謎のベールに包まれた、デンマーク"Kaospilot"大解剖

Kaospilotとは

Kaospilot(カオスパイロット)ー その不思議な学校の名前を耳にしたこと、この半年で一度はないだろうか。この学校は、2008年に「ビジネスウィーク」誌で世界のベストデザインスクールの一つに選出された、デンマークのオルタナティブスクールの一つである。最近は、4月にForbesのWORK MILLで特集され、話題にもなった。

前書き

この未知の学校を知ろうにも、現地まで足を運ぶのはなかなかハードルが高い。デンマークってだけでも遠いし、さらに所在地は首都のコペンハーゲンではない。かと言って、情報も十分には出回っていない現状から、Kaospilotについて問い合わせ頂くことが増えた。そこで、日本人三人目の留学生として在学中の私が、"内側から"この学校を大解剖し、皆さまにご紹介したいと思う。私が受験や入学を検討する際に気になったトピックを書いているためボリュームが多いので、好きな箇所を読んで参考にして頂ければ有難い。

Kaospilot大解剖の序章

生徒全員が、友達や親からされて一番困る質問は、"Kaospilotはどんな学校なの?"だ。名前の通りカオスで、これまで上手く説明できなかった。私が1年間かけて導き出した答えは、"大人のための幼稚園"である。講義は少なく、先生の指示に従うわけでもない(チームリーダーというコーディネーターはいる)。

ざっくりと特徴は
・自分たちで
・プロジェクトベースで
・それぞれが興味関心と強みを活かしながら
チームビルディングについて、遊ぶように学べる学校である。

学校が設立された1991年当時、デンマークには職が不足しており、こうした状況へのソリューションとして、カオスの中でも"パイロットのように突き抜けた人材を排出する"をモットーに作られたようだ。そのためか、社会問題に興味がある生徒が多い。北欧らしく、ナラティブでインタラクティブなコミュニケーションによる雰囲気作りが得意で、特にイベント時は、ディズニーランドに来たような感じ、と言えば少し感覚を伝えられるのではないだろうか。

1学年(学年のことをチームと呼ぶ)35名前後で、3年間のコースとなる。在校生のバックグラウンドは多種多様で、私の学年だとパラリンピックの陸上選手やサーカスのマネージャーまで。国籍は、8割程度が北欧圏(スウェーデン、デンマーク、ノルウエー、フィンランド、アイスランド)の出身で、北欧圏外からの生徒の国籍は、ドイツ、カナダ、インド、そして日本である。年齢層は、20代前半:20代後半=6:4くらいの割合。学校でのコミュニケーションは英語だ。

Kaospilotは専門学校のような区分となるため、受験資格の条件は20才以上であることのみだ。一般的な大学院受験で求められるような、語学力や大学時代の成績の証明は必要ない。その分、エッセイやワークショップでどのくらいパフォーマンスをあげられるかが肝となる。

なぜKaospilotへ留学したのか

米系IT企業へ新卒入社後、AIの話題に触れる機会が増え、AI化が進んだ世界について考えるようになった。あらゆる場所で自動化が加速し、ルーティーン的タスクを人が担うことの価値が下がっていく中で、我々人間の価値とは何になるのか。そんなことを真剣に考えていた期間がある。そこで私が出した答えは、"0→1"、すなわちクリエイティブな創造活動ができるかどうかだった。

その人が生まれてから今日まで考えて、感じて来たことからしか、新しい概念は生み出されず、代替不可能なこの活動は、アーティストの活動・役割に近い。今から三年前、幼少期の夢がファッションデザイナーだったこともあり、海外美大への留学を検討しロンドンへ美大見学へ行った。どこの学校からも強い個性と熱量を感じられた。ファッションで世界最高峰のCentral Saint Martinsを訪問時に、日本のファッションデザインスクールであるcoconogaccoを紹介してもらい、こちらへ通う事にした。

coconogaccoでは、美大出身者の現役アーティストからアフリカ的な色使いで破壊的なインパクトの絵を書く事務員まで、個性豊かなクラスメイトと濃密な対話をする事ができた。その中で、ダイバーシティの大切さと、クリエイティブにロジカルも掛け合わせることで、世界に大きなインパクトをもたらせるという発見があった。そこで、次は"ロジカル×クリエイティブ”をテーマに、能力開発できる場所を探し始めた。そんな折に、会社の同期から日本人初の留学生が設立したLaere主催のKaospilotの紹介イベントに足を運んだ。直感でこの学校だと思った。出願期限まで一ヶ月しか無い中で、周囲のサポートを多く受けながら、日本人三人目の留学生として、なんとか合格を手に入れた。

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以下、下記の目次で書き進めて行きます。
ご要望に応じて項目追加や内容の詳細化も考えておりますので、お気軽にご連絡ください。

・一言で言うとこんな学校 (2020.2.14追記)
・こんな人におすすめ (2020.2.14追記)
・三年間の流れ
・一年目の流れ詳細
・一年間で身についた事
・卒業生の進路
・Kaospilotへの留学をオススメしたい人
・入試のスケジュール
・Kaospilot豆知識
・現地での生活を含めた費用感
・移住のためにやるべきこと
・移住してからやったほうがいいこと
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