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The place I dream of is unbreakable act.1 ~神保彰ワンマンオーケストラ@名古屋ボトムライン~

神保彰さんのソロプロジェクト、ワンマンオーケストラのライブはずっと後回しにしていて未体験だった。去年、ボトムラインのライブに行こう、当日券で飛び込もうと決めたら急な事で諦め、今年こそはと思ったのに1月の名古屋や岐阜も又諦める事態。だんだん状況が変わる中ライブハウスへの風当たりが強くなり、4月の西岐阜にはと意気込んでいた、のに。県内で国内で重い宣言が出た春、その前に氏のツアーは止まった。


名古屋市今池に平成元年からあるライブハウス、ボトムラインも当初は6月中旬に神保さんのライブを開催する予定だったが、他の多くのライブハウスやコンサートホール同様、春から数ヶ月間休業を余儀なくされ夏後半から少しずつライブを行いだした。ワンマンオーケストラも9月に西日本の幾つかを回るツアーをし、15日、そのツアー最終日にボトムラインに来た。自分も体温を確認してマスクを装備し、夏に改めて発売されたチケットを持ち動いた。


当日夕刻今池に着くと開場を待つ列に入る前に、向かい側から全景を撮る。出来たばかりの31年前は大きく店名ロゴマークが入っていた箇所は今は空白でさみしい、でも踏ん張って建つ今の姿を。-今池に向かう前、ひと月前に廃業した“元”ブルーノート名古屋に行き看板が外されマーカス・ミラー氏の写真パネル?だけになった建物に、もうライブが開かれない現実を突きつけられた気持ちと共に。


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(白線は並ぶ人の顔隠し、個人がなるべく特定しないように)


入場前に名前と電話番号の記入、アルコール消毒と体温チェックを受け、いざ8ヶ月振りのライブへ。階段を上がり中を見てびっくりした。会場中央にドラムセットが置かれ、セットを取り囲み間隔を空けられパイプ椅子が並んでいた。ステージにも椅子が並び、そもそも高さのあるボトムラインのそこからは真後ろのセットを見下ろす状態。ステージに上がれてそこでライブ観覧出来るなんて面白いし滅多に無い体験、ここから客席も3階のバルコニーもこんな風に見えるんだと嬉々と座ったものの、誰もステージ席に来ないから座っていいのか不安もわいてきた。やがてもう一人座り不安は収まった。

落ち着いてきて、ステージ席から会場の全景を見回し思う。制限人数分は並べたろう会場の席は、全部は埋まらなかった。出掛ける、一定時間場に留まる、集まる-8ヶ月前くらいまでは何も気にせずしてきたことが、今は不安や疑念を生むきっかけになる現状をひとり感じつつ、缶で渡されたドリンク-某氷結を開演前に飲み干した(一気飲みはしてないんで)…酔いで晴れるような“今”じゃねえけどな。



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(因みにこの黄色いにっこり物体ズは楽器ケース)



厳しい“今”への諸々の燻りと久しぶりに体に入ったアルコールは、ライブが始まるやすっ飛んだ。ステージ裾から現れセットに着いた神保さんは、高らかにロサンゼルスオリンピックのテーマ曲を奏でられた瞬間、スピーカーが席の傍にあるのを気付きそこからと場の跳ね返り、更に目の前の楽器から直にと音を全身に浴び体が歓喜する。久し振りの生の音に心も高まる。この曲と『炎のランナー』、この始まりで今年が本来だったらどんな年だったかを思い起こされ、FMでよく耳にしたエドシーランの軽やかな曲を経て『マンボNo.5』『テキーラ』のラテンメドレー。この2曲では「うっ!」とか「アキラ」と文字が貼られた団扇を曲間に掲げる観客を複数見かけ、終わった後で神保さんも喜んでいた。自宅スタジオからの生配信『OUCHI DE JIMBO』でも演奏した時、チャット内でこの言葉が曲に合わせ発せられていた。本来なら声でそうやって盛り上がるのが今は出来ない、その代わりの行動に嬉しかったと挨拶からのMCで話した。

レディー・ガガメドレーにノリノリ、に続いてのベートーベンメドレーと色んなジャンルがここでは取り上げられる。第5と第9を荘厳でいながらポップに奏でた後は、ドラムソロが来た。これは一曲目から感じていたが、後方で観下ろす位置に居ると腕や足の動きがはっきり見えその速さに、ソロでは足元でクラーベを打ち続ける正確さに、背筋がざわっとなる。反面、この位置はガチのドラマー向けだよと楽器演奏しない自分、ちと御免なさいな気持ちにもなった。配信のカメラが手元足元をアップで撮るのは面白く、楽器に触れている人には練習に反映出来るだろうが、直に目で速くしなやかに体を動かし奏でる姿を追い観るのも大切で、ライブの本質の一つだとも、改めて思った。足元にはっきり伝わる突き上げるかのように響く振動に、この音を毎年ここに立つとこんな風にあの方々は感じているのか、とも。ソロで爆発し終わると、ゆったり奏でられる『上を向いて歩こう』はドラムだけとは思えない豊かな音で楽器は歌い、音がじんわり染みた。ここでMCに入りワンマンオーケストラの仕組みが語られる。自分も録画した日テレ月曜バラエティ番組で神保さんが出演した際、音の素材で組み込んだという某ジョージ氏と某タケシ氏のボイスを使い解説。叩く箇所で違う声、別の言葉が楽器から発せられ、改めてなる程。寸分違わず打ち奏でることの凄さを実感した所で、1部の終わりに『ミッション・インポッシブル』をカッコよくも派手に叩いた。


