データドリブン人事戦略①-概要とポイント

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主観だらけですが、ざっくりとしたサマリーです。

データドリブン人事戦略とは企業の競争優位性において適切な人材確保への重要性が高まっています。しかし人事の業務時間の半分以上が管理作業(アドミニ仕事)や法的問題に割かれています。しかし本当にすべきは企業の戦略目標へ人事部署として貢献することにあり、採用や昇進、既存社員のテコ入れ、ときには解雇などに通じて社内の労働環境を整える必要があります。
人事はテキストデータ/過去の業績/音声・スピーチデータ/ビデオデータ/画像データ/感情データなど、取れるデータが豊富なため測定可能な指標に目が行きがちですが、目的を決め数値を測定・改善し、データを透明性と信頼性を担保した運用が必要になります。最終的には将来の組織におけるテクノロジーの導入と人間の役割のバランスを調整することこそが人事の一番の仕事となります。

データドリブン人事戦略とは何か?

適切な人材がいないと企業は成り立たないので、適切なスキルと能力をもった人材を確保することが不可欠になります。この仕事をするのが人事部署です。

昨今、業務の多くは測定することができるようになりました。課題に対してクリティカルな洞察を提供し、組織のパフォーマンスに大きな影響を与える指標の測定も可能になりました。

この爆発的なデータを利用して社内のパフォーマンスを向上させるだけでなく、組織全体の成功に貢献する洞察を抽出できる人事戦略です。

データドリブンでもすべては戦略から始まる

多くの企業や事業部は以下の2つに陥っているようです。
①データがビジネスにどう役にたつかについて熟考することなく、とにかくデータを収集し始めているケース
②爆発的にデータが増えている現状をどこから始めるかわからず見て見ぬふりをするケース

①に関して特に、人事が扱う問題は個人情報が多いため、単にデータ収集が可能だからという理由で人に関するデータを収集することは、人々の不信やモラルの問題を引き起こします。
またビッグデータという言葉が出てきて久しいですが、逆にデータをできるだけ少なくすることで、どこに行き着きたいのか、行き着くためにはどんなデータが役に立つのかに集中することを意味します。

データ戦略を組んでみる

データをビジネスシーンで使うメリットは以下の4つに大別されます。
①決定・決断の改善
②オペレーションの最適化
③顧客(人事の場合は従業員)のより良い理解
④データの収益化

そしてHRデータ戦略では大きく6セクションで構成することができます。
①人事の目的:データ関係なく、人事チームがどのような価値を生み出すか
②人事の顧客:従業員に対して、何を知るべきかの理想と現状を見て、知るべきことは何かを考える
③財務の視点:コストの削減に目が行きがちですが、付加価値創造についても書くことが大事です。

(例) データとアナリティクスを使って、業務研修と新人研修をオンライントレーニングに移行した結果、研修コストの削減と同時にパフォーマンスの向上を目指す。

④人事オペレーション:生じる可能性のある運用や、運用変更をまとめます。特に外部のパートナーを使う場合は重要な検討事項になります。
⑤人事リソース:ITシステム、インフラ、人、能力、組織文化、価値観やリーダーシップについても書きます。
⑥競争とリスク:外部の人事サービスなども含め、主な競争相手になるのは誰か、その理由は何か。

上記の6項目が埋まれば晴れて戦略の完成となります。
以降は実際の運用のポイントについて書いていきます。

データの爆発的な増加を利用する

データには種類がありますが、大きく分類すると
①外的/内的データ
②構造化データ/半構造化データ/構造化データ
それぞれどのようなデータの活用をするかを考えることでデータの収集を効率化することができます。

①内的/外的データ
内的データは安価でビジネスや業界に合わせて独自調整できる点が優れます。一方で十分なデータ量がない、機密性の高いデータを保管し適切に保護する責任が生じます。
外的データは平均的な企業の社内データよりも豊富で詳細まで取れている点が優れます。一方で対価を払う必要があるのと、閉鎖などのサードパーティーリスクがあります。

②構造化データ/半構造化データ/非構造化データ
構造化データとは行・列に整理されたデータのことです。最近まで主流でした。組織化や保管や調査をする場合に簡単にできる点が優れます。
一方で構造化データは全世界のデータの約20%を代表しているに過ぎないため知見を大幅に制限する可能性があります。
半構造化データ/非構造化データはSNSの投稿や顧客からのフィードバック、写真、動画、音声など取れるデータは豊富な点は優れますが、処理が難し過ぎたり、処理費用がかかる可能性があります。

どんなデータをとるのか、それをどこまで内部でデータ収集するのか、どこから外部に求めるのかを考える必要があります。

パフォーマンス管理は振り返りでなく、改善であること

いまだ多くの企業が、特定のKPIに対する従業員パフォーマンスを年次評価するパフォーマンス管理方法として使っています。しかし速いペースで進むテクノロジードリブンな業務環境においてはもはや機能しません。
実際にわずか6%だけの企業だけが自分たちのパフォーマンスマネジメントプロセスが機能していると答えているデータがあります。
従来のやり方の場合、年度末になるので、評価プロセスは先を見ることよりも振り返りが多くなります。そしてこの評価プロセスは長いアンケートになるため、このレビュープロセスに多くの時間を費やす必要があり、好ましいと思われていません。実際にこのレビュー期間に最大40%生産性が低下するというデータがあります。
一方、データを使った評価はより頻繁に行うことができます。
例えばデロイトは各プロジェクトの終了時に4つの質問だけを使用して、レビューをします。そのうち2つはYes or Noの回答のみです。
頻繁に行い集まったデータを使って、バイアスや遅延なくパフォーマンス評価をします。
頻繁に行うことで従業員は改善に向かうことができ、評価もデータの鮮度があるうちに行うことができます。

続きは次回
思ったより長くなってしまったので、より実践的な内容や落とし穴についてはまた別の記事で書こうと思います。
お楽しみに!



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