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苦戦の理由とGKのポジションの関係 第6節 鹿児島対鳥取

鹿児島県民160万人の鹿児島ユナイテッドサポーターの皆さん
こんにちは、仙太郎です。

今回、ついに念願の初白波スタジアムを体験してきました。いや本当に素晴らしい雰囲気で楽しく過ごすことができました。代表の徳重さんにもご挨拶させていただきました。ありがとうございます。

代表の徳重さんと白波スタジアムのロゴ前で記念撮影

徳重代表と記念撮影。鹿児島のユニ来ていないのは許して下さい。このあと、ユニ買って着て応援させていただきましたww
詳しい話はまた別の機会に述べさせていただきます。

https://youtu.be/DAeJ-4o_6hc

先発メンバーはロメロ・フランク選手がベンチ外になり、代わりに野嶽選手が入りますが、前半は中原選手がトップ下に入るような形になりました。ただちょっとやりにくそうでしたね。これまで全試合で先発していた、ロメロ・フランク選手がベンチにも入らないと言うことは怪我でしょうか。そこは心配ですね。

ロメロ・フランク選手がベンチ外で、代わりに野嶽選手が今シーズン初先発


▽鹿児島苦戦の理由
試合は1-0で勝つには勝ちましたが、内容的には結構押される場面も多く見られました。鳥取はまだ1勝しかしていなくて、11位にいるチームとは思えない内容で、正直なかなか手強いなと感じました。ただ鹿児島が押されるには押される理由があり、それでも無失点で終えられたのも理由があります。それをこれから見ていきましょう。

まず全体的に押し込まれた理由ですが、鹿児島は前線の選手が積極的に鳥取のCBにプレスを掛けるのですが、これがうまくはまりません。普通、最終ラインでボールを回すときは相手FWの数プラス1の選手で数的有利な状況を保ちます。数的同数だとフリーな選手が生まれないのでボールを前進させるのが難しくなるからです。

3対1の数的有利な状況でボールの前進を試みる鳥取。鹿児島FWがプレスを掛けに行くが、プレッシャーを感じることなく前へのパスを試みる。米澤選手の後ろにスペースができているのがわかる(黄色点線)

数的有利な状況で前からFWがプレスを掛けると当然、その後ろにはスペースができます。鳥取の中盤の選手はとてもポジショニングがうまくて、そのできたスペースと鹿児島の中盤の選手との間のスペースにポジショニングします。

すると数的有利な状況で前を向いてボールを持っているCBがそのフリーな選手にパスを出します。鹿児島の中盤が慌ててプレスを掛けに行きますが、鳥取の選手は前を向いている状態です。そこへプレスを掛けると、鳥取は少ないタッチ数でパスを回すことにより、そのプレスを回避します。そうすると鳥取は鹿児島DFラインの前でフリーでボールを持つことになり、DFラインの裏にボールを出されると即決定的なピンチになるので、DFラインを下げざるを得ません。

そして下がりながら守備をすると前にボールを跳ね返すのが難しいので、必然的にCKが多くなります。実際、CKは鳥取の9に対し鹿児島は4と鳥取は鹿児島の倍以上もあり、鹿児島が戻りながらの守備を強いられていたのがわかります。

またクリアの数も鹿児島27本に対して鳥取は17本とここでも鹿児島を凌駕しています。いつもならポゼッション率で相手を圧倒する鹿児島ですが、この日は五分五分で、後半に至っては鳥取の方が上回っていました。

縦パスを通されて前を向かれて後退する鹿児島DF陣。CKが多くなる要因でした

だから本来前からプレスを掛けるならDFラインも上げて、大きなスペースの空いた中盤を埋める必要があります。

ではなんで鹿児島が前からプレスを掛けるのに、DFラインを上げられないかというと、まずは前からプレスを掛けるなら数的同数にしないと、DFラインでパスを回されてフリーになる相手選手がでてきてしまいます。そして相手CBやSBがフリーでボールを持つと、鹿児島のDFラインの裏にパスされる可能性があり、先ほど述べたように後ろ向きの守備を強いられます。こうなると決定的なピンチにもなりますし、何回もこれを繰り返すと疲れてきて、戻れなくなります。

なので前からプレスを掛けに行くなら、数的同数にして、後ろにパスを出せないようにしてから、DFラインを上げるというのを10〜15分くらい限定で掛ける必要があります。なぜ時間限定かというとマンツーマンでプレスを掛け続けるのは体力を消耗するので、時間限定にしないと寄せるスピードや距離が甘くなり、この日の鹿児島のように容易に前進されるようになってしまいます。

また相手GKまではマンツーマンで守ることはできませんから、GKを使ったビルドアップをされると、どうしてもDFラインを下げる必要があるので、ある程度時間を限って実行する必要があります。

こうしてこの日の鹿児島は前線とDFラインが間延びし、中盤に広いスペースを与えてしまい、また鳥取もそのスペースを上手く使うことにより攻撃を仕掛けていて、苦戦する大きな理由になっていました。