換気時間でもある休みにボトムラインのあちこちを人に気をつけて撮った。以前は上がれたバルコニー席への階段はこの時は閉鎖。近くで観たくてこっちは使わなかったなと思い出しながら、スマホのボタンを押した、残したくて。

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二部の幕開けはディズニーソング、『ライオンキング』『アラジン』『ピノキオ』とワクワクしたり楽しかったりじーんとする曲が並んだ。続いて『燃えよドラゴン』『ロッキー』格闘技イベント『PRIDE』のメインテーマに、後で聞いた解説で何方かの入場曲ということで、ももいろクローバーZの『行くぜっ!怪盗少女』と、格闘技に因んだ曲が次々来て先の3曲とは真逆な熱いメドレーに。ももクロが来た時は客席からサイリウムが幾つか振られ『OUCHI~』や配信ライブでのチャットでもサイリウムの絵文字が並んでいたのを思い出した。熱さは次のQUEENの『We will rock you』へ引き継がれドラムソロに。二部のソロの足元は小刻みに踏んでゆきながら次第に心を解放してゆくようなイメージでいて、しかしリズムは乱れずで暫く見入った。途中で観客の足踏みでドンドン♪手拍子パン♪と打ちのコール&レスポンスが繰り広げられた。声が出せない分音でとばかりに、足踏みの振動は強く体に響きステージからでもこうなんだと実感、気持ち良かった。この時ドンドンパンをお客さんがすぐに返してくれたからこの夜は長めにやった、と後のMCで嬉しそうに神保さんが話したり。音でのやり取りを楽しんだソロの後は、チックコリアの『スペイン』本来はピアノメインの難解な曲をドラムで見事に奏でと、アニメにアイドルからロックやフュージョンと自由で幅広い選曲で突っ切った。

MCでこの間にスティックをすっ飛ばしたと話しびっくり、真後ろで観ているのに自分、全く気付かなかった。それだけ何事もなく演奏していた、或いは自分がそれだけワンマンオーケストラに引き込まれていた、のだろう。尚、手から離れたスティックは真横の位置のお客さんが受け取りそのままプレゼントとなった。今回の秋ツアーで初“飛ばし”だったそうな。二部の終盤はアースウィンド&ファイヤーメドレーで座ってめいっぱいノった。数曲も取り上げていたのに耳憶えあったのに、この時期この月に聴けると嬉しい『SEPTEMBER』の演奏ですっかり浮かれてしまい他がうろ覚えに。済まん。ラストはアタマのギターのカッティングも再現されたCASIOPEAの『ASAYAKE』、みんな右腕を振り上げ演奏を盛り上げる。サイリウムを持ってきた人は其れを光らせ、立ちたい、掛け声を出したい気持ちを腕に込める。強く高く上げる力、人が放つ熱、現実から一時切り離された特別な空間で楽しさを共有する一体感、リアルな場だからこそのもの。春からずっと求め渇望し続けてきたものを、やっと体に心に、得た。


アンコール前に神保さんがつらつら語り出すは、フェイスシールドを買いに今池のドン○ホーテに行った流れで近くのミスタ○ドーナツにも行ったこと。この時出たさつまいもを使った新作シリーズで、まだ食べていないイモ金時をまぶしたドーナツをゲットしようと列に並んだそうな。ラスト1個だったのが見え前に居る人たちに「買うな~、買うな~」と念じつつ待っていたら無事自身の番まで残ったまま、なのにその時あげたてのスイーツポテトドーナツが棚に入り途端そちらに気持ちがいってしまいスイーツポテトを購入した、というオチに心の中でコケ爆笑。和んだ空間に『パイレーツ・オブ・カリビアン』が勇ましく響き出す(神保さんが発信したその曲の演奏動画ツイートを⬇️に付けとく)。燃え盛るような赤いライトに包まれるドラムセットからシンフォニーが奏でられる様は、ワンマンオーケストラを象徴していると思った。シンバルやカウベル等含め個の楽器をひとつひとつを個性を引き出しコントロールしひとつまとめ、否、奏者と一体となり音楽を紡ぐ姿を、後方でずっと観てきたこの夜、改めてこのライブの凄さを目の当たりにしたのだった。そして、神保さんの背は終始まっすぐと、凜としていた。



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(終わってからガーとメモ書きしている内に椅子が片付けられ、書き終えた頃にはドラムセットだけになった会場を撮る、がらんとした空間を)


ライブ終了後、ビニールの幕越しでのサイン会に並んだボトムラインの通路の壁には、様々なアーティストのツアー告知ポスターが貼られていた。宣言が出る前に作られここに送られたものもある中、最近作ったと分かるものもあった、9月以降の告知だったから。幻となった多くのライブを忘れず、これから動き出す人を迎える。いまだ世間の目は厳しく状況もなかなか変わらない中でも。

