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コスパ/タイパ

旧くは「楽して儲かる」「コスパ(コスト・パフォーマンス)がいい」なんていうのもあった。「コスパがいい」は「投資した費用に対して得られるものが多い」こと。
で、近頃は、この「コスパがいい」を応用して「かけた時間に対して得られるものが多い」を「タイパがいい」なんて言うんだそう。

おもしろいね。国際的にみて、お世辞にも労働生産性が高いとは言えないわが国(G7でダントツのビリ)でも、「私事」になると「コスパ」を気にするっていうことか。時代に沿って新語が造語されていく、と。

いずれにしても、かけた時間、お金は少ない方がよくて、楽ちんな方がいいってことだ。かけた時間、お金が多いと「コスパ」「タイパ」は悪いことになる。

でも、ホントにそうかな。「コスパ」「タイパ」が悪いと、その時点でもうダメかな。

判りやすいところでいうと松重豊さんや寺島進さん、田口トモロヲさんや光石研さんや、亡くなられた大杉漣さんなど、いわゆるバイプレーヤーな俳優さんの経歴は、やたらとコスパ悪いし、時間もかかっている。

でも、だからこその、みなさんなんじゃないかな。

松重さんなどは明大の演劇で、蜷川スタジオで、三谷さんの東京サンシャインボーイズにも参加され、それでも一時、演劇から遠ざかって建設会社の現場で働かれていた。その他、数々のバイト歴を持たれ、1963年生まれの松重さんが生活に少しゆとりを感じられたのは 2012年のTVドラマ「孤独のグルメ」のシリーズ化以降だという。

明大の演劇から蜷川スタジオなのに、すごい遠回り。
でも、そのご苦労のおかげで、僕らは「感動」「感銘」を鑑賞させていただいている。

松重豊さんや寺島進さん、田口トモロヲさんや光石研さんや、大杉漣さん、みなさんがそうだ。

(そういえば、たったの1場面のご出演だけど、周防正行監督の作品「ファンシィダンス(1989年)」の大杉蓮さんが、僕は忘れられないんだ)

「コスパ」「タイパ」を優先して考えて、僕らは何になれるんだろう。
「コスパ」「タイパ」は「熟成」に背を向けたような考え方でもある。

再開発な街みたいにカオナシに漂白されちゃうんじゃないだろうか。

僕はね。「コスパ」「タイパ」で対パな生き方を目指してきた人と、そうじゃない人の10年は大きく違うんだと思っている。AIに攻め込まれている僕らだからね。苦しくても「遠回り」を目指した方がいいんじゃないかな。

「楽して儲かる」は「三日天下」はあっても、それ以上のことはないんだろうと思っているし。