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トライアルとインターバルが熟成的グルーヴを生んでくれた件について 〜アフタータナトス セルフ解説vol.1〜

新曲ができた。

タイトルは「アフタータナトス」。

この曲は、アイデアが生まれてから、楽曲として形が定まるまで、約2年という時間を必要とした。

制作活動の途中経過がすったもんだするのは、だいたい、あんまり良くない結果に繋がるんだけど、作ってみたけどなにか腑に落ちなくて忘れて、思い出して再チャレンジしてみては、やっぱりちょっと違ってしまって、また忘れて、という感じで、トライアルの間に毎回半年ぐらいのインターバルを設けていたのが良かったのかもしれない。

最後の最後は、衝動的に、ゴールデンウィークの連休にスタジオを予約したのだった。メンバー二人をその後で誘ったら、ふたりとも日程OKで。今しかできないと思って、一気に録ったら、一気にできた。
そんな経緯で生まれた曲なので、長期レンジで取り組んでいたんだけど、そのわりには、難産系ではなく、パッとスルッとできた感触のある作品となった。

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2年間という時間を要した理由は、なんとなくうっすらとした自覚がある。この曲における「間違える」というテーマを消化するのに、それだけの時間を必要としたのだ。

一番のクライマックスの「夢見てたの俺だっけ…」のパートは、初回の打ち合わせ兼飲みの場ででてきたフレーズの、ほぼほぼ、そのまんまである。リフもそうだ。サビのメロディも、最初の最初で完成形ができていた。

つまり、ゴールは最初から、見えていたのだ。しかし、そこにたどり着くまでに、想像以上の時間を要した。
時間がかかったのは技術論的に言えば、それを気持ちよく響かせるための構成をどうするのか、という問題だった。

気持ちのいいリフとメロディが寄せては返しながら積み重なる。その先に、突然のハイライトが訪れる。テンションはグルーヴが絶頂を迎えた直後に、一気に収束し、日常へと帰還する。
しかしその日常は、もといた日常とは少し変化している。時間がまた動き始め、風景は色づいている。

理屈でいえばそれだけの話なんだけど、実際にこれを具現化するために、一音一音を重ねていく作業は五里霧中で、地図があるわけではない。さらにその先に、歌詞の一語一語を選びとっていく作業が待っている。
最高潮の一瞬を成立させるためには、そうでない時間に流れるすべての音にも等しい完成度が必要である。

多分、ベートーヴェンは、こうした作業を気の遠くなるほどに精緻化し構造化し巨大化していくことで、第九を生み出したのだろう。もはやそれは狂気の沙汰である。

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そこまで緻密なことをやる余裕も技量もないし、素人芸といえば、まさしく素人芸の産物なのかもしれない。
それでもやっぱり、この曲の成立過程に起きたある種のマジックによって、ゴーストのようなものが、この曲には、宿っている気がする。

最後まで悩んでいたいくつかの歌詞は、レコーディング当日まで決まらず、作りながら歌い、歌いながら作ったのだった。進行方法としてはリスクありまくりだけど、あの一瞬で、ちょっと驚くような符号の一致をみることができた。あとは、ドラムにしても、ギターソロにしても、事前のイメージを超えるものが、ポッコリと生まれた感じがある。
そんな感じなので、ほんとに自分が演奏したことが腑に落ちないというか、ある種、他人事のような感触があって、いまだになんか不思議だ。

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そんな風にして、わりと無我夢中で、とにかくわっと色んな素材を叩き込んだわりに、ピース同士がぴたっとはまってひとつの世界観を生み出せている。それはなぜかというと、やっぱり、一義的には、この曲のテーマを、身体的なというか、ある一定の深いレベルまで消化できていたからなのだろう。
技術論的なスキルアップも、多少は寄与したとも思う。レコーディング前に詰めるべき構成と、レコーディング中にアゲるべきテンションと。

昔から音楽活動を見てくれている鈴木さんが、「円熟」と言ってくれたのは、そのあたりの噛み合い具合が曲を通して伝わったからなのだと思う。
ただ、主観的には、円熟どころか、ようやくものづくりのフレームワークを体得したところなので、むしろ本当のクリエイションはこれからだと思っている。

まぁ、作ってる最中は、全然違うことを考えてたんだけど。どちらかというと、自分の葬式でかけてもらうための、辞世の句的なラストソングをイメージしていた。
出来上がったら、ほんとに、思ってた以上に色んなことがやれたから、可能性がひらけて、逆に、創作意欲が湧いてきた。
(太宰のデビュー作も、そんな感じだったよね。サカナクションのグッドバイも、多分、似たようなテンションで作られたんだと思う。野狐禅のカモメとか。そこには、ある種の系譜があるのだろう)

問題は、常に時間との戦いであり、テンションやマインドシェアをいかに持続させるか、というところにはある。
まぁ、いずれにせよ、ようやくこれで、セカンドアルバム完成まで、最終コーナーが見えてきた感じはあるので、当面は、そこをターゲットに。

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セルフライナーノーツを書こうと思って書き始めたんだけど、なんか、全然、取り留めのない文章になってしまった。
映像のことについても書こうかなと思ったんだけど、一旦、止めておき、ひさとしメンバーのセルフ解説を待ってみようかと思う。

(ようへい)

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