前からプレスを掛けて、できたスペースに降りてくる鳥取の選手に、鹿児島のFW間を通して前進する鳥取。プレスがかかっていないが、この狭いスペースをパスで通すのは結構むずいです。

この場合、プレスに行く位置を下げてDFライン裏のスペースを狭める必要があるのですが、後半の途中まではそれが見られませんでした。ところが後半70分を過ぎた辺りから、鹿児島の守備に変化が見られます。

▽変化した鹿児島の守備
前の2人がプレスを掛けるのは変わらないのですが、中盤から後ろが前から行かなくなったので、これまでのように簡単に裏を取られることがなくなりました。戻ってから前に守備をすれば、クリアボールも前に飛びますので、CKが少なくなります。クリアしても拾われて攻撃を続けられることもありましたが、鹿児島がボールを拾いカウンターする機会もありました。

実際、75分過ぎから90分までの時間帯だとシュートの数が鹿児島3と鳥取1と守備が安定し、カウンターも出せるようになっていました。それまで圧倒されてきた鳥取を押し返すことができ、勝利に大きく前進した戦術変更でした。

DFのゾーンを後退させた鹿児島。キッチリとDFとMFの選手で二本の守備ラインが出てきていることがわかる。これで守備が安定した。

それでも攻撃は受け続けたのですが、きちんと中央を2人のCBががっちりと固めたことでセンタリングされても決定的なピンチの数は少なくできました。結果、この守備のゾーンを下げたことで守備が安定した鹿児島が逃げ切り連勝しました。

▽鹿児島は守備のゾーンを下げた理由
ではなんで急に鹿児島が守備のゾーンを下げたからですよね。

1.監督の指示
2.選手の判断
3.疲れて前からプレスに言った場合、戻れなくなったので前から行かなくなった

のうちどれかだと思うのですが、守備ゾーンを下げてからもFWは前から行っていたので、三番かなと思いました。1か2だとFWもプレスを掛ける位置を下げるはずなんですけど、それが明確に見られなかったからです。

鳥取のCBがすごかったのは、鹿児島のFWがプレスを掛けに行っても動じないで、平気でパスを出していたことでした。普通CBがプレスを掛けられると焦って蹴ってしまうことが多いのですが、鳥取はそんな素振りも見せなかったので、素晴らしかったと思います。そして先ほど述べたように中盤の選手のポジショニングの良さとうまさに翻弄されて鹿児島は苦戦を強いられました。

ただ前回同様、鹿児島の守備は最後の最後で2人のCBが体を張ったのと、白坂選手の好守で守りきることができました。あと最後の部分では鳥取のミスやシュートを外したのに助けられました。

それと鹿児島がDFラインを思い切ってあげられないもう一つの理由があり、それがGKのポジショニングです。

▽白坂選手の長所と短所
先週のこのブログで白坂選手のポジショニングが低いのではないかと指摘させていただきました。ただテレビ画面だとボールを押し込んだ時のGKのポジショニングは映らないので、よくわかりません。なので今回、生観戦した際にはその部分をぜひ確認したいと思っていました。

鹿児島が押し込んでいるときの白坂選手のポジション(赤丸)。PAエリアのすぐ外にいることがわかる

結果はというとやはり、白坂選手のポジショニングは相対的に低かったです。鳥取のGK田尻選手のポジショニングはPAエリアから出て、センターサークルの一番下とPAの間くらいです。白坂選手のポジショニングはPAのラインの前後が多かったです。5mから10mほどポジショニングが違います。これだけ違うとDFラインの裏にパスを出されたときに、前に出て防ぐことができません。

GKが高いポジションを取ることができれば、DFラインを高く上げることができます。裏のスペースは基本GKが守ってくれる安心感あります。それがないないとDFラインを思い切って上げることができません。

鳥取が攻め込んでいるときのGK田尻選手のポジション。明らかに高いポジションを取っていることがわかる

GKが高いポジションを取れないと、GKはラインの裏にボールが出たときに後ろに下がって守ることになります。ただ白坂選手のポジショニングは的確で、シュートコースが限定されているので、相手も簡単なシュートではなく、外すことも多いですし、広瀬選手と岡本選手がスピードを活かしてクリアできています。なによりここまで6試合で4失点のうち2点はミス絡みで、残りの2点はゴラッソですから失点自体はGKの責任ではありません(GKのキックミスはここでは置いておきます)。そしてそのどちらもなかった直近の2試合は無失点ですから、そこは誇っていいと思います。

ピンチだが体を張ってクリアする岡本選手。白坂選手が適切なポジションを取って準備完了しているところも見ていただきたい。これだとシュート打たれても枠を外していた可能性は高い。

ただ白坂選手が悪いといいたい訳ではありません。これはGKの特徴です。GKはボール保持時のポジショニングで言うと大きく二つに分かれると思っていて、自分達がボールを持って押し込んでいるときに高いポジションを取るGKと低いポジションを取るGKです。

