通過するかたちで迂回運動を開始し、その前にアウジーウカ北東部で戦術規模の領土占領ができていた。そして、マショヴェツの報告が示唆しているのは、ある程度の戦術的奇襲ができた結果、ロシア軍がこのエリアで前進できた可能性があるということだ。奇襲というのは、防御側が予期していない時期・場所・方法で、攻撃側が防御側と交戦する状況のことである。そして、限定的な戦術的奇襲ではあるとはいえ、このロシア軍の戦術的奇襲は注目に値する展開といえる。それは、ロシア・ウクライナ両軍ともに、戦線全体でその動きが広範に相互把握されている状況であるからだ。それを踏まえると、ほぼ隠蔽不可能な任務遂行環境下で、ロシア軍が何らかの戦術的奇襲を成し遂げることができたいう事態は、重視すべきことだ。ロシア軍が最近、戦術的奇襲に成功した、もしくは、それを活用したという目を引く事例を、ISWはほかに確認していない。アウジーウカ周辺で戦術的奇襲を成功させたロシア軍の能力は、必ずしもロシア軍全体の能力を示してはない。ロシア軍は戦線のある特定の地区において、限定的な戦術レベルの適応の成果を示している。しかし、ウクライナの各所においてロシア軍の戦術的過失が広く続いていることから示唆できるのは、戦術的適応の可能性のあるものすべてを、ウクライナで作戦行動中のさまざまなロシア軍部隊すべてに拡散し、習得させることを、ロシア軍統帥部はできていないということだ。
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