ライブハウスは、ホールは、待っている。場に音が熱が満ち、喜びが溢れる時を。求めている、音楽を、ミュージシャンを、観客を。

ボトムライン31年目のお言葉にも自分事のように嬉しかった、秋の始まりの夜。乗り切ってくれと祈り、地下鉄への階段を下りた。

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9.15 セットリスト(無駄に細かくもうろ覚え箇所がはあって済みません)

1部

1.  オリンピック・ファンファーレとテーマ(Olympic Fanfare and Theme)   作 ジョン・ウィリアムズ

2.タイトルズ(Chariots of Fire) 作 ヴァンゲリス

3.SHAPE OF YOU   作 エド・シーラン

4.マンボNo.5   作 ペレス・プラード

5.テキーラ  作 ダニエル・フローレス

6.BAD ROMANCE 作 レディー・ガガ

7.BORN THIS WAY 作 レディー・ガガ

8.交響曲第5 (運命) 作 ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン

9.交響曲第9第4楽章(歓喜の歌)  作 ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン

10.ドラムソロ 

11.上を向いて歩こう  作 中村八大

12.『ミッション:インポッシブル』のテーマ

2部

13.CIRCLE OF LIFE  『ライオンキング』より

14.FRIEND LIKE ME  『アラジン』より

15.星に願いを  『ピノキオ』より

16.『燃えよドラゴン』のテーマ

17.GONNA FLY NOW  作 ビル・コンティ

18. PRIDE  作 高梨康治

19.行くぜっ!怪盗少女  作 前山田健一

20.WE WILL ROCK YOU  作 ブライアン・メイ

21.ドラムソロ

22.SPAIN  作 チック・コリア

23.アース・ウィンド・アンド・ファイヤー メドレー(『SEPTEMBER』他数曲)

24.ASAYAKE  作 野呂一生

アンコール.He’s a Pirate 『パイレーツ・オブ・カリビアン』より



今回のタイトルは今まで配信ライブのレポートに付けてきた其れと、意味、元の日本語は同じです。グーグルの英訳が9月のアプリ更新以降今回のになり何故に?となりつつも、“unbreakable”は壊れないと物理・直接的、今までの“frustrated”は欲求不満と心象・内的に意味を受け取り、前者は直に観る行為に合うやんとこの英訳を採用しました。解釈って色々で面白いです、どストレードだったり壮大な変化球だったりと。どちらもそもそもの言葉の其れとは似てやや非なる変化球、なんですが。“frustrated”は今後も配信レポに付け続けます。何処までいくかな。10月に見た2つは来月には(此れから紙投稿に集中したいんや)“unbreakable”は次、もあってほしいなぁ、今のところ未定やけど。
セットリストはカバーが多いので調べてなるべく具体的にしましたら、改めて色々知ったりも。アースメドレーの曖昧な他は多分『ブギーワンダーランド』や『宇宙のファンタジー』も演奏していた、かも。CASIOPEAでの神保さんの作品やソロ作品も聴きたかったですなぁ。サイリウム代わりに以前勢いで買った小さい電灯が複数色光る団扇を持ってきていたんだけど、違和感あるかなと光らせそびれてしまいましたわ。色統一した方がいいだろうなとね。サイリウム自体には抵抗はありません。シン・ゴジラの応援上映イベントに参加した時に振って盛り上がりましたっけ。団扇は90年代に仲間手製のを持ったなぁ。なんで神保さんがちょいちょい提案している小道具で盛り上がることはいいと思いますが、イヤな方もいるからむつかしいですわ、と暗いため息ひとつ。
思えば初めてボトムラインに来たのも、神保さんともう一人・櫻井哲夫さんとのユニットJIMSAKUの初ライブだっただけに、神保さんのライブは行きたかったし、行ってリアルライブへの“飢え”も少しは治まりましたわ。初ライブハウスでもあるボトムラインには、その時から90年代は毎年何回か行ってました。野獣王国の前身もここだし、櫻井さんのバースデイライブでドラムスはT-スクェアの則竹さん他CASIOPEA一期もここで見て『HALLE』の演奏に喜びながら「でもやっぱりCASIOPEAで聴きてー」と思ってたなぁ。それが叶ったのは2017年春のブルーノート名古屋なんですよね、としみじみ。
が、やはりメインのカシ3番様が観たい気持ちはむくむく沸々とあります。とはいえ世界はまだまだ、だし。「出掛けるのを控える」という誰かの呟きを見ると、心がきゅっと締められるし。幾つもの訃報を知り二度と会えない苦しさは以前から繰り返し襲われたが、今は特に。気兼ねなくライブに行き、遠征が出来、声を出し盛り上がりたい。ライブ会場で会いたい、その思いが爆発しそうなのが、本音。今のところのカシ3番リアルライブが去年末のボトムラインなのも、なんでしょねで今回は終わっときますが、ボトムライン、他沢山のライブハウスよ、“今”を乗り切ってくれよ。