有名な例でいうとドイツ代表のノイヤー選手は前にポジションを取るGKの代表例ですし、元スペイン代表のカシージャス選手は低いポジションをとり、裏のスペースをカバーはできませんが、シュートを防ぐことに掛けてはとても優れたGKでした。

白坂選手は後者のタイプのGKだと思います。シュート打たれるときのポジションは的確なので、フリーでシュートを打っているように見えても、相手はコースを狙わなければならず外すことも多いです。相手が外しているのではなく、白坂選手が外させているとも言えます。

上の写真は前半の決定的なピンチの場面、白坂選手はシュートの瞬間に適切なポジションを取り、準備できている。写真を見るとファーサイドが空いているように見えるが、ワンステップしてダイブすれば、シュートコースはファーポストの内側に当たって入るくらいしかないのがわかる。要するにこの場面でゴールを決めるのはすごく難易度高い。というか白坂選手がシュートの難易度を高くしている。結果外している。

またキャッチングも上手いです。白坂選手がキャッチミスするところをほとんど見たことがありません。キャッチミスを怖がるとパンチングしてしまうのですが、パンチングして相手ボールになったら相手の攻撃が続きますが、キャッチすれば相手の攻撃は終わり、鹿児島の攻撃に移れます。これは大きな違いで、白坂選手のキャッチング、特にハイボールのキャッチングは安定しています。まったく不安がないですね。このシュートを止める能力が大嶽監督が開幕後、一貫して白坂選手を起用している理由だと思います。

ただ高いDFラインを必要とする鹿児島の場合、GKのポジショニングをもう少し高くできると、もっと鹿児島の守備は安定すると思います。その部分では大西選手の方が優れていると思います。

そしてGKに高いポジションを要求するのは監督の仕事です。なぜなら高いポジションを取れば、それにより失点することもあり、GKのミスが責められたりすることもあります。GKが間抜けなように見えることもあります。ただその失点の何倍も相手のチャンスを潰すことができます。だから高いポジションをとったGKが失点した場合に監督が、それは自分の指示だからと擁護してあげないと、GKは高いポジションを取るのが怖くななります。

なんか日本だと失点はすべてGKの責任みたいに言われることも多いですが、そんなことはありません。私がGK教えるときに一番最初に教えるのは、GKはすべてシュートを防ぐことはできないけど、すべてのシュートがゴールになる確率を下げることはできると話します。

そう言う意味では白坂選手は素晴らしいGKだということを述べてこの章を締めたいと思います。

▽もうひとつの守備の課題
実はこの日、もうひとつ守備の課題があり、それが中央部分で縦パスを通されることです。そうすると鹿児島DFラインの前で鳥取の選手が前を向いてボールを持ちます。この後はドリブルでもパスでもシュートでもできる状態です。こうなると鹿児島のDFラインは下がらざるを得ません。

本来、米澤選手は中のスペースを消して、縦パスのコースを塞ぐ必要があるが、この時はサイドの選手が気になり中を空けた瞬間に縦パスを決められた。米澤選手のポジショニングも課題だが、ここにパスを通す鳥取のCBもなかなかのスキルである。

こうなると厳しいので、守備の原則は中のスペースを埋めて、パスを外に誘導するのがひとつの原則となります。ただこれは絶対ではありません。中盤の中央にポグバみたいに強くてボール奪取が抜群にうまい選手がいれば、中央にパスを出させるオプションもありますが、ほとんどのチームにはそんなスーパーな選手がいないので、サイドに誘導するのが原則です。

鳥取が一度中央でパスをつないでからサイドにボールを展開したり、ロングボールを使ってサイドチェンジするので、鹿児島はなかなかボールにプレスをかけるのが難しかったと思います。

これが鹿児島が苦戦したもうひとつの理由になります。

▽今週の得点シーン
最後になりますが、鹿児島の得点シーンを振り返りましょう。この得点シーンは左サイドで米澤選手、薩川選手、中原選手のパス交換から米澤選手が裏に抜け出しセンタリングをします。そのボールをFWの有田選手がスルーしたのを、後ろから走り込んできた五領選手が押し込んで決勝点を奪います。

これは五領選手のポジショニングが絶妙ですね。五領選手をマークする鳥取の選手はボールの方を見て五領選手が見られていません。もし最初から五領選手がこのSBの前にいれば、防げたと思いますが、五領選手が死角から飛び込んできたので、五領選手の方が先にボールにさわりゴールできました。素晴らしいゴールでした。

今日も常に鹿児島が主導権を持ってプレーできていたかと言われると違いましたよね。ただ今年の鹿児島が強いのは、自分達のサッカーができないときでも勝てる(もしくは引き分けできる)からです。そしてその大きな理由の一つが守備にあることはこれまでも述べさせていただきました。

というわけで今週もまた長文になり申し訳ないです。

来週は試合がないので残念ですが、
それでは次の試合でお会いしましょう。
「チェストー!鹿児島ユナイテッド!